幻影の林檎 4
- カテゴリ:自作小説
- 2013/07/19 19:16:58
午後2:45―
私はシャーペンの端をかじり、
そしてクラッカーの端をかじり
青果店の前に立っていた。
というより、来てしまったと言ってもいい。
店主のおばさんが、
物珍しそうにこちらを見ている。
「かわいい子だねぇ」
そう言った気がした。
リンゴを見に来たんですよ~。
かわいいとかきれいとか、
そういうのはどうでもよかった。
私はリンゴを見に来たのだ。
今そばに追いついた、
アヤとかナツとかそういうことではなく。
「おや、まぁ。かわいい子が3人も」
また店の向こう側で店主のおばさんが
そう言った気がした。
「美少女のオンパレードねぇ」
おばさんはそう言った気がした。
「シオリ、こんなとこで何してんの?」
ナツは私に聞いた。
「あぁ、リンゴを見てるの」
アヤはもの珍しそうに聞いた。
「うちのリンゴと、シオリが買ったリンゴ
どっちがおいしいか、競争しようか」
「別に、私のは八百屋さんだし
アヤのもどうせどっかで買ってきたやつでしょ~。
うちのって、結局人のじゃない」
私は半笑いで言った。
「ふ~ん、だ」
アヤはすねてしまった。
「いいもんねぇ~、リンゴは私の専売特許だから~」
アヤはナツを小突いている。
「にしても、暑いね」
私は半分ぼーっとしているナツとアヤに言った。
「とりあえず、リンゴ買いなよ」
ナツは私に言った。
「じゃぁ、これお願いします」
私はリンゴを1個つかむと、
みかんの袋と一緒に
レジに持って行った。
「はい、ありがとうございます」
店主のおばさんは愛想よく言った。
「じゃぁ、これあんたらの分」
私はみかんの袋を差し出した。
「何個ある~?8個ぐらい?」
アヤはみかんの袋を検分していた。
「余ったら、私持って帰る~」
ナツはうれしそうに言った。
「弟と食べるの~」
ナツにとっては弟が彼氏のようだった。
まだ、小学生のね。
「じゃぁ、これ食って帰りますか」
アヤはそう言った。何気にうれしそうだ。
「公園ね」
アヤは言った。
公園へ向かう道すがら、
アヤは小学生や中学生だったころの話をした。
私はよく知ってるけど、一緒じゃなかったし
高校から一緒になったナツは、
知らないふりをして聞き入っていた。
もちろん、ナツは私から聞いていたのである。
ユウトのこと、学校生活のこと
私とユウトの関係性―。
ときどき、リンゴをかじる私の方を見ながら
ニコッと笑ってはまた話を始める。
ナツはおもしろそうに聞き入っていたが、
次第にみかんに飽きたのか携帯をいじり始めていた。
「誰?」
アヤは聞いた。
「え、友達~」
ナツは普通に答える。
「どれどれ」
アヤはナツの携帯を覗き込んだ。
「また、ユウトの話?」
アヤはいじわるに聞く。
「違う、学校祭の」
ナツは冷静に答えた。
こうだから、ナツはおもしろい。
おどけて未熟そうに見えて、
実はとんでもなく賢いからおもしろい。
「シオリってさぁ、ユウトとどんなけ長いの?」
ナツは知らないフリをして聞く。
「知ってるでしょ」
私はそう答えた。
「う~ん、ざっと15年くらいかなぁ……」
私はそうおどけて、
歴史について語り始めた。
あんまり緊張感のない展開かもしれませんが、
期待しててください~bb
続きが気になります><