Nicotto Town


アオイさんの日記


side 3rd ANNVERSARY・1

 街の創立記念日当日。
 準備を終えてアオイはドレスに着替えた。裾の長いドレス。小さい頃に憧れた、お姫様みたいなドレス。シーツを身体に巻き付けて、ドレス代わりに見立てた事もあったっけ。
 ずるずると裾を引きずっていたあのころに比べて、背も伸びて、ドレスもそれなりに似合うようになった。
「髪型、少し変えてみたら?」
と、着替え終えたアオイにやっぱり着飾ったナンテンが声をかけてきた。
「私がやってあげる」
そう言ってナンテンは器用にアオイの髪を結いあげてくれる。誰かに髪を結ってもらうのはなんだか懐かしい感じがする、とアオイは思った。
「アオイちゃんはシックな装いが似合うね」
「そうですか?」
「うん、そのドレスも良く似合ってる。黒が意外に似合うよね」
「ありがとうございます」
さらさらと髪を梳く感覚を心地良く思いながらアオイがそう言うと、男の子が放っておかないでしょこれじゃあ。と含み笑いをしながらナンテンは髪型を仕上げてくれた。
「はいできた」
「ありがとうございます」
髪を結いあげると少し大人っぽい雰囲気になる。なんだか照れくさく感じながらアオイが鏡を見ていると、ヤマブキとカスミが迎えにきた。
 二人ともそれぞれによく似合うドレスに身を包んでいる。皆さん綺麗ですね、とアオイが感激の声を上げていると、それよりも、とヤマブキが声を上げた。
「はやく広場に行かないとシャンパンが無くなっちゃうわよ」
「なくならないわよ」
ドワーフの魔法が掛っているんだから、とカスミがヤマブキの横で苦笑を浮かべた。
「でも、早く貰いに行きましょう。折角のイベントだし、沢山の人たちが着飾っているのも見たいし」
カスミの言葉にアオイとナンテンも頷いた。

 中央の広場には積み上げられたシャンパンが飾られていて、その周辺にはこの日を祝うべく着飾った人々でごった返していた。
「凄い人ですね」
「皆、シャンパンが目当てなのね」
そんな事を言い、ヤマブキはにっと笑って、ほら貰いに行こう、とアオイの手を引いた。
 しゅわしゅわと炭酸がはじける音が人々の喧騒の合間に響いてくる。普通こんなに音は響かないものだけどこれもドワーフの魔法のせいだろうか。甘く爽やかなシャンパンの香りに微かに酔いながらアオイはそんな事を思った。




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