Nicotto Town


ふぉーすがともにあらんことを、あなたにも。


砂糖とカナリア

「ガタッ、ゴトッ……」

今日も砂糖を運ぶ労働者どもの足音が聞こえて
きそうである。

船着き場の荷物の積み下ろしの作業は、
想像以上にきつい。

まぁ、やるつもりはないのだが。

ディアストロ商社では、今日も砂糖のやりとりが続く。

もちろん、国王命令だ。

経営してるこっちだって、使われる身である。

この上、労働者どもに恨まれたら
たまったものではない。

砂糖一粒こぼしてもらっては、困るのだがな。

イスパニアは16世紀にアメリカから銀を輸入し始めて以来、
様々な植民地政策に加担してきた。

まぁ、自分のしていることもそれの片棒を担いでいるのである。

かといって、罪悪感はない。

教会とやらも、信じていないのだから。

表はいい顔をしておいて、生活は商業である。

神父がお金を分けてくれるわけではない。

プロテスタントの蜂起は、記憶に新しい。


イスパニア国王も、あるいは。

教会からの離反に加担してくれたら、
と思わない日はない。

労働者は、酷使と教会の板挟みなのである。

そして、砂糖を舐めることも
叶わない。

アメリカで銀の採掘にこき使われた原住民よりは
ましである。

まだ、ヨーロッパで砂糖の荷積みをしているだけ
ましである。

彼らが故郷を思わない日はない。

ここ西アフリカの本土から離れた地では、
容易に脱走も叶わないのだ。

もっとも、脱走を咎めるつもりはない。

もともと、無理やりこき使っているのだ。

街に放っておいても、どうせ荒ぶれものばかり。

奴隷だとは分かっていても、

国王命令だの役人だの

こうやって会社をまとめてる側まで奴隷である。

彼らにはワインもない。

内心どう思っているかは、正直言って聞きたくない。

私は帳簿だけ見ていればいいのだ。

あとは、天のみぞ知るというところだろう。

砂糖だの、ワインだの
うつつを抜かしているのは、王侯貴族だけなのだが。


少し外に出て空気でも吸うとしよう。

少しでも海の風が吸えるかもしれない。

王侯どもの吸うタバコよりはましである。

海の空気は、海の者しか知らない。

帳簿をつけているだけでも、同じである。





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