西の隣人から東の隣人へ
- カテゴリ:自作小説
- 2013/05/15 11:50:27
俺は外を眺めていた。
この小さな格子のついた窓から。
ドアが鳴る。
「おーぃ、あけてー」
しゃぁないな……。
重い足取りでドアに向かった。
この家は洋作り2階建てロフト付きの
おばあちゃんから譲ってもらった家だった。
“彼女”はおばあちゃんと知り合いだったみたいだったが……。
ドアの前の人の話である……。
ガチャ。
ドアを開けた。
黒い長い髪が愛嬌のある、
20そこそこの腰つきのしっかりした
美女だった。
正確には22なのだが……。
呆れ顔で、俺はため息をついた……。
「入っていぃー?」
はいはい……。
「いいよー……」
彼女は言う。
「なんか、元気なさそう」
だから?
お構いなしだった。
「で?なんか用?」
彼女は不機嫌そうだった……。
「ん?なーんにも」
ふーん。
どうでもよかたった。
「どーでもいいよ……」
俺は知っていた。
彼女がここに来た理由を……。
ここを再度訪ねた理由を……。
あれは7年前……。
高校だった……。
文化祭……。
彼女は他のクラスだったらしい。
だが、俺はその時見たのが初めてだった。
別にかわいくもなかった。
はたから見れば美人なのだろうが……。
彼女もいるし、興味はなかった……。
どうなんだか。
周りから見たら、どう思われるんだろうな。
その瞳
その腕
その足
その胸
そのうなじ……。
君が瞳で語っていたものは、
実際なんだったんだろう……。
考えるだけでも、鳥肌が立った。
「なに考えてるの……?」
相変わらず無邪気だった。
ただ、あの時はその無邪気さが邪険だった……。
今は違う……
こうして面と向かって眺められる……。
その瞳を覗き込んで、
ねぇ 君って……? と。
どうなんだか。よく分からなくなってきたぞ……。
「あのさぁ、お前って……」
「そんなことが気になる……?」
彼女は答えた。
彼女の名前は俺の彼女と同じ……。
だけど人物像は全然違ってた……。
彼女曰く……微妙に共通項は多いらしいのだが……。
女って、女だけ分かること
結構抱えてるんだな……。
ちょっと鳥肌が立った。
“彼女”のあの時の邪険さは、
もうとっくに無くなっているようだった……。
俺が変わったのか……彼女が変わったのか……。
俺の彼女が……俺の見方を変えたのか……。
俺の彼女は、もうずいぶん前からの付き合いである。
ひょっとしたら、生まれるずっと前から……。
なんてことも、話に出るのだが
彼女曰く、彼女とその友達しか知らないらしい。
無論、その友達とも俺は仲がいい。
彼女と似たような関係だった。
話は込み入るが、
俺にはそういう女がたくさんいた……。
友達でもないし……彼女でもない……。
ただ、そういうおいしい……甘いだけの関係。
俺は深いため息をついた。
「話ってさぁ、いったい何なの?」
彼女は考え込んでいた。
「あの時の話……」
あぁ、高校か……。
実をいうと、彼女は同じクラスだったのだが
あんまり邪険な上疎遠なので
そういうことにしてほったらかしにしておいた。
もう……どうでもよかったのだ……。
急に愛くるしい目が、こちらに近づく……。
なんなんだよ……。
まだ話は終わってないじゃないか……。
もう、どうされてもよかった。いい意味で……。
ほったらかし、なのではない。
もうどうされてもよかったから、
こうして会っているのだ……。
ちょっと前までだったら、ロクに会いたくもなかっただろう……。
彼女に説得されて、話す気になったのだが……。
彼女いわく、仲間に入れたいらしい……。
あまり疎遠だったのは、かわいそうだ
とのことだった。
その、いわれの彼女が
今目の前にいる……。
俺の彼女が言うには、
抱きしめなきゃいけない……
そういうことらしい。
そういうことだった。
別にそれは難しくない。
それが出来ると思ったから、
こうして会っているのだった……。
そーっと。
そしてぎゅぅーっと。
ゆっくり抱きしめた。
彼女の胸の感触が、
程よく伝わる。
別の感情もなにもない、
純粋で清潔なハグだった。
もう、何も思い残すことはない。
これで、ようやく次のステップへ進める。
彼女は俺の、楔だったのだ。
過去という港へ、そして未来という恐れへつなぎとめる。
その楔を打ったのは、彼女本人だったかもしれない。
この深いよどみを……この深い迷いを……。
この深い森に誘ったのは、彼女本人だった。
そう彼女は魔女。
森の持ち主であり、作成主。
この不思議な感じは、なんとも言い難い。
ただ占いが好きという特徴だけで、
俺が勝手につけただけのあだ名なのだが。
確かによく見ると、
魔女っぽいところはあることはあった。
その昔彼女は言った。
好きかどうか分からない……と。
その迷いはいいと思う。
迷いがあるのは悪いことじゃない。
その分答えを探しているのだから。
あらためて、彼女の目を見た。
深い感情から、軽い明るい感情まで
一気に湛えたその目は
その感情は
明るい結末を示唆しているようだった。
俺はそっと、
彼女を抱きしめた。

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- Ryo~
- 2013/05/15 11:55
- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぎゅぅ ゚♡→ܫ←♡゚
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