Nicotto Town


ふぉーすがともにあらんことを、あなたにも。


幻影の林檎 2

アヤは、お弁当を開けるとこう言った。

「このなかでさぁ、リーダー決めようよ」
黒髪のアヤは箸で夏を指した。

「えっ、私……?」
夏は一瞬そう言ったように聞こえた。

「まぁ、いいんじゃない。別に誰でも」
私は言った。

「俺、みんながリーダーにさーんせい」
ユウトはだらしなくベンチの上で伸びながら言った。

「いつもどおり、だな」
私は言った。

「へへっ、リンゴリンゴ」
アヤはそういうと、真っ赤なリンゴを
持ち出した。

カバンのなかに入っていたのだ。

「食べる人~」
アヤは勝手にそう言うと、

一人でリンゴをかじり始めた。

「あ、私も~」
夏はそう言った。

「リンゴだったら、切ればいいじゃん」
私はそう言った。

「アヤは刃物使えないから、ダメなの」
ユウトはしおらしく言った。ちょっと気まずかった。

「うっま」
アヤは一人でリンゴを食べている。

「なんか果物仕入れてこよっか。明日だけど」
私は夏に言った。

「明日休みじゃなかったっけ」
夏はとぼけていた。

「明日金曜日~だよ」
アヤはご機嫌である。

「明日休む人~」
ユウトは採決を取り始めた。

「ばかっ、授業でろ」
アヤはユウトに突っ込んでいた。

「明日自習じゃん。
別に出なくてもいいんじゃない?」
私はアヤに言った。

「欠席増えると、評価悪くなるよ~」
アヤは言った。

こう見えても、というか
ここにいる全員は一応頭は苦手ではなかった。

いわゆる“優等生”はナツだけだったが
アヤもそれなりに成績はいいようだ。

「だからって、休まなくてもいいじゃん~」
アヤは不平そうに言った。

「休むって、屋上とかで、だけど」
ユウトはあっけらかんと言った。

「今のはペナルティだ」
アヤは言った。

ユウトの肩に後ろから手を回しながら、
私は言う。
「とりあえずさぁ、午後は帰らない?」

ユウトは私の手を掴んで
「投げてやる~」
と言った。

「子供か」
私は言った。

「ねぇねぇ、男の子追加しようよ~」
アヤは言った。

「残念ながら、補欠すらいません~」
ユウトはふざけて言った。

「チッ。つまんない~」
アヤはさくらんぼの軸をくわえて
不平そうに足を伸ばした。

「とりあえずさぁ、俺んちにしない?」
ユウトは言った。

「私、やめとく」
私は言った。別に警戒しているわけでは
ないのだ。

「私、どうしようかな」
ナツはまだ迷っていた。

私は時計を見る。
12:45。

「そろそろ戻ろう」
私は言った。

「じゃぁ、またどっかでね~」
アヤはそう言うと、

「ついておいで」
とユウトに促した。

ユウトは渋々ついていく。
「アヤ、後ろ汚れてんぞ」

ユウトはアヤのお尻を指差して言う。

「大丈夫。平気平気」
アヤはそうスカートの砂を振り払うと、

またユウトとなにやら話始めた。

やれやれ。

私はナツの後について、
ゆっくりと屋上を出た。

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