オスカー・ブラッドレー博士の記し書き 10
- カテゴリ:自作小説
- 2013/06/30 12:32:03
いつかの空は、
青かった。
ふと子供の描いた絵を見て、
そう思った。
30年前、
15歳のときに描いた空は、
灰色がかった青だった。
時代は変わり、
時は流れ
いつしか空の色も
青くなったのだろう。
青い空は、
水素を多く含み
分子が活発な
気体を連想させる。
ちょうど虹がかかる空が
きれいな空であるように
青い空の色は
どこか街の空を連想させた。
遠い空に思いを馳せ、
30年前に描いた空は
いつしか空に舞い上がって
そして水の霧になって消えた。
今こうして空の霧が
こうして息子に受け継がれたことを
考えると、
まんざらあの時も空は青かったのかも
しれない。
そう思わざるを得なかった。
〈第一部 終わり〉