Nicotto Town


みっちょん恋愛の詩


幻影の中で


段々と日暮れが早くなる
それは秋の訪れを告げる
まだまだ太陽は眩しいけれど
夏の花も黄昏がやってきて
季節の変わり目を教えてくれる


部屋に花を飾って
明るさを取り戻す日曜日
誰に見せるわけじゃなくて
あなたに見せたかった


花が好きだったあなた
二人で植物園に行って
夏の花を見ていた
高く高くそびえる向日葵
あなたと辿りつきたかった


幻影の向こうには
あなたと私がいる
どこ向かいたかったのか
それは一緒だと思っていた
一本の道しか見えなかったのに


森の魔女が言っていた
あなたは歩く木
私はとどまる木
一緒にはいられない


意地悪な魔女の言う通りになった
あなたはどんどん歩いて行った
私に何が止められたろう
ここにいたままでその背中を
見つめることしかできずに


いつもいつも二人だと
思いこんでいた夏の日
太陽に照らされて
幻影が私たちを破って行った


とどまることを知らない私達の道
時も知らないうちに回っていく
その回転に引き込まれるように
私達が向かっていたなんて
悲しいという言葉ではあまりに辛すぎる


一度離れた道は戻らない
眩しかったあの日々も戻らない
いつかあなたの背中も見失うだろう
幻影から抜け出して私は
どこに歩いて行けと言うのだろう




                          (松谷みよこ:著「ももちゃんとぷー」
                                          一部引用)




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