Nicotto Town


ふぉーすがともにあらんことを、あなたにも。


トポロジー【短編読み切り】

古都・アレクサンドリアから
西方に3日。

砂漠の隊商は、
今日も砂漠で取引していた。

「300ドゥカートだよ」
隊商の男は言う。

「ありがとな」
僕は言った。

僕は金貨の入った袋を受け取る。
隊商にはカイロから運んできた宝石を渡した。

ガーネットは金になる。

砂漠では金より価値があるんじゃないか
という具合だ。

カイロで商売を開くのが夢だ。

今はこうして行商をしているが、
いつかは自分の店を持ちたいものだ。

「今日は炎天下だねぇ」
取引した隊商の一人が言う。
とぼけてるのか、こいつ。

「そういやぁ、モガディシュからのコーヒーが
途絶えたってよ」

「んなぁ、こたぁオスマンの知ったことじゃねぇべ。

少年さんよ、取引するならカイロがうまいぜ」
隊商の一人は言った。

隊商と雑談するすがら、
いい情報をもらった。

オスマントルコがエジプトの綿の関税を安く
するそうだ。

綿の値段が下がれば、
スエズからの宝石も増える。

市場が活気づくからだ。

市場は常に活気のあるほうに流れる。

オスマントルコの支配になってからというもの、
カイロの商売はあがったりだったが

ここ数年で欧州の圧迫もあってか
オスマントルコも市場確保に躍起なようだ。

商人は国の宝だ。

だが、僕は農民こそ国の宝だと思う。
アラブでは、

農地を持てないため商人が国の柱だとされる。

だが、一路レバノンに行けば
農地が広がっている。

ヨーロッパだってそうだ。

見渡す限り、辺り一面農地の土地だってあるんだ。

もし交易が都市同士のやりとりで成り立っているのなら、
穀物を生み出す農民は国の宝だ。

それが農奴であってはいけない。
商人と同じ、自由にするべきだ。

今度カイロに寄ることがあったら、
太守に掛け合ってみよう。

カイロで獲れた穀物を、
スエズの宝石と交換する案を。





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