幻影の林檎 2
- カテゴリ:自作小説
- 2013/07/11 13:17:32
アヤは、お弁当を開けるとこう言った。
「このなかでさぁ、リーダー決めようよ」
黒髪のアヤは箸で夏を指した。
「えっ、私……?」
夏は一瞬そう言ったように聞こえた。
「まぁ、いいんじゃない。別に誰でも」
私は言った。
「俺、みんながリーダーにさーんせい」
ユウトはだらしなくベンチの上で伸びながら言った。
「いつもどおり、だな」
私は言った。
「へへっ、リンゴリンゴ」
アヤはそういうと、真っ赤なリンゴを
持ち出した。
カバンのなかに入っていたのだ。
「食べる人~」
アヤは勝手にそう言うと、
一人でリンゴをかじり始めた。
「あ、私も~」
夏はそう言った。
「リンゴだったら、切ればいいじゃん」
私はそう言った。
「アヤは刃物使えないから、ダメなの」
ユウトはしおらしく言った。ちょっと気まずかった。
「うっま」
アヤは一人でリンゴを食べている。
「なんか果物仕入れてこよっか。明日だけど」
私は夏に言った。
「明日休みじゃなかったっけ」
夏はとぼけていた。
「明日金曜日~だよ」
アヤはご機嫌である。
「明日休む人~」
ユウトは採決を取り始めた。
「ばかっ、授業でろ」
アヤはユウトに突っ込んでいた。
「明日自習じゃん。
別に出なくてもいいんじゃない?」
私はアヤに言った。
「欠席増えると、評価悪くなるよ~」
アヤは言った。
こう見えても、というか
ここにいる全員は一応頭は苦手ではなかった。
いわゆる“優等生”はナツだけだったが
アヤもそれなりに成績はいいようだ。
「だからって、休まなくてもいいじゃん~」
アヤは不平そうに言った。
「休むって、屋上とかで、だけど」
ユウトはあっけらかんと言った。
「今のはペナルティだ」
アヤは言った。
ユウトの肩に後ろから手を回しながら、
私は言う。
「とりあえずさぁ、午後は帰らない?」
ユウトは私の手を掴んで
「投げてやる~」
と言った。
「子供か」
私は言った。
「ねぇねぇ、男の子追加しようよ~」
アヤは言った。
「残念ながら、補欠すらいません~」
ユウトはふざけて言った。
「チッ。つまんない~」
アヤはさくらんぼの軸をくわえて
不平そうに足を伸ばした。
「とりあえずさぁ、俺んちにしない?」
ユウトは言った。
「私、やめとく」
私は言った。別に警戒しているわけでは
ないのだ。
「私、どうしようかな」
ナツはまだ迷っていた。
私は時計を見る。
12:45。
「そろそろ戻ろう」
私は言った。
「じゃぁ、またどっかでね~」
アヤはそう言うと、
「ついておいで」
とユウトに促した。
ユウトは渋々ついていく。
「アヤ、後ろ汚れてんぞ」
ユウトはアヤのお尻を指差して言う。
「大丈夫。平気平気」
アヤはそうスカートの砂を振り払うと、
またユウトとなにやら話始めた。
やれやれ。
私はナツの後について、
ゆっくりと屋上を出た。