Nicotto Town


ふぉーすがともにあらんことを、あなたにも。


幻影の林檎 4

午後2:45―

私はシャーペンの端をかじり、

そしてクラッカーの端をかじり

青果店の前に立っていた。

というより、来てしまったと言ってもいい。

店主のおばさんが、
物珍しそうにこちらを見ている。

「かわいい子だねぇ」
そう言った気がした。

リンゴを見に来たんですよ~。

かわいいとかきれいとか、
そういうのはどうでもよかった。

私はリンゴを見に来たのだ。
今そばに追いついた、
アヤとかナツとかそういうことではなく。

「おや、まぁ。かわいい子が3人も」
また店の向こう側で店主のおばさんが
そう言った気がした。

「美少女のオンパレードねぇ」
おばさんはそう言った気がした。

「シオリ、こんなとこで何してんの?」
ナツは私に聞いた。

「あぁ、リンゴを見てるの」

アヤはもの珍しそうに聞いた。

「うちのリンゴと、シオリが買ったリンゴ
どっちがおいしいか、競争しようか」

「別に、私のは八百屋さんだし
アヤのもどうせどっかで買ってきたやつでしょ~。

うちのって、結局人のじゃない」
私は半笑いで言った。

「ふ~ん、だ」
アヤはすねてしまった。

「いいもんねぇ~、リンゴは私の専売特許だから~」
アヤはナツを小突いている。

「にしても、暑いね」
私は半分ぼーっとしているナツとアヤに言った。

「とりあえず、リンゴ買いなよ」
ナツは私に言った。

「じゃぁ、これお願いします」
私はリンゴを1個つかむと、
みかんの袋と一緒に
レジに持って行った。

「はい、ありがとうございます」
店主のおばさんは愛想よく言った。

「じゃぁ、これあんたらの分」
私はみかんの袋を差し出した。

「何個ある~?8個ぐらい?」
アヤはみかんの袋を検分していた。

「余ったら、私持って帰る~」
ナツはうれしそうに言った。

「弟と食べるの~」
ナツにとっては弟が彼氏のようだった。

まだ、小学生のね。

「じゃぁ、これ食って帰りますか」
アヤはそう言った。何気にうれしそうだ。

「公園ね」
アヤは言った。


公園へ向かう道すがら、

アヤは小学生や中学生だったころの話をした。
私はよく知ってるけど、一緒じゃなかったし

高校から一緒になったナツは、
知らないふりをして聞き入っていた。

もちろん、ナツは私から聞いていたのである。

ユウトのこと、学校生活のこと
私とユウトの関係性―。

ときどき、リンゴをかじる私の方を見ながら
ニコッと笑ってはまた話を始める。

ナツはおもしろそうに聞き入っていたが、
次第にみかんに飽きたのか携帯をいじり始めていた。

「誰?」
アヤは聞いた。

「え、友達~」
ナツは普通に答える。

「どれどれ」
アヤはナツの携帯を覗き込んだ。

「また、ユウトの話?」
アヤはいじわるに聞く。

「違う、学校祭の」
ナツは冷静に答えた。

こうだから、ナツはおもしろい。
おどけて未熟そうに見えて、

実はとんでもなく賢いからおもしろい。

「シオリってさぁ、ユウトとどんなけ長いの?」
ナツは知らないフリをして聞く。

「知ってるでしょ」
私はそう答えた。

「う~ん、ざっと15年くらいかなぁ……」
私はそうおどけて、
歴史について語り始めた。

#日記広場:自作小説

アバター
2013/07/19 19:45
コメントありがとうございます~b

あんまり緊張感のない展開かもしれませんが、
期待しててください~bb
アバター
2013/07/19 19:40
ブログ広場からの訪問です

続きが気になります><




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