Nicotto Town


アオイさんの日記


side 手紙

その手紙は、雪の降る寒い日に届いた。

きっちりと長方形の封筒に右肩上がりの、そっけない印象のある文字が書かれていた。
その見覚えのある文字に、封筒をひっくり返すと、差出人はやっぱり良く知っている人の名で。
アオイはかじかんだ指先がゆっくりと興奮で熱を帯びて行くのを感じた。

それはソラからの手紙だった。

しゅんしゅんとストーブの上に置いたやかんが沸騰している。その中に水を注ぎ足して、アオイはカウンターの中に入った。そこでグラスをひとつひとつ丁寧に拭き始めた。
きゅきゅ、と小気味よい音を立ててひとつひとつ、曇りをぬぐっていく。それが終わったら、今度はナイフやフォークなどのシルバー類を磨く作業。
お客さんが誰もいない、早朝のお店。白くよわよわしい冬の日差しが窓の外から店内に差し込んでくるのが心地よい。
今日はどんなお客様が来るのか。定連の顔見知りではだれが来るかな。どんなものを頼まれて、どんな時間をこのお店で過ごしてくれるのか。
そんな事を考える余裕がある、この時間がアオイは好きだった。

ほどなくしてやってきたのは、自転車に乗ったヘイゼルだった。
最近、ヘイゼルは学校に行く前に立ち寄って、温かな飲み物を飲みつつサンドイッチをテイクアウトをしていくことが多い。
「おはようございます、アオイさん」
「おはようございます」
いつも通りの挨拶をして、ヘイゼルがじっとアオイを見つめてきた。
「アオイさん良い事ありましたか?」
ヘイゼルの言葉に、よく分かりましたね、とアオイは照れたように笑った。
「ちょっと珍しい人から手紙が来たんです。どんな内容かはまだ読んでいないから分からないんですが」
「もしかして、その珍しい人って、ソラ、さんですか?」
ヘイゼルの言葉に、よく分かりましたね、と再度アオイは言った。
「なんでわかったんですか?」
「アオイさんがそういう顔をするのは大抵、故郷の人を思う時だからですよ」
なぜだか少し、複雑そうな顔でヘイゼルはそう言った。

お昼になり、ランチを食べに来たヤマブキやサハラ、仕事終わりにお茶をしに来たカスミや、閉店間際にひょっこりと顔をのぞかせたイサナにも、ヘイゼルと同じような事を言われた。そんなにも顔に出てるのか、とアオイは少し恥ずかしくなりながら微笑んだ。
「手紙、まだ読まないの?」
そうイサナの問いかけに、夜、寝る前に読みます、とアオイは言った。
「なんだか読むのもったいなくて。それに、本当にソラが手紙を書くなって珍しいから、ちょっと怖くもあるし」
「怖い?」
「うん。どんな内容なのか分からなくて。なにか嫌な報告だったらどうしようとか、そんな事を考えてしまって…それにソラからの手紙だなんて貴重だから、取っておきたい気持ちもあって」
アオイの言葉に、イサナは分かるような分からないような感じで首を傾げた。
「私だったらすぐに読んじゃうけどなあ」
「じつはそれ、昼間にヤマブキさんにも言われました」
気になるんだったらサッサと読んでしまえばいいのに。って。
とそう言って笑うアオイに、イサナは私もそう思う。と笑った。

閉店をして、お店のあまりもので簡単な夕食を済ませて。明日の準備も終えて後は寝るだけになって、アオイはようやく手紙を目の前に取りだした。
きっちりと長方形のシンプルな封筒に、そっけない印象の、右肩上がりの文字が書かれている。
朝見た時と寸分たがわぬその手紙を前に、アオイはひとつ深呼吸をして。そして封を開けた。

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2012/01/24 20:30
>うさSさん
そうなんですか~。
ちょっとほっとしました^_^;
コメントありがとうございます!
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2012/01/23 20:56
あ、わかりにくい表現ですみません^^;
何かウルッときた、ということです^^
何故だか。。。

ちょっとフォローに来ました^^;;
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2012/01/23 19:53
>うさSさん
おおお!だ、大丈夫ですか!
けっこうな量があるので、無理はせずに…。。

手紙の内容は、次にアップしました~^^
ここまで引っ張っておいて普通の内容だったりします(笑)
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2012/01/23 15:16
中盤ぐらいまで読んだところで
こめかみ辺りがちょっと痛くなりました。。
そして。。
手紙の内容はなんだったたのでしょうね^^?



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