【源氏あそび(?)】みんなでごはん(オマケ)
- カテゴリ:自作小説
- 2017/11/27 20:44:56
余談。
「最近青藍君が冷たいんだけど、反抗期かな」なんて不思議なことを言い出した有白に、
深雪はクリームチーズ大福をもちもちしながら有白君は何言ってるんだろ、と思った。
向かいの席では堪えきれなかったのか白藤がぐふっとむせ、小刻みに肩を震わせている。
「何かあったのか?」
面白がっている様子を隠さず問いかけた白藤に、有白はそれが、と素直に話し出す。
曰く、
今度の土曜に響弦宅を訪問する予定なのだが(ここで、まるで平安の通い婚のようだと白藤が茶化した)、
ふと、ここ最近は忙しかったのか、青藍の顔を見ていないことに気づいた。
ふと、ここ最近は忙しかったのか、青藍の顔を見ていないことに気づいた。
学園祭も無事に終了し、テストも返却され、タイミングとしても落ち着いてきた頃だろうと思い、
うきうきしながら「久しぶりに青藍君も一緒にどうですか?」と誘ったところ、
うきうきしながら「久しぶりに青藍君も一緒にどうですか?」と誘ったところ、
「有白先輩、睡眠は足りてらっしゃいますか?(寝言は寝て言え)」
「お疲れのようですね。休憩がてら洗面所に行かれては?(顔を洗って出直せ)」
と、表面上はにこやかな青藍に副音声で怒られた。しょんぼり。以上。
「それは、なるよ……」
聞き終えた深雪は遠い目になる。
ヒドイハナシヲキイタ。
ヒドイハナシヲキイタ。
疑問符を浮かべる有白の脇で、白藤は遠慮無く腹を抱えて笑っている。その肝の太さがちょっと羨ましい。
はぁ、と溜息を吐いて、深雪はサクリと若干八つ当たり気味に焙じ茶と柿のタルトにフォークを刺す。
はぁ、と溜息を吐いて、深雪はサクリと若干八つ当たり気味に焙じ茶と柿のタルトにフォークを刺す。
「有白君さ、青藍君のことなんだと思ってるの?」
普通、自分の好きな人に異性がくっついていたら嫌なものじゃないのか。
そう思って尋ねた深雪に、有白は首をひねり「何って、可愛い後輩?」と返す。
そう思って尋ねた深雪に、有白は首をひねり「何って、可愛い後輩?」と返す。
「あのね。普通「可愛い後輩」を自分たちのデートに同伴はしないの。分かる?」
「響弦さんはするよ?」
「……そうだったー」
「響弦さんはするよ?」
「……そうだったー」
頭痛がしてきたと呻いた深雪に代わり、ようやく収まった笑いの発作に目尻を潤ませつつ、
白藤が長い足を組み替えて「いくつか当ててやろうか」と唇の端をつり上げる。
白藤が長い足を組み替えて「いくつか当ててやろうか」と唇の端をつり上げる。
「響弦さんの淹れてくれるお茶は美味しかった」
なんでそこに話が飛ぶのと目をぱちくりさせた深雪に、有白は「うん」とにこにこする。
「お茶って、お抹茶? 確かに学園祭の時の野点は凄かったけど」
「この場合は緑茶か、紅茶か、ティーポットを使う茶だな。大穴で珈琲だが、お茶だったろう?」
「ああ、緑茶が多かったかな」
「最近は淹れて貰ってない」
「ああ……そう言えば、最近は四端(しばた)さんに用意して貰ってる」
「四端さんって、響弦さんのばあやさんだっけ?」
「そう」
「最初の頃は居なかったろう、その人も」
「そうだね。最初の頃は響弦さんと青藍君の三人でお茶してたなぁ」
「ああ、緑茶が多かったかな」
「最近は淹れて貰ってない」
「ああ……そう言えば、最近は四端(しばた)さんに用意して貰ってる」
「四端さんって、響弦さんのばあやさんだっけ?」
「そう」
「最初の頃は居なかったろう、その人も」
「そうだね。最初の頃は響弦さんと青藍君の三人でお茶してたなぁ」
一年ほど前を思い出して、有白は笑みをこぼす。
紅茶を淹れる響弦と他愛ない会話をしたり、目を合わせて微笑みあったり。
にこにこと座っているだけの青藍の存在に居心地悪さを覚えたり――。
にこにこと座っているだけの青藍の存在に居心地悪さを覚えたり――。
回想しながら有白はふと、あることに気づいてぱちりと瞬く。
本家の実子である響弦が立ってお茶を淹れる脇で、分家の青藍が座ってただ供されている図。
これ、『逆』では無いだろうか。
青藍の性格、響弦に対する甲斐甲斐しい献身っぷりからして、彼が茶や菓子を用意して、
大好きな響弦姉様にサーブしそうなものだが――
大好きな響弦姉様にサーブしそうなものだが――
「……あ」
「気づいたかね? ワトソン君」
ぐわっと首まで真っ赤になった有白に、白藤が頬杖をついてニヤリと笑う。
「良かったな有白。お前、たぶん自覚以上に愛されてるよ」
けらけらと笑った白藤に、あーそういうことかと遅れて把握した深雪が「響弦さん、ツンデレだったんだ」と呟く。
「他人の目があったら、それが家人なら尚更、響弦さんがお茶淹れる訳にいかないもんね」
「たぶん、対外的には青藍君がサーブしていたことになっているんだろう」
「たぶん、対外的には青藍君がサーブしていたことになっているんだろう」
食後の緑茶をすすって、白藤が笑う。
婚約者とはいえ、年頃の男女を二人きりで部屋に放置するような家ではない。
青藍を同席させないならば、おそらく部屋には響弦のSPや従僕、女中たちがずらりと勢揃いしていただろう。
事実、一年以上の交際を経た今もなお、響弦との面会時には必ず三人の女中と一人のSPが着いている。
青藍を同席させないならば、おそらく部屋には響弦のSPや従僕、女中たちがずらりと勢揃いしていただろう。
事実、一年以上の交際を経た今もなお、響弦との面会時には必ず三人の女中と一人のSPが着いている。
坊ちゃん育ちの白藤はそういった、使用人が居る環境に慣れていたので、特段気にしていなかったが、
思い返してみるに、尚更、交際を始めた当初の「三人きりのお茶会」の異常さが浮き彫りになってくる。
思い返してみるに、尚更、交際を始めた当初の「三人きりのお茶会」の異常さが浮き彫りになってくる。
けれども、三人きりのお茶会は静かで、穏やかで、甘やかだった。
「あちらのご本家の意向で、見張られているのかと思ってた……」
「いやいや、あの青藍君だよ? ただ本家から命令があったからだけで動くとか、あり得ないって」
「だよな。姉様のお願いとあればころっと頷くんだろうけれど」
「うんうん。目に浮かぶよねぇ」
「いやいや、あの青藍君だよ? ただ本家から命令があったからだけで動くとか、あり得ないって」
「だよな。姉様のお願いとあればころっと頷くんだろうけれど」
「うんうん。目に浮かぶよねぇ」
にやにや。によによ。
愛情とからかいのこもった目で見てくる幼なじみたちに、有白は肩身を狭くする。
道理で、青藍が苦笑しながら「敵では無い」なんて声を掛けてきたわけだ。
恥ずかしさと誤解していて申し訳ないなぁという気持ちで微妙な顔になる有白の肩を、白藤が笑って叩く。
「青藍が今は同席していないということは、正式に響弦の家に認められたって事だろう。良かったじゃ無いか」
「そうかもしれないけど」
「そうかもしれないけど」
それでも、あの時間を、三人きりのお茶会を有白は懐かしんでしまうのだ。
響弦との付き合いの長さでは、有白は青藍には一歩譲る。
だから、会話の間のふとした拍子に、響弦と青藍の間で交わされる視線だけのやり取りに、
全く妬かなかったかと言われれば、それは分からない。
だから、会話の間のふとした拍子に、響弦と青藍の間で交わされる視線だけのやり取りに、
全く妬かなかったかと言われれば、それは分からない。
けれど、三人でいることだって楽しかった。
きっと、今だって楽しいだろう。
青藍を間に挟んで三人で手を繋いでデートしたりとか、何ならみんなで川の字で寝たって、
きっと楽しいと思うのだ。
きっと楽しいと思うのだ。
「気になるならライン送ったら?」
深雪がガトーショコラにフォークをいれながら言う。
口調は呆れているかのようだが、表情は優しい。
口調は呆れているかのようだが、表情は優しい。
「『また響弦さんのお茶が飲みたいです』って」
「聞いてくれるかなぁ……」
「大丈夫でしょ。あの子、有白君のこと大好きだし」
「へっ?」
「響弦さんのお家のうるさがた、青藍君が説得して回ってたの知らない?」
「知らない」
「それは初耳だ」
「そっかー。青藍君もツンデレだもんね」
「ツンデレ主従だよな、あそこの家は」
「聞いてくれるかなぁ……」
「大丈夫でしょ。あの子、有白君のこと大好きだし」
「へっ?」
「響弦さんのお家のうるさがた、青藍君が説得して回ってたの知らない?」
「知らない」
「それは初耳だ」
「そっかー。青藍君もツンデレだもんね」
「ツンデレ主従だよな、あそこの家は」
どっちがどっちに似たんだろうね、とガトーショコラを上品に口に運んだ深雪に、
有白はスマホに視線を落とした。
有白はスマホに視線を落とした。
ややあって。
『貸し2ですよ』という可愛げの無い返事が、ピコンと有白のスマホを震わせた。
了
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~共有物語企画~
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白藤(しらふじ):ロワゾーさん
有白(うびゃく):七リィさん
深雪(みゆき):ミュミュさん
響弦(つるゆら):エメラルドさん
青藍(しょうらん):藍色
「君はライバル?」のささやかーな伏線もどきの回収。
・顔合わせ初回から青藍を紹介する響弦
・有白や響弦とは家格の釣り合わないはずの青藍が、響弦不在時も同じテーブルに堂々と座っている。
・有白の「そろそろ二人きりにさせてもらえませんか?」に対する「僕の一存では何とも」という回答
某所で響弦さんはツンデレ説が出ていたので、こんな感じで。
貸しに始まって貸しで終わる。お後が宜しいようで。
有白―響弦夫婦+息子青藍 ものすごく甘やかしそう
有白様と二人で交互にご飯をお口に入れて、一生懸命もぐもぐするのを眺めて
きゃわうぃ〜❤︎ てなる
ああ なんで青藍はうちの子に生まれてこなかったのかしら。。。
美味しそうに、きれいに、いっぱい食べる女の子が好きです。
ギャル曽根さんとかおいしそうに、綺麗に食べるからあの子は好きだなぁ。
>私は青藍さまと有白さまと響弦さまの関係大好きです^^
ありがとうございます。
あの三人は有白―響弦夫婦+息子青藍だと思うんだ(真顔
食べてるなぁ( *´艸`)
何かスッキリしたのかなぁ。
嬉しいぞー(●´ω`●)
私は青藍さまと有白さまと響弦さまの関係大好きです^^
>青藍と有白と響弦の関係。。とってもいいなぁって思いましたよw
ありがとうございますー。
男性陣も結構しっかり食べているのですが、字数の関係で深雪さんのメニューだけ詳しくなりました
一応レディースセットというか、女性向けメニューなのでそこまでガッツリじゃ無いはず…(笑
青藍と有白と響弦の関係。。とってもいいなぁって思いましたよw
ここに出てくる人達。。ツンデレ多いですねw( *´艸`)フフ
ここでも深雪ちゃん。。食べ過ぎのよぅなぁんww
>ということは 有白はお兄ちゃんだよ おいでおいで~♪
僕の中では有白さんがお父さん、響弦さんがお母さん、青藍が三歳児です(ぇ
対外だと切れ者、身内だとのんびりが有白先輩かなーと勝手に解釈してます。
普通のツンデレさんは、裸にひん向いてどーぞしたりしないと思うんだ……(遠い目
ということは 有白はお兄ちゃんだよ おいでおいで~♪
(青藍に鼻で笑われそう…;;) w
貸しをたくさん作っても 一緒に楽しくしていたいなぁ と呑気に思ってそうな有白。
エメさんのお話では頭脳フル回転の姿 藍色さんのお話では坊ちゃん育ちのゆったりした姿。
色んな姿で書いてもらえて とってもとっても嬉しいです (´∀`*)
そして借りは倍々になって返せそうにないですね;w
>ツンデレを越えたところにいらっしゃる気はします…
吹きました (o゚ェ゚)・;'.、
四端さーん!!
しっかりとなさってる老女中さんが思い浮かびました( *´艸`)
ツンデレを越えたところにいらっしゃる気はします……
>【藍色】くんと深雪ちゃんがツンデレなのよ
Σ唐突な僕への飛び火?!
有白さんの運転手さんが五島(ゴトウ)さんだったので、
響弦さんのばあやは四のつく、響きはありふれたお名前にしようと思って四端さんにしました。
他にも一、二、三のつく使用人さん、誰か登場させてくれないかなー。
藍色くんと深雪ちゃんがツンデレなのよ
にこやかな青藍に副音声で怒られたあたりが面白かったー^^
うちのばあやは四端さんなのですね φ(.. ) めもめも
ほんとだりょうおもいだやったねー。
・ミュミュさん
登場したつもりだったんですが……わりと微妙な感じになりましたw
デザートも一口サイズですし、合唱部は文化系と見せかけて体育会系な部活だから、多分大丈夫b
・ロワゾーさん
さよかw
・みぃさん
有白さんは青藍に恩を売るって発想が無さそうですからねぇ……。
実際の貸借表だと青藍のほうが赤字の気がしますw
・クリスタルさん
>何だろうこの家 やばすぎないか?
んん? 響弦さんのお家のことかな?
ランクとか、生業がなんであるかにも拠るんじゃ無いかなぁ……
響弦さんは深窓の令嬢らしいので、わりと厳格な、古めかしい感じの華族のお家にしてます。
メイドじゃなくてお女中、みたいな。
一方の青藍は一般家庭に毛が生えた、みたいな感じです。
食品関係ではないですねw ただの趣味ですw
やばすぎないか?
って 平安学園貴族の自宅ってみんなこんな?
噂の飯テロすごいね
と見返して見たらプロフィールの趣味がw
もしかしてお勤めは食品関係かな?
青藍くんに借りばっかり増えて返す暇なさそう♡(。→ˇ艸←)
本当に素敵なお話だった。
結局、オマケにも青藍くんは登場しなかったんだね。
新しい!!
ご飯食べることにした深雪ちゃんは
開き直ったのかスイーツ食べまくりww
クリームチーズ大福
焙じ茶と柿のタルト
ガトーショコラ
きっと紅茶かコーヒーも飲んだでしょ。
こうしてぷにぷにになってゆくのですね・・・(  ̄- ̄)トオイメ
当時の青藍が、有白さんの監視者でなかった訳では無いです。
ちゃんと監視も査定も、本家から請け負ってました。複数箇所の思惑を受けていたのです。
整理すると
①響弦の要請:有白となるべく邪魔の入らない環境で会いつつ、自分で彼をもてなしたい
②本家の要請:婚約者の査定・調査、響弦(と有白)の護衛、客人(有白)へのもてなし
(最後の案件は①とブッキングのため、①が優先)
③分家からの要請:有白の査定、調査
④有白家の要請:有白の護衛
器用貧乏の本領発揮(o´艸`)