Nicotto Town


ふぉーすがともにあらんことを、あなたにも。


マルケス・デミストリス-渇望

ここ、ライプツィヒでは

今日も民が貧困にあえいでいる。


教会にはいつも大勢の人が押し寄せていた。

私は、ここの教会の者ではない。

となりの町からこの町にやってきた者だ。


お布施だの、献上品は後を絶たない。

こう貧困になるにつれ、献上が増えるのだから
不思議でならない。

知ってるか、民よ。主は献上を好まれない。

差し出しても報われないのだが、

差し出されると手がつい伸びる。


人間の醜さは、イスラムでもフランスでも
同じだと思うのだが、違うだろうか。


教会には人が後を絶たない。

こうして身を寄せ合うより、

農作に励んだほうがよいのだが

あいにく農地がない。


どこもかしこも氾濫ばかりで、

泥が農作地に乗り上げるのだから

たまったものではない。


食料もイギリスに頼る始末だ。

スウェーデンからは移民の誘いがやってくる。

ここ百年は、スウェーデンは争いを逃れていた。

戦傷者が、スウェーデンに行きたいと口々に言う。

こういう者が後を絶たない。

教会には、戦傷者が山積み。

市場には、課題が山積み。

農作地には、愚痴が山積みだった。

もう、どうにもならない。

ルターさんよ、あんたはドイツを救えなかった。

世界を愚かさから救ったかもしれないが。

10月26日、この善き日に―――。

私はそっと日記を閉じた。

深いため息をつく―――。

このドイツは、この国民は

このヨーロッパはどうなるのだろう。

誰にも分からなかった―――。





Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.