落語語らせて頂きます。
　”亭主！！　　　いるかな！“
　　　
”はー　　これはこれは先だってお買い求めくださってありがとうございます。今日は早々にあと金の支払いに来ていただいたので？”

　”さような事ではない。先日その方かたから買ったこの刀だが、---------------『伸びるな！』“

　　　“へ！！！？？？”

　 “この刀は『伸びる』と申しておる”

　　　“伸びる！？？？”
　
　 “言っただけでは分らんじゃろう。　　　身共がな往来を歩いておるとだな、、、この刺し料がピクンと反応いたす。　　　何かなっと思い調べると、いつの間にか鯉口が切れて２寸ほど伸びとる”

　　 ”あ、、それは抜けます！“

　 “いや、抜けるのではない！その時に上から抑えて押し込もうとしても、先が支（つか）えてはいってゆかんところを見ると、確かに伸びておる！”

“どうも伸びる刀などと言うのは---ちょっと拝見いたしますが、---見た処　大変具合よく鯉口なども収まっているように思われますが？　どうゆう時に伸びると言われますので？”

　“今は何ともないがな、----　身共も不思議に思っておる。ここ二、三日往来を歩くとき気お付けておったらな、------　刀や！-----もそっとこれへ！　もそっとこれへ！”

　　　“へぃ-----------へ　で、どうなっ-------------”

　“往来で、、、決まって、、、『女』とすれ違った時だ！”

　 　 “へぇ！！！？？？女！　そんな、----女見て伸びる刀などというものが？？あるはずは！！！　　あ--御勘弁を、、いやしかし女見ると伸びるなどとはどうも？？？　　イヤー女好きの刀などとはーーーはぁーどうも弱りましたなーこれは---”

　“その方が弱ると言っているが、身共の方こそ弱っておる。かようなものを指しているといざという時にまことに心もとない。こんなものを持っていても用を足さぬ！即刻取り替えてもらいたい！”

　　　”はああ---さようでござりましょうか～　　　は--------　でも不思議な話でございますな。　刀が伸びるなどとは！　　聞いたことがありません”

　“そのほう、身共の言うことがウソと申すか？”

　　　　”い　いえ　さようなことは申してはおりませぬ。”　

　“その方、儂（わし）を愚弄する気か？　儂の話を本気にしておらんな。　　では証を見せて進ぜよう。　その方のうちに女はおるか？”

　　　 “女、、、と申しますと？”

　“男でない奴じゃ！”

　　 “ああ、、作用で、　ええ手前の家内と里から預かっている娘が１人おりますが。”

　“ん—呼べい！”

　　 “へー分かりました、---（どうも弱っちゃたなーこりゃ）---あのおおーい　お前たち！　　ちょっと出てきてくれー！　------　　どうもお待たせしました。“

　“なんだこれは！？”

　　　 “いえーあの、、女でございますが”

　“確かに女か？？？”

　　 “そう言われると困ってしまいますが、正真正銘・・女・・ですな！”
　“しからばよい！　　それい、見てみろ！　　刀の鯉口のところを見てみろ！”
　
　　　 “どうにか為りますか？”

　“見てみろ！それ、、---んん？？”

　　　 “----------伸びませんな～”

　“んーーー、これは不思議だー！”

　　　 “いやそれは不思議でもなんでもない、伸びないのが当たり前でして！”

　“いや、これは確かに伸びるのである！　　ここでは駄目なのか？　刀やちょっと往来へ出ろ！　外で試してみる。”

　 ”分かりました・・・・・（なんなんだこれは・・・まいったなこりゃあひどい目に逢ってしまったぞ！　　今日は厄日か！“
*****************************************************

えー、途中ですがこれでおしまい。柳家小三治さんの『伸びる』の序です。大変珍しいネタで半分しか聞いたことありません。出し惜しみせずもっと聞かせて欲しいのですが！ 馬場進という名前は先代三遊亭円歌さんの落語でよく出てくる名前でペンネームとして頂きました。　大の落語通です。カセットテープで（平均120min)３００本ぐらい古典落語があります。ほとんどダブリが無いのですから、よくこんなに！と思います。