Nicotto Town


ふぉーすがともにあらんことを、あなたにも。


ハチドリが運ぶ種

シチリア島は今日も穏やかだ。

外では列強だの、植民地だの騒いでいるが

シラクサはのどかなもんだった。


もっとも、ここの歴史は植民地から始まる。

ギリシャの植民地が、そうだ。
以来延々と奪い合いが続き……

まぁ、イスパニアとかいう支配者に落ち着いた訳だ。

今の領主のことは知ったこっちゃない。

もちろん、それは島の暮らしに関係ないからだ。


家族は漁師を営んでいる。

たまには漁に出るが、市場の仕事がね。

今に始まったこっちゃねぇが、課税が厳しい。

封建領主だの、なんだが知らねぇが

とにかく課税に関してはうるさいらしい。


漁は若いやつに任せておけばいい。

昔、誰かが言ってたような。

結局、俺はそうじゃなかった。

市場で音楽を奏でるほうが、似合うのさ。


海を渡ると、アフリカの国だ。

昔、カルタゴという国があったところだな。

“あっちのやつ”は、弓をとるのが上手いらしいな。

なんだ、人間が象になっただけじゃねぇか。

昔はそう思った。


交易で栄えるのは、今も昔も同じ。

帝国に支配だの、領地争いだの。

そんなものの面影は市場にありゃしねぇ。

大事なのは、ある意味金なのさ。


アフリカの言い伝えにはよくあるらしい。

いつか鳥が種を運んで来るってな。

海辺の街はともかく、砂漠で交易するやつの気が
知れたもんじゃねぇ。

まぁ、それが“商売の種”ってんだからしょうがないが。


帆船が出来て以降、

地中海は落ちぶれた。

イスパニアは外に出たからいいものの、

イタリアの辺りは目も当てられない。

いっぺん、ヴェニスのガラスとやらでも
見てみるか。

なーんてな。





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