Nicotto Town


ふぉーすがともにあらんことを、あなたにも。


ノルマンディシナ:Ⅲ

明くる朝、

俺はベットの上だった。

こんなんで寝れるなんてありがたい。

そう言おうと思った瞬間、

穴を掘らされに外に担ぎ出されるチェーホフが

目に入った。

まぁ……大丈夫か。

懐中時計をまさぐって探し、

毛布を脇に避けた。

懐中時計は冷たい。

“エリザ”と彫った跡を指でなぞる。

今はやめておこう……。


8時26分……。

あと4分ある……。

朝食は……どうでもいい……。

不意にチェーホフがこっちに何か愚痴るのが
聞こえた。

まぁ、どうでもいい。

気にしないでおこう。

ライフルを手入れし、

中の“撃ったはずもない”火薬の粉を取り払った。


「今日、撤収だ」

上官が言った。

たぶん、昨日と同じ人……。

「9時に作業をする」


なるほど……。

「了解です」

「了解です」

自分も言う。


「おっしゃ」

他の兵士が言う。

ライフルを担ぐ……が重い……。

危うく他の兵士を殴りそうになった。


チェーホフのライフルは、まだあっちに立て掛けたままだ。

もう、作業は終わる……。

そう思えた。


まだ、帰って来てなかったが。

軍の規律は、クソみたいだ……。





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