Nicotto Town


ふぉーすがともにあらんことを、あなたにも。


プロメテウス 6

先導する海兵隊員は、
街路灯のなさと(おそらくこれは攻撃で電源が切れていた)

道の暗さにうんざりしていた。

「チッ、いてっ。またか」
その海兵隊員は物にしょっちゅう
つまずいていた。

辺りには長年の戦争で
あちらこちらに残骸が散乱している。

まるで昨日強盗に襲われたての
カルフォルニアの住宅のようだった。

なぜかは知らないが、
カルフォルニアの住宅が浮かんだ。

おそらくLA発のドンパチ映画が多すぎるせい
だろう。

この街区の攻撃は初めてでは
なかったが、

テロリストどものはびこる現状では、
それが最善の手と思われた。

今は、だ。

「おい、もうちょっと慎重に行ってくれ」
エースが先頭に注文をつける。

「敵がいないんだ。大目に見てやれよ」
海兵隊員は注文をつける。

「敵がいないからって、注意しないのは
考え物だな!」

随行していたハンヴィーの機関銃手は
そう言った。

「……の、割には静かだな」
リマがそう言った。

「見られている気がするわ……」
金髪の“リャマ”がそう言う。

「気をつけろ。待ち伏せが臭うぞ」
エースがそう言った。

辺りには住宅街が続いている。
もちろん、LAの住宅街とは大違いだ。

「ひどいもんだな。荒れてる上街頭も
ついてない」
エースが言った。

「何か月も戦闘が続いてるんだ。
当然ですよ」
海兵隊員の一人が言う。

一行は時々周りを警戒しながら、
先頭の暗視装置をつけた隊員を頼りに
進んでいく……。

「いてっ」
また先頭の隊員が何かに躓いたようだ。

「どうした?」
ハンヴィーの機関銃手が言う。

「路上爆弾かな?」
エースが意地悪く言った。

「暗視装置をつけながらじゃないか?」
俺は言った。

「あれじゃ、足元が見えんだろう」

「ちょっと待ってくれ」
リマが言った。

「航空画像をアップロードできないか
見てみよう」

「おぃ、ハンヴィーで何か分かるか?」
エースは言った。

ハンヴィーの運転手が、
「ちょっと待ってろ」
と告げた。

二台いるハンヴィーの中で、
コンピューターの明るい光が見えた。

中であれやこれや話し合っている。

「できたぞ」
さっきの運転手は言った。

「あぁ……ちょっと待て。
道が間違ってる」
ハンヴィーの海兵隊員は
慌てて先頭の海兵隊員を呼びとめた。

「なんだよ、早く言ってくれ」
海兵隊員は自分でもあきれていた。

「ここは戦闘地域なんだ。
ちゃんと慎重に頼むぞ」
リマはそう言った。

5~10mの列を作って
海兵隊員は前へ進んでいく。

二台のハンヴィーがそれに並走していた。

「ここをまっすぐ進むと、大通りだ」
リマは言った。

「待て、大通りを行くと
K-S広場からは遠ざかる。

運転手、左に行こう」
エースは言った。

「あいよ、ちょっと待ってな」
ハンヴィーの運転手はそれに
答えると、

障害物に細心の注意を払いながら
ゆっくりとハンヴィーを左折させた。

「見て、右側」
“リャマ”が言った。

「バリケードよ」

リャマが指差した先は、
ぎっしりと残骸が積まれて
バリケードになっていた。

「海兵隊が作ったものじゃないぞ」
エースは言った。

「陸軍工兵隊でもないな」
リマは言った。

「じゃぁ、地元のお友達ね」
一人混じっていた海兵隊員が
女性の声でそう答えた。

「グレース、女の子だぞ」
リマは冷やかした。

「だからって、何?」
“リャマ・”グレースはそう聞きかえした。

「ここらの武装勢力は、
そう滅多にバリケードを作らないはずだ。

こんなのを作るのは、
地元の連中か

そうでなければ
アフリカのアルカイダだな」
エースはそう言った。

「現在角なんだが」
運転手が申し訳なさそうに言った。

「目標の地点まではあと500mといった
ところだ。だが……」

「だが、どうした?」
エースは聞きかえした。

「いや、何も問題はない。ただ……」

「ん?」
エースはまた聞きかえした。

「この先は、地図に道がないんだ。その……」

「海兵隊は、道がなきゃ進めないってか?」
俺は言った。

「そうじゃない」

「じゃぁ、なんだ?」

「さっき言った通り、
やっぱり大通りにしよう。

こんな通りは不気味だ。
やっぱり暗すぎる」
運転手は言った。

「運転手の言うとおりだ。
大通りを進もう」
リマは言った。

「おぃ、ジャックは居るか?」
エースは海兵隊の群れに向かって聞いた。

「ここに。いますよ」
ジャックがすごすごと進み出てきた。

「夜間狙撃経験は?」
エースは聞いた。

「訓練は受けてますよ。ただ……」

「ん?」

「街路灯もないのに、大通りを渡るのは
危険かもしれません。

爆弾があるかもしれないし」

「なるほど」

「あの通りは
何回も日中巡回しているところよ」
リャマは言った。

「だから危ないんじゃ」
リマは言った。

「危険すぎる。やっぱり引き返そう」
エースは言った。

「引き返すって、どっから?」
海兵隊の運転手は言った。

ちょうどその時、
海兵隊のハンヴィーが二台目の前の
大通りに止まった。

「やった、お仲間だ」
ジャックはそう喜んで言った。

「意外と、アイビーのお坊ちゃまだったりしてね」
リャマはおもしろおかしくそう言った。





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