カカオの薫る街で
- カテゴリ:自作小説
- 2013/04/26 18:30:06
この街では長らくカカオの貿易が営まれていた。
この街はドイツの植民地なのである。
港からは、熟成したカカオの実が輸出され、
欧州の王侯貴族の口へと運ばれる。
街からはカカオを営む者たちの喧騒が
やかましく聞こえてくる。
この街はカカオで発展していた。
植民地となる前は、
ほんの小さな街が存在するだけだったのである。
18世紀になって、カカオがカリブ海からもたらされた。
フランスの一時直轄地になったあと、
ドイツへと売却されたのである。
この街にカカオが薫るようになってから久しい。
その実は欧州へと売り渡され、
そして王侯貴族の口へと運ばれる。
庶民の手に渡るのなら
まだこちらもやりようがあるのだが、
いかんせん貴族の手に渡るようであれば
こちらも如何ともし難い状況にある訳である。
如何せんこの国はカカオの奴隷となってしまったようである。