マルケス・デミストリス-対峙
- カテゴリ:自作小説
- 2013/05/19 21:48:30
ハンブルグ港には今日も人だかりが出来ている。
英国の食料輸送船が入港する日だった。
神聖ローマの支配が終わるころ、
食糧危機はやってきた。
リューベックからの食料が途絶えたのである。
対外領土以外の食料は、
全部国内で消費される。
となると、農民の食べ物はない。
ブルボン家の支配は苛烈だった。
住民に対する配慮はなにもない。
あるのは不満と傲慢だけである。
フランスの支配は緩慢だった。
ドイツ以東では、密輸や密入国は頻繁だった。
ハンザ同盟以降、この地に光が差すことはなかった。
市場では、農婦の声がする。
値引きはこの不況下でも行われていた。
いつも市場はこうである。
楽器を鳴らす人、歌う人で
雑踏は賑わっていた。
食料輸送船から、人が降りてくる。
みたところ、英国海軍のようだ。
このご時世に、戦争か?
やれやれ、“お荷物”がなければいいのだが。