Nicotto Town


ふぉーすがともにあらんことを、あなたにも。


クォーターデック

向こう側に、“サンタ・モニカ”と書かれた
デカい船名の刻印が見える。

向こうが作る波で、こっちの船は揺れていた。

向こうはフリゲート、こっちもフリゲート。

クォーターデック直下の波しぶきのあたるこの

ハイロー・パッセージでは、

今日も船乗りのたまり場があった。

反対側では、

艦長が窓からタバコの灰を落としているのが
分かる。

愚痴を言ってるからだ。

このしぶきのうるさいクォーターデックで

何で分かるのかと言えば、

それくらいこの船が長いからだ。

ふと隣で開いた窓から、

士官の1人があくびをする声が聞こえる。

彼もまた、タバコの灰を海に……。

植民地時代の帆船とは違って……。

タバコだの、酒だの

なんでもある。


食事は制限されていたが、

砲は使わないし実演だけだし

食事はマズい。

護身用のカロネードだけ積んでいたが、

“いるだけで”取り締まれるので

撃つなんてことはない。

火薬の匂いは久しい。

火薬よりタバコだ。

それが臭う。


酒は艦長専用だったが、

水夫が港で仕入れてくるのだった。

代貨は艦長が出す。

もっとも、薬代わりなので
咎められない。

司令部も知らんぷりだ。


遠くにノルマン半島が見える。

5月27日、今日は晴れ日和。

遠くで演習の音がした。

波が立つ環境でも響く。


イギリスの日和は暮れだった。

タバコ・酒もあるがシケてる。

植民地の輸入品。


フランスの非難声明。

外交問題。

植民地の終わり。


タバコも酒もやらない。

香草が一番おいしいのだ。

スープはフランスに限る。

もっとも、作ればよいのだ。


船の食事は悪い。

豆スープが出れば良いほう。

普段はパンと干し肉。

たまにブドウ。

生ものはない。


イギリスでは生ものはなかった。

あいかわらずブドウ、肉豆……。

栄養はある。

だが納得がいかない。

シェフもそうだ。

分かってない。

同じなのである。


しぶきが顔に当たる。

冷たっ。

ふと向こうに大砲が見える。

あるのに見えない、

そんなこともある。


「大砲を撃つぞ」

「準備よーし」

そんな声が聞こえる。

在庫処理のためだ。


サボっているのがバレたら……

やっかいだしな。


火薬は2日で傷む。

大砲は1分、撃鉄は2秒

兵士は瞬間……。


農場に似ている……。

ミルクは2秒……。

牛は1秒……。

農夫は“すでに”……。

卸売りは3秒……。

主婦は10秒……。

帰ってからお茶するまで……。

お茶は2秒、淹れたら3分

イングランドは50秒……。


すでに傷んでる……。

そればっか……。

夕闇に砲身が……。

朝だったか。

眠い……。


痛っ……。

小突かれた……。

「ジョージ、艦長」

「サマサマだぜ」

「あはは」

ウィリアムだ……。

副官になってから、媚びている。

肩を小突いては、落そうとする。

10mだぞ……。

死ぬ……。

夕闇に……。

向こうにカッターが見える……。

それにスループも……。

食事か……。

「行こうぜ」

彼が返す。

「おぅ」

思いっきり蹴ってやった。

向こうにいた士官がデッキブラシで殴ろうとする。

まるで、毬だな。

奴は猫。

おれは工夫……。

ここはリバプール……。


リュートの音が聞こえる……。

「サンズ・クォーター

ブリテンニァー、バラライカズン……

ヘッド・アッパー

クロース、アウテンダァー……」


マイケルか……。

午前はこれだから……困る……。

午後もうるさい……。

クレア……

船はこんなもんだ……。


手紙を握りしめた……。

みんなはいつもバカにする……。

“お褒め”……なんだろうが……。

「サン・ルックライクアッパー・ホライズォンー……」

「ティアーズ・アッパー……ルックライク……」

「艦長のお出ましだぞ……」

ディアーズ艦長が言う……。

「諸君……やぁ……」

乾杯の音がした……。

うるおいには飢えていたが……。

アバター
2013/05/09 17:57
直接描写する……という技術を試したのですが……。

いかがでしょうか。

黒の線だけだと間延びしそうなので、

本当は映像にしたいぐらい……なんですが。


潮風を感じられれば、それでいいのですがね……。




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