Nicotto Town


ふぉーすがともにあらんことを、あなたにも。


プロメテウスⅣ

待機していた“シールズ”隊員たちが、
撤収だ― という顔をしていた。

もちろん救出に行くことになるのだろうが、
海兵隊のハンヴィーがすでに現場に向かう
音がした。

隊長が、
「撤収するぞ」―

と告げた。

無線には、
「アルファチーム、“お荷物”をデリバリーしたら
予定攻撃地点へ向かえ。

ヘリは海兵隊がカバーする。
そっちには構うな」
という声がしていた。

「大丈夫かな」―

さっき先導していた隊員が隊長に告げた。
「あの音なら、すぐに救出が間に合う」

隊長はあさってのほうを向いて告げた。

道の向こう側からは、
武装勢力とおぼしき
車が

墜落地点にスピードを出して向かうのが見えた。
「撃つなよ」
隊長は言った。

遠くでは閃光手榴弾が
道で炸裂する音が聞こえる。

特殊部隊だろうが、
この街区に侵攻する兆しが見えた。

「よし、デリバリーだ」
隊長が隊員に告げた。

「ジャッカス、エース
先導しろ」

「了解です」―
「了解だ」―

隊長に二つ返事で
ジャッカスとエースは答えた。

道ではハンヴィーの方角に向かって
ロケット砲が音を立てて飛んで行った。

爆音がしたが、撃ち返しているので
直撃はしなかったのだろう。

だが、無線で
「エックス23だ。被弾した」―

と交信するのが聞こえた。

さっきの部隊はその場に待機している。

こっちの3人は足早に
“脱出地点”に向かった。

街路の裏道を横切るとき、
足元に銃弾の刺さる音がした。

流れ弾で街路灯の調整器がはじける。
スパークとともに、今通った道と
すぐ向かいの道は真っ暗になった。

「いっそのこと全部電気を落としたほうが
いいか―?」
無線で本部から声がした。

「やめてくれ」―
隊長が無線でいうのが聞こえた。

道の向こう側では
ハンヴィーが簡易爆弾で
ボンネットから火を出しているのが
見えた。

海兵隊とおぼしき
「人の群れ」は

その周りで街路を固めていた。

「痛っ」
ちょっと先を走っていた
シールズ隊員が、

左足を抑えながら
ひきずりつつ走っている。

「被弾した」―
横の隊員が言った。

「大丈夫、破片だろう」
横の隊員が言った瞬間、

止めてあった白いセダンに
突っ込む形で

被弾したシールズ隊員はもたれかかった。

「助けはくる。先に向かうぞ」
その隊員は足を若干引きずりながら
元来た方角を警戒しながら
後ろ気味に街路を後ずさった。

「大丈夫か?―」
さっきの残った隊員の声がした。

「たぶん、問題ないと思う―」
先導する被弾してない方の
隊員が無線に答えた。

夜のスラム街から市街地に
差し掛かる道で、

チカチカしている
街路灯の残りを頼りに、

俺と先導する隊員は走った。
被弾した隊員は、
足を引きずりながら
後ろ向きに歩いている。

先導するエースは、
ときおり街路を警戒しながら
後ろの隊員を見遣りつつ、

バンのある脱出地点へ向かった。

バンは角をふたつ曲がった先にあるはずだ―。

壁伝いに移動しながら、
被弾した隊員に目を遣りつつ

3m先の角まで走った。
先導する隊員が角で止まる。

1っこ向こうの通りを、
武装勢力の車両とおぼしき
ワゴンが一瞬横切るのが見えた。

「見られたか?」
被弾した隊員は
息を切らしながら追いついて聞いた。

「大丈夫だ。こっちは暗いからな」
先導していた隊員は
ジャッカスの傷を見遣りながら
言った。

「大丈夫だ、ただの破片だ。

さっきから、普通に走れるだろ」
傷に大きな銃創用絆創膏を貼りながら、
“エース”は言った。

「だといいが―」
ジャッカスはうめきながら
絆創膏を貼るのを
手伝ってもらっていた。

その間、
俺は角から東の方角を覗き込んで
街路の角を警戒していた。

向こうから、銃声が聞こえる―。

武装勢力が、墜落地点に集まっている感じだった。

3本向こうの路地では、
ヘリが掃射を行っていた。

たぶん間隔からすると威嚇だろうが、
無線から
「数が多い」
という声がした。

角の向こうからやってきた
海兵隊員が、

二人こっちのほうへ
向かってくる。

向こうにはハンヴィーが止まっていた。
その近くではホバリングしていたリトルバードヘリが
飛び去った後だった。

海兵隊員は、おそらく衛生兵だろう。
一人が救急セットを近くの車のボンネットの上に
置き、

もう一人が
ジャッカスの肩に手を貸して、

「大丈夫か?」
と聞いた。

車の陰に被弾した
ジャッカスを運んで、

応急措置をするところだった。

「先へ向かうぞ!」
先導するエースは告げた。

「援護を貸してやる」
さっきの海兵隊員はそう言うと、
向こうから走ってやってくる
小隊に手招きした。

3人ほどの海兵隊員が、
小銃を持って
足早に駆け足でこっちにくる。

さらにその後ろから
ハンヴィー二台と
6人ほどの海兵隊員の
後続がついてくるのが見えた。

「進め、進め!」
向こうからくる最初の
海兵隊員は叫んだ。

ひとつ向こうの民家からは
叫び声を上げた
民間人の女性が
家から子供と一緒に
転げ出してくる。

先導するエースは手で制しながら
家へ戻れと合図した。

女性は泣きながら
イラク語で子供になにか叫びつつ

足早に家の門に戻った。

「道を変えるぞ」
エースは言った。

「いや、このままだ」
俺は言い返した。

走って警戒しながら
道を進んだ。

途中民家から悲鳴がしたが
構わず走り続けた。

後続には海兵隊員が10人ほど
ハンヴィーと並走して

街路を突っ切ってくる。

一つ目の角を曲がって、
二つ目の角を曲がろうとしたとき

20m手前に見えるセダンが
爆発した。

向かいに見える建物からは
わずかに煙が尾を引いていた。

「RPG!!」
先導するエースは叫んだ。

「おい、陰に隠れろ」
慌てて裏道に逃げ込むと、

後続の海兵隊とハンヴィーに
向かって6発ほどRPGが
立て続けに撃ちこまれる音がした。

「くっそっ!」
裏路地の壁に張り付いて振り返ると、
海兵隊たちが叫びながら
各々路地に転がり込むのが聞こえた。

エースはそばで無線のマイクを
いじりながら、

「襲撃!!RPG!

ヘリを呼んでくれ!!」
と叫んだ。

道の向こうでは
街路を横断しながら
ハンヴィーと海兵隊が
50口径機関銃と
グレネード弾を撃ちつつ

横断してくる。

2、3発向こうの撃ってきた
建物に命中して、

下の車と思われるものが
爆発して燃える音が聞こえた。

「3時、9時の方角。

11時の方向に撃ちまくれ!」
俺は道の向こうの海兵隊に向かって
叫んだ。

隣では
同じく壁に張り付く
エースが、

無線でヘリに場所を伝えるところだった。


しばらくして、向こうの建物からの
RPGと小銃の襲撃は止み

海兵隊が二つに分かれて
道の両端を進むところだった。

エースが少し先を先導して、
道の端の壁伝いに

最後の角まで走った。
向こうに見えるバンに走って近づこうとしたとき、

車から味方が急いで降りてくるのが
見えた。

直後に、
3時の方向の
三階建ての建物から

RPGが飛んできて
車は大破した。

粉々に火花が飛び、
夜の市街地に爆音がまた響き渡った。

無線で、ちょっと違った声で
さっきの味方の運転手が

「こっちにくるな、そっちに向かう」
と言った。

“エース”が手招きして、
一個入った路地の家の裏で

味方と海兵隊3人が集まった。

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2013/06/28 17:22
古典を見かけたら、ちょっと手を伸ばしてみようと思います♪

自分が読みたい本が見つかればいいです^^*


いろいろな情報をありがとうございます><




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