side Trick or Treat ・2
- カテゴリ:自作小説
- 2011/10/30 21:25:33
夕暮れ時の、たそがれ時。誰そ彼の時。
西日の眩さに比例して夜の闇が濃く深いものになり始めていた。とろりとした影が部屋のあちこちに溜まり広がっていく。その中で、アオイは夜の仕込みの傍ら食器を洗っていた。ことこととスープが煮立つ音とカチャカチャと食器が触れ合う音がかさなり響く。
昼間の喧騒がうそみたい。そんな事を思いながらひとりきりでアオイが店の中で立ち働いていると、からん、と扉が開く音が響いた。
「いらっしゃいませ」
反射的にアオイが声をかけると、そこには狼男の姿の少年が立っていた。茶色の耳に尻尾。逆光にまぎれてその表情がこちらから見えない。
「ああ、ヘイゼルさん」
先日、同じ仮装をしていた少年の名を呼ぶと、相手が微かに頷いたような気がした。
「今日は来るのが遅かったんですね」
アオイがそう言うと、相手はもごもごと歯切れ悪く何かを言って、手を差し出してきた。
「とりっくおあとりーと」
お決まりの文句。その言葉にアオイはふと微笑んで、では、とカウンターに置いたままのバスケットに手を伸ばした。
「ではトリート」
そう言って最後に残っていたマシマロファッジを差し出すと、相手は逆光の中で嬉しそうに笑った。
「ありがとう」
そう言ってアオイの手からお菓子を受け取る。その瞬間、あら、とアオイは声を上げた。
相手はヘイゼルではなかったのだ。背格好が似ているだけで知らない少年だった。
「ごめんなさい。知り合いと間違えてしまって」
「ううん。おかし、ありがとう」
相手はそう言って再び嬉しそうに、にかっと笑うと身をひるがえしてお店から出て行ってしまった。
オレンジの夕日の中、残されたアオイの目の前で扉が大きく揺れていた。
近所の子供にしては見た事のない顔だったし、子供と言うには少し大人びていた。話し方は思い返してみると少し拙い感じがした。
何だか不思議な子だったわ、とカウンター脇でアオイがぼんやりと立ちつくしていると、ふたたびからんと扉が開かれた。
「こんにちは」
中を窺うような様子で店内に入ってきたのは今度こそヘイゼルだった。先日に会った通りの狼男の格好をしている。
アオイが店内に居る事に、少しほっとしたようにヘイゼルは微笑んで、遅くなりました。と言った。
「学校の友達につかまって来るのが遅くなりました。皆さんは?」
「ええと、広場のパレードに行きましたよ」
未だぼんやりとしたままでアオイがそう返事を返すと、どうかしましたか、とヘイゼルが心配そうに声をかけてきた。
「ぼんやりして、大丈夫ですか?まだ体調が悪いとか?」
と先日アオイが風邪をひいた事を思い返してきたので、大丈夫です、とアオイは慌てて言った。
「いえ、あの今ちょっと不思議なお客様が来たから」
そう言って、あ、とアオイは声を上げた。
「お菓子、最期の一つあげちゃいました…」
「え、ああ、いいですよそんなの。遅れてきた俺が悪いんだし」
アオイの言葉にヘイゼルはそう言って手を振った。
お客様全員にお菓子を配りきれるとは思っても居なかった。けれど、できれば常連さんにはお菓子を渡したかった。うーん、とアオイは考えるように唸り声をあげ、それじゃあ、と顔を上げた。
「それじゃあ、トリックオアトリートですから、ヘイゼルさん、何か悪戯してください」
名案だとばかりに声を弾ませて、アオイは言った。
アオイの言葉に、ヘイゼル少年は嬉しいような心底困ったような複雑な表情になった。
―――――
ヘイゼル少年はでもヘタレなので、きっと大した悪戯はできないような気がします。
ハロウィンも明日で終わりですね。
こういう仮装とか、おかしくれなきゃいたずらするぞ!とか、かなり好きなイベントなので終わってしまうのがさびしいです。
というか、もう年末の準備に入らないといけないあたりが淋しいのかもしれない…
ハロウィン終わっちゃうの、淋しいですよね~…
でも、そうですねw改装、私は次はどうしようかな…?
ヘイゼル少年はもーこういう役割ですよww
そうですねwwそして悩みつづけるヘイゼル少年を、ヘタレだなあ、皆がからかうに違いないww
コメントありがとうございました!!
でもハロウィン終わらないと11月家具に改装できないので、そこは楽しみですwww
ヘイゼル少年の少年らしさは、相変わらず良いですね~(´∀`*)
何となく、タウンへ繰り出したヤナブキさん達が騒ぎに騒いで「あーお腹減ったー!」とお店に戻ってきても
まだ悩んでいそうだわw