Nicotto Town


ふぉーすがともにあらんことを、あなたにも。


マルケス・デミストリス

このクォーターデックからは、

下の海を通りすぎるカモメ

イルカ  クジラ

魚など 様々な生き物が見渡せる


時折、ペリカンが食べ物をねだりに来ることもある。

この艦橋の光景は、いつもそんな感じだった。


ヨハン・クラーク 45歳。

この装甲艦「クレック・フリゲート」の艦長だった。

英国ドーバー第7分遣隊の提督でもあった。

第7分遣隊は5隻の船で構成されている。

2隻のフリゲートと、1隻の準フリゲートガンシップ

2隻のスループ・ガンボートだった。

このクレック・フリゲートは、

ドーバー第7分遣隊の旗艦。

他の船は、それぞれ

フリゲート・デラ・クロワ

準フリゲートがカール・マルケス

スループ船がベンジャミン

もう一隻のガンボートがジョンソン

と名前がついている。


実は成り上がりのイギリス海軍の

この新設艦隊は、

ドーバー海峡の警備に

当たっている6,7,8分遣隊のうちの一隊だった。

ドーバー艦隊の連絡役も兼ねている。

フランス・カレー沿岸と

ドーバーを結ぶ航路の警備を担当していた。

私掠だけでなく、ドイツ・スウェーデンの艦隊にも

注意しなければならなかった。

スウェーデンは民間船に偽装して、

ドイツは新興軍の軽フリゲート艦隊が
通商破壊を試みるので

それぞれ注意しなければならなかった。

クレックフリゲートには、

カロネード14門

鎖大砲 12門

軽砲 28門が

搭載されていた。

鎖玉砲はあまり使用されないが、

通商破壊船への防御に使用される。

マストとロープを狙い撃ちして、

陸への路が遠い彼らを
“航行不能”にするのだった。

カロネードは制圧射撃用

軽砲は運用上節約になるので

困ったときに使用していた。

もう間もなく、新型の装甲艦が完成するので

海軍もろとも装備が一新される予定だった。

ということは……だ。

私の退役も近い。

そうだといいのだが……。


キャプテンのクラークとは違い、

私は38歳。

急雇いの見習い海軍士官だったが

この12年海上勤務ばかりだった。

徴兵ではなく、職業軍人なので

きりが来るまでは辞めることができなかった。

大砲はほとんど扱ったことがない。

扱うのは、マストとロープ

それから航海器具。

地図とコンパスとにらめっこして、

一等航海士の補佐をするのが役割だった。

航海士がいると言っても、

この船は海峡の警備で沿岸止まり。

無論、冒険しようなんて気は私にはない。

艦尾を吹き抜けるこのそよ風が

私の頬をかすめた。

肌を塩で痛めつけるこの潮風が

今日も海軍服を濡らす。

下のほうでは、大砲をいじる音と声がした。


最近この船は大砲を撃っていない。

戦う敵は、潮風とカモメと暗礁。

友達は船員と港の水夫だった。


恋人を恋しがる奴も多い。

無論、結婚すれば除隊だが……。

最近の英国では、

ロンドン以外仕事がなかった。

勿論、そのロンドンも下のものはこき使われて
ばかりである。

戦争のひずみで押し寄せた財政難が、

数十年ぶりにロンドンいやヨーロッパ中の
国庫をしめつけていた。

海軍はまだいい方である。

仕事もあるし、国の重要私財とみなされていた。

当然、戦争はなくても維持できる。

陸軍と違い、非戦時だからといって解雇になることは
なかったのである。

恐らく、

一番退屈で

一番安全な職業

それが海軍士官だった。


一週間の内、8割ぐらいは船に揺られているだけ。

3日に一回、補給のため沿岸部に移動する。

停泊はしないが、

半日の休暇が港で与えられる。

寝るのは船内だったが

不衛生とネズミ以外敵はなかった。

港のほうが敵が多い。

親衛隊と、国軍のごろつき。

酒場の裏路地はいつも戦争らしい。

まぁ、興味のある話じゃなかったが。

酔ったやつは、船で使えない。

士官学校で、初めて教わったことだった。

この艦橋でも、それは同じ。

酒は高波より怖い。

むしろ、酒が波だった。


厨房のほうから、

料理の匂いがするのが分かった。

今日は、というか

いつも煮豆。

時折ニシンが供されたが、


フランス国軍のやつが
陸で食っている料理にはほど遠い。

国策で、

食料相場が下がっているのだった。

肉より魚のほうが高いらしい。


イギリスじゃぁ肉なんて食えやしない。

無論、豆と魚で十分というのは

海軍士官の口癖だった。


ドイツのほうは軽い食料不足らしい。

英国が搬入を打診していたが、

フランスがいるとかどうとかで
お流れのようだった。

食糧難なら、お互い様といきたいところだったが。


このドーバー分遣隊に

食料輸送の任務が下される可能性があったが、

それは御免だった。

沿岸部の農民が船にたかる。


全速で飛ばせば無視できるが、

どうしても航路の都合上ブレーメンに

寄らなければならなかった。


あそこの台所事情は酷いらしい。

政府が食料を制限するというのだから
やってられない。

国の食料だから、配るわけにはいかなかった。

金貨を積んでいけば、向こうで食料の足しになるのだが。


如何せん、この船は輸送船じゃないから

食料をこっそり積む

ということもできなかった。


まぁ、口うるさい海軍士官を乗せることも
出来るのだが……。

向こうの港で喧伝しろというのなら、

喜んで扇動するだろう。


英国海軍の連中は、

武器を使うのは好まなかったが

噂を流すのは厭わなかった。


「銃より海軍帽」が

口癖だったが、


英国の紳士事情とは

まさにこういうものである。


本国の悲惨さも無視して、

口車だけは歯車なのであった。


終わり―――

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2013/05/20 16:02
まぁ、船自体がハイブリッドという見方も出来ますねb

意外と需要あるかもですb
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2013/05/20 15:35
ウン…('-'*) 機能美っていい言葉デスネー

風抵抗とか水抵抗とか考えたら 美しい形が生まれるってすごくステキー
海鳥のあり方と似てますね~

呼び名がいろいろあって難しいようなおもしろいような(´∀`*)
似てても少しずつちがうんだぁ~
日本丸は商用船なんですね~φ(..)メモメモ

ハイブリッドカーが普通に町を走る時代なんだから
船もハイブリッド目指していいデスヨネー(*´ 艸`)
 
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2013/05/20 13:48
日本丸はシップかクリッパーですねb(確かシップです)

wikiで見れば早いのですが、形と特徴が載っています。(まぁ、どうでもいいことですが)

フリゲートと同時期のものですが、商用船なので多分全然違うと思います。

(形だけでも想像しやすいから
いいことにはいいのかもしれません)


最近の船は、

共通規格で効率だけ重視されているので

あまり機能美がありませんね。

突き詰めるところまで突き詰めると、

軍艦みたいになるのです。(外見の形とか)


帆船にファンが多いのは、

機能美があるからです。


同サイズの船で世界周航させたら、

当然帆船のほうが早くなります。

(現代船は航続距離がない。化石燃料ですからね~)

最近では帆走の大型輸送船なんかも計画されているようですが、

やっぱり自然動力という機能美があるからでしょうか~b
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2013/05/20 13:29
ふみゅ~('-'*)
映画ではよく見るけど…実際に見る機会はないですものね~
見られるとしたら日本丸くらい?

最近の船より、その時代の帆船の方が船らしくて好きデス♬♫♬
見るだけなら…だけど、色々な内情抱えて航行していたんだなぁ…
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2013/05/19 23:37
でもその程度でいいのですb

実際、帆船の本も一冊だけで

模型も専門書も持ってませんから

認識ではまいまいさんと同じなのです。


いい小説の舞台に、たまたまこの時代(1813)を
選んだので

そこに帆船といういい題材が寝っころがっているだけなのですb

(こういう感覚だということは、お分かりいただけたらと思いますb)



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2013/05/19 22:57
オー('-'*) 想像力とデータでそこまで…

すごいなぁ~(´∀`*)♬ 帆船ってステキデスヨネー♬♫♬ (この程度の認識…ㆀ
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2013/05/19 21:33
船見てれば分かりますよb

ウィキペティアの記事と写真だけでも十分ですb

あとは集めた情報に、物理的な制約なんかを加味していくだけ~b

実際に運用するならこうだ という感じで

いろいろ仮説を立て推理を立てながら書いていくのです~b


一昔前のことですから、あんまり詳細な記録は残っていないのです~

物理的理由や、歴史の観点から

このくらいならちょうどいい

という設定を利用しているので


なんとなくほんとに見えてくるだけなのです~b
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2013/05/19 21:24
だって…途中だもん(´∀`*)♬

なんで船にそんなに詳しいんでしょう~('-'*)?
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2013/05/19 18:22
続き欲しいんなら書くけどb
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2013/05/19 18:02
終わるのですか…(・∀・;)




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