Anastasia:Ⅲ
- カテゴリ:自作小説
- 2013/05/11 09:05:34
提督“もどき”が原住民との会合を始めていた……。
隣で水夫のウィリアムが、
「うまくいくかな……」
とぼやいている……。
少し離れたところでは、
水夫のアッチソンが
釣り糸を垂れながらのん気に会合を眺めている……。
後から船を出して会合の輪に加わろうとする
水夫もいる……。
船尾の舳先に登って望遠鏡で会合を観察しているものもいる……。
皆がそれぞれ思い思いに、会合を眺めていた……。
「おぃ、ウィリアム」
私は彼に問いかけた……。
「はぃ、なんでしょう」
ウィリアムが答える。
「あのだな、船尾にいるジェイクに
状況を報告するように言ってくれ。
艦長に報告せなきゃならん」
私は伝達した。
「はぃ、分かりました」
ウィリアムは足早に船尾の舳先に向かった。
「レリー・スタット」の船尾は階層になっていて、
3階ぐらいの高さがあった。
もちろん、船底から数えてだが……。
ウィリアムが走って船尾に向かう足音が船に響く……。
マストではふざけて鐘を鳴らす水夫もいるのが分かった。
食事……あるいは会合の合図なのであるが、
早く切り上げろ……という合図なのである。
早速会合が始まって間もないが、
水夫はしびれを切らしているのである……。
「ホイヤー、ヨーソロー……」
気ままに船乗りのかけ声で遊んでいるのが分かる。
「おぃ、アッチソン」
私は彼に言った。
「マストで鐘を鳴らしてるやつに
やめるように言ってこい」
こう伝達した。
「あぃ、了解です」
アッチソンは小気味よく答えた。
「じゃぁ、言ってこい」
私は念を押す。
「了解でさぁ」
アッチソンは二つ返事だった……。
「レリー・スタット」の船舷側には、
波しぶきが当たって砕ける……。
アッチソンの釣り糸は、放置されたままだった……。
よぅし、やってやるか。
とりあえず釣竿を押さえておいたが、
あとでアッチソンに怒られないか心配だ……。
下の階層では、数少ない大砲を
装填準備している音が聞こえた……。
この状況だというのに……。
作業の音で聞こえないかもしれないが……。
「おぃ、大砲を詰めるのはやめろ……」
「了解でさぁ」
私は上から声を掛けたが……
二つ返事なので聞いてるのかどうだか……。
検討はつかなかった……。
「レリー・スタット」に波しぶきが当たって砕ける音と同時に……。
会合を揶揄する船員たちの声が船に響いた……。