Nicotto Town



古今亭志ん生『五人廻し』前話その1

このネタは男向きの話と思えるでしょうが、実は女性にとても受けた話で、したたかな女性の生きざまの一面を扱ったものです。 しかも男の方もこう言う笑える思い出があったと懐かしくなる人が当時大変いたそうです。

今回はちょっと前話が長いので知っていてほしい事を先にまとめました。前話を読まなくても以下の事だけ知ってれば話が分かるかと思います。

 郭~くるわ、遊郭の事、金を払って娼妓さんと遊ぶところ
 花魁~おいらん、娼妓さんの事、この時代では皆花魁と言ってたようで、江戸時代中頃はごく一部の娼妓さんのみ花魁と言ってたようでした。
 吉原~よしわら、廓のたくさん集まったところ、江戸時代末に何箇所かに統一されて限られた場所しか郭はなかった。
 裏を取る~初回はサービス、そのお返しに客は暗黙の約束で2回目も来ることになってる。
 引け~中引けは12:00頃で木(拍子木)が鳴る、大引けは2:00頃で、火を消し木戸を閉めるのでこの後は泊まるしかない。
 お茶をひく~大引けまで客がつかない花魁の事で、客無しだととても気まずくて居づらくなる。そのためこうゆう花魁は大引け頃は大変安く遊べるという仕組み、これを狙って冷かしで時間をつぶす客が多い。
 冷かし~店を眺めるだけで、品定めだけで買わない者の事。中にはこれだけしかしない客もいたようです。 再(さ)来週予定の『2階ぞめき』はまさにこれです。
 寄席~よせ、吉原にも寄席が有った様でして、22:00ごろに始まり中引けの0:00頃に終わる、冷かしは足が疲れるんでここで時間をつぶして大引けの頃に廓に行く客が多い。
 御職~おしょく、花魁のトップ、人気No1の人
 若い者~部屋の管理など一切を受け持ってる者、幾つ何十でも若い者
 おばさん~花魁の紹介や勘定などをする人、これも年が幾つでもおばさんです。

ここから前話しです。 この先は読まなくてもストリーは分かります。忙しければ本篇からどうぞ。

え~今晩は・・え~廓の話を申し上げます。 あいつぁーよくあんな事ばかり言うと思うかも知れませんが、川柳に“女郎買い 振られて帰る果報者” 振られるという事は大変に為にいいんですな、振られてしまうんだから。 だから“もう~~行かね!!”ってんで懲りちゃう、その時なまじ、えー・・女に優しくされて“んじゃ今度はね! きっと裏で来て下さいよ!” “うあぁ~、あっはっは”ってんでなー、裏に来るなんてねー。 裏というのは遊んで明くる晩行かないで一晩置いて行くのを裏と言います。 それはお客の義理なんです。 何故裏に行かないといけないかてぇと、初回と言って初めて上がった時はこのお客と馴染みになろうと思うから、その貸座敷でもなるたけ入費を使わせないで安く上げます。 その代わりに“裏に来てお前さん部屋に入って下さいよ”って、女の部屋というのは一つしかない、そこへ入るのは高い。 そこへ“部屋へ来て下さいよ”てぇから、その初回は安く上げた、で裏に来てくれで裏に来て、今度は3度目の来るのを馴染みという。この馴染みを付けるというのは、今度は女の腕が余程なけりゃあ3度目には来ない。3度、4度(よたび)、5度(ごたび)と来ると本当の馴染みになってしまう。

 そう言う風な馴染みになってくると若い者でございますから、里の管理が詰まってきますからねー、仕方がないから無理をする。 向うでも金を懸けてこっちでも金を懸けて、着ている物が段々とヘンテコになってくる。 持ってる物が無くなってくる、そうして来ると・・・と女の方で“この人はあたしにこんなになるまで・・来てくれるのかしら!” あ~気の毒だと思うてぇと女の方で“お前さん、今度来たときはあたしが出しとくよ”てんで今度は女が出す。 女に出されるからこっちも我慢出来なくなりまた何とか都合つけて・・来る。

(その2へ続く)




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