Nicotto Town



胴斬り~その2・・必ず1から見てね!

「そうか、それではこれから掘り出し物を致すかな! 小僧、その刀の縄を解けよ!どうも腰の物が縄を受けてるというのは、・・縄つきはいかん一本一本身共に見せろ!・・・え~これか! う~~ん!、無反りの剛刀だな。 これは斬れそうだ、が錆びがちと気に入らんぞ! 赤く錆びておる。 赤錆(あかさび)の刀はいかんと申す、これはまあよそう! そちらのを見せろ、・・う~~ん、これは長さは頃合いであるが、ちと反りがきついな、太刀に引かせるのではない、腰のものだ、これはよそう。・・・えぁ~、あとはこれか、・・う~~ん、これはいいぞ、・・・どうだ、青っ黒く錆びておる。 こういうのが掘り出し物だ!・・あ~~これをつつめ、ん~~~一貫3百で求めてつかわす。 亭主喜べよ!」

『はい・・(?)』

「一貫3百は現金で使わす。」

『はぁ~かようなものが月払いではどうにもなりませんので、現金で頂戴いたします。毎度ありがとうございます。』 ってんで一貫3百で刀買った。

 これを研ぎに出してみるってぇと、如何にも斬れそう! ちゃんとこれを刀に仕込みましてね、自分の刺料です。・・こうなると何か斬りたくてしょうがない、試し斬り、辻斬、どの道生きているものてぇと犬猫じゃぁいけませんから、人間ってところへ見当つける。斬るやつはいい心持でも斬られるやつは、どうもとんだ災難だ。

 夜陰に乗じて屋敷を抜け出た! あ~、だれか通りがかりの者をばっさりやろうってんですが、・・あの分別というものがございましては人なんぞは斬れません。 思慮分別!これが邪魔をする。 十二三になる小僧が歩いて来る。

「・・あれをばっさりやったらば、定めし親共が嘆くであろうな、あれは止そう。・・あ~二十五六になる威勢のいい若者が来た、こ奴にしようか! あ、まてよ、そわそわそわそわしている所を見ると、女房が持ちたてかな!若い後家をこしらえるのは不憫だ、やめよう。・・お~~来た! 三十七八になる男! おちついてるねぇ、こ奴ならば斬りでがあるが・・・まてよ、こんなに落ち着いてるところを見ると、女房・子が有るな。子供に泣きを見せるのはいかん、やめよう。 あとからまいったのが六十過ぎの年寄りだ。・・あ~腰が曲がっておって、これから先何年も生きられるものじゃあ無し、身共が刀の錆にしたらば、・・・・・孫がなくかな!」 ってんで、これじゃあ斬るものが有りません。

 迷いに迷った末に、護持院ヶ原へきますと、私人(しにん、一般大衆、この場合は乞食のこと)が菰(こも)をかぶって寝ている、その時分に剣菱に七つ梅(いずれも江戸時代の古い酒の銘柄)なんという酒がはやったころ。

「はは~、菰(こも)をかぶって寝ておるよ、私人骨立(しにんこつりつ、骨と皮ばかりの様)、いいものが目にとまったな。・・・ん~かかる泰平が打ち続いては私人では最早出世の糸口もあるまい、身共が刀の錆に致してくれる!」

刀ひっこ抜くと大上段に振りかぶって「えぇい!!」そのまま拭いをかけて鞘におさめて、屋敷に帰ってこれを改めてみると、刃こぼれ一つない!

「我ながらたいした腕前になった。」っで、こういうのは黙っちゃいませんでね。

「あ~、近藤、近藤。う~拙者の部屋へ遊びに参れよ・・ゆんべな・・フッ!実は出かけたよー!」

『ふぅーん、新宿か?』

「いや、新宿なんぞへ遊びに行かん、護持院ヶ原へ出かけてな!試し切りをしたよぉ。」

『ほぉー、何か斬るものがあったかい?』

「私人が菰を着て寝ておる。 一刀のもとに斬り捨てたが、きゃあと言う声すら立てん! どうじゃ身共の腕前は!」

『ん!あっぱれだな!あっぱれあっぱれ、甘茶でかっぽれ!』 なんてほめ方をして、聞いた友達が、

『あいつに斬れるんだから俺にも斬れる』

その夜、夜陰に乗じて屋敷を抜け出て、護持院ヶ原に来てみると、私人が菰を着て寝ています。

『ふ~ん、大した度胸だなぁ~、昨夜この処において同輩のものが斬られたという噂を聞かんはずはあるまい。 しかるに鼾声(かんせい、いびきのこと)雷の如く、うらやましい胆力だな! これが戦国の三世ならばあるいは一方の旗頭になれるかも知れん。 かかる泰平が打ち続いては私人では最早出世の糸口もあるまい、身共が刀の錆に!』 っと、同じような事を言って、一刀を引き抜いて大上段に振りかぶって、『ええいっ!』 と打ちおろすと、菰をポーンと撥ねて、
 「誰だい毎晩俺をどやしやがるのは?」
・・・・・・・
お粗末さまでした。 この後首提灯のくだりに入るのですがお長くなりますのでまたの機会に!

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2009/02/11 22:36
ん~続きが気になりますね~~。おもしろかったです。
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2009/02/11 20:00
この『胴斬り』は最後の落ちで、その前が多少ブラックな内容なだけに一転させ、明るい”笑い”へと返る
痛快な噺ですね!!
弥増す”彦六師匠”&”馬場進”様のファンとなりました(^0^)!

次回!?『首提灯』が大変楽しみでござします。

ウチは眠れぬ夜に、NHKラジオを深夜に聴く事が暫しあります
時折、演芸特集と銘打った番組を耳にする事がございますが
”落語”の際は聴き入ってしまい余計眠れなくなるんですょ
多分、元々同年代の方よりはずっと好きだと思うんですが
この”馬場進寄席”に導かれた事で更に”落語”を身近に感じる事
と成り、本当に感謝しております。

                     今後とも宜しくです!  笑夢☆!
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2009/02/11 01:48
 あなたサイコー! 落語の好きな人は頭が良くなる(?)。 国家議員に落語好きがいっぱいいるとかなんとか?
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2009/02/11 01:30
ぱちぱちぱちぱちぱち・・・!! いやあ~ いいですなあ^^すっかりその気になって、声を出して演目をやってしまいましたよ。今夜も楽しませていただいて ありがとうございましたぁ(^▽^)ニコニコ



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