ヘザーランドの調理師①
- カテゴリ: 自作小説
- 2013/08/09 19:21:00
ポチャッ
海辺に釣り具の垂れる音が響く。
「ウィリアムさん。釣れませんね」
少女はぼやいた。
「大丈夫さ。もう少しで釣れるって」
ウィリアム“さん”は言った。
「おぃ、ジョッシュ。餌追加で取ってきてくんねぇかな。
どうにも掛かりが悪いや、ここは撒き餌といこう」
ウィ...
いちはぜん、ぜんはいち。
ポチャッ
海辺に釣り具の垂れる音が響く。
「ウィリアムさん。釣れませんね」
少女はぼやいた。
「大丈夫さ。もう少しで釣れるって」
ウィリアム“さん”は言った。
「おぃ、ジョッシュ。餌追加で取ってきてくんねぇかな。
どうにも掛かりが悪いや、ここは撒き餌といこう」
ウィ...
釣り人は今日も海を眺めていた。
釣り糸を垂れながら海の先を見つめている。
「やぁ、何を考えているんですか?」
私は聞いた。
「ホッフェンハイムの街娘さんじゃねぇですか。
こんなところに、何の用で?」
「私、ブレーメンさんの様子を見に来たんですよ」
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午後3:45の日差しは―――
その夏は残酷で、ちょっとほんわかで―――
見るものすべてを凍りつかせそうな、
そんな日差し―――。
「シオリ、さっきの話―――」
「あぁ……」
「ユウトとは、長いの―――。
知ってると思うけど」
「うんうん」
アヤは頷いた。
...
古都・アレクサンドリアから
西方に3日。
砂漠の隊商は、
今日も砂漠で取引していた。
「300ドゥカートだよ」
隊商の男は言う。
「ありがとな」
僕は言った。
僕は金貨の入った袋を受け取る。
隊商にはカイロから運んできた宝石を渡した。
ガーネットは金になる。
砂漠では金より価値があるんじ...
窓辺には、紅茶が香っていた。
8月の、いや7月の窓際。
下では、通りの夏祭りの音が聞こえる。
太鼓・笛・気勢。
退屈そうな横顔が、
ふとこちらを見た。
「ジェニファー、この街は何回目?」
日本人よ。バカにしないで。
彼はふざけて呼んだのだ。
後で……後悔する。...