Nicotto Town


アオイさんの日記


side 観測者・3

 そのまま、カウンターの中に入ってサハラがグラスを洗っていると、ことんと、もうひとつ空いているグラスをカウンターの上に置かれた。おや。と顔をあげるとそこにはカスミの姿があった。
「こういうテの事は一過性なものだから。しばらくしたら落ち着くわよ」
どこか慰めるように、カスミは言った。
 カスミも、それなりにこの騒動に対して責任を感じていたのかもしれない。その言葉に頷いて、気にしないようにします。とサハラは言った。
「俺が騒いだりしなければ、女の子たちもすぐに飽きるでしょう」
そう言うと、なんて冷たい男だろう。とカスミは笑った。
「ヤマブキの彼氏にでもなってくれないかなぁ。とちょっと考えたりしたのだけどな」
ほら今、街では結婚式が流行っているし。そう言葉を続けるカスミに、俺にはヤマブキさんはもったいないですよ。とサハラは笑った。
「ヤマブキさんにはもっとしっかりした男性が良いと思いますよ」
「つまりそれは、ヤマブキはサハラさんの手に余る変った女だ。ということね」
「そうとも言います」
澄ました顔でそう言ったサハラに、全くサハラさんは冷たくてひどい人ね。とカスミは愉快そうに笑った。
「あなたにきゃあきゃあ言っている女の子たちに同情するわ」
けらけらと笑いながらカスミはそう言って、ふと視線を窓辺に向けた。

「まあ、ここはアオイちゃんの店だから。自分が目立つのは本意ではないのでしょうけど」

 その言葉にサハラも視線を窓辺に向けた。
 開け放った窓の外に見える、天空の街をアオイたちは飽く事無く眺めながらおしゃべりをしていた。
 既に日は落ちていて、空の上に灯った淡い光がきらきらと輝いている。それを指さして、アオイが何か楽しげに話をし、それに対してヘイゼルが頬を染めながら返事をしている。横でヤマブキが茶化すように口をはさみ、それにまた、アオイが明るい笑顔を見せていた。

 その様子を微笑ましく眺めるサハラに、口元が緩んでいるわよ、とカスミがからかうように言った。
「というか、サハラ君がそういう穏やかな顔をするようになったとは、俺らも驚いているんだけどね」
「そうだな。最初は、この兄ちゃんはすぐにどこかに行っちゃうんだろうな、って思っていたからな」
いつの間にか空のグラスを持って親父たちがカウンターに寄って来ていた。
 まだ飲むんですか?と苦笑しながらもサハラは新たなビールをついで、彼らの前に差し出した。そしてついでに自分にも一杯。少し喉が渇いたのと、いつの間にか身の内に生まれていた感情をそのまま見せるのが、なんだか少し照れくさかったから。

 きっと自分は、おそらく。誰かを幸せにできない代わりに、幸せになりたい人たちを守りたいのかもしれない。

「なんか、見守りたくなる気持ちになりませんか?」
何を、とは言わなかった。具体的に「何」と限定が出来ない程に、気が付くと守りたいものがたくさんできてしまっていたから。
 おそらくカスミも、親父たちもその気持ちが分かるのだろう。すこしくすぐったそうな表情でそれそれ視線を交わした。

―――
巷のウエディングな雰囲気に乗っかってみたかった!
あまり乗っかり切れていないけど!w

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2011/06/12 12:16
>Mizさん
見えたら面白いなぁ。という妄想です(笑)
でもあんまり近すぎると昼間は日光を遮ってしまいそうだなぁ。とか思ったりもして^_^;

サハラさんのお話を書けたら面白そうですね~。
いつか書けたらいいなぁ^^
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2011/06/09 22:20
街から天空の島が見える…なんて想像したことありませんでした!
夜空を見上げると灯りのともった天空の島が見える…素敵~!

サハラさんが主人公のお話も聞きたくなってしまいますね^^
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2011/06/02 18:57
>藍流さん
観測用サテライトとか、かなり趣味に走りました(笑)
全てが機械化された町とか、神殿跡を守る少数民族とか、そういう旅ネタに弱いです~^^

サハラさんはスナフキンがイメージなのですが、あの孤独と自由の格好良さはなかなか出ませんねw
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2011/05/31 23:08
おぉ、がっつりサハラさんが!
旅した街で見た観測用サテライト、とか物凄いときめきますw
そっちの話も色々想像してしまいますね~^^



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