Nicotto Town



三遊亭円生『初音の鼓』その2

 これから縁側にお立ちいでになりまして、鼓をもつってぇと殿様が、ポポポポポーンっと打ち込んだ。 ・・・生き物が出るってんですがね、こりゃあんまりあてにならない事で、ま、蠅が一匹出たって生き物にゃあ違いない。

で、殿様が廊下でもって鼓を調べたところが、・・お国元からその、お百姓が二人出ておりまして、お屋敷へ、・・夫役(ぶやく)といいましてね。 え~、御領分のお百姓がお屋敷へ出まして庭の、その草を取ったりなんかする、そりゃあ雑用でございますね、で、ひと月なり二月なり努めるとこの夫(ぶ)が帰りまして、また後の違った夫が来るという、これをその夫役と申します。

で、しきりに二人が草をむしっていると、縁側の障子が開いて、殿様がこっちへ出てくる様子だから 『これはいけない、お目障りになってはならん』 と、どっかへ隠れようと思ったが隠れるところが有りません、・・で大名屋敷ですからあの、縁の下が大変高いもので、ちょいとこう腰をかがめて頭を下げると縁の下を歩けるようで、・・その高ぉございますからあわてて二人がこの中に入って小さくなっていた。

何しろお大名の屋敷で普請がよろしゅうございますから、ポポポポポーンと調べた鼓の音が、こもりましてね、・・ん~、なんだか分かってればさほど驚かないのですが、訳が分からないで頭の上でガガガガガーンと響いたから、いやお百姓の驚いたのなんの! 我を忘れて庭へ二人の者がのこのこ這い出した。

 「お!・・吉兵衛、出た!生き物が出た!・・ん~ん!なんじゃその方どもは? 何じゃ?」

 『はぁ・・恐れ入りましてごぜぇます』

 「いや恐れ入ることはない、申してみよ、何じゃ?」

 『夫でございますで』 「何じゃ?」 『・・夫でございます』 「“ぶ”である?・・何のぶじゃ?」

 『何の夫てぇ事はございません、ただの夫でございます。』・・・

 「“忠信”!・・う~ん、鼓を打ったら忠信が出た。これは良い!・・して忠信!所望じゃ、壇ノ浦での合戦の模様を一段語って聞かせよ!」

 『そったらことは知りましねぇでございます。』

 「その方が知らずに誰が知るか?」

 『どうぞ次の夫(継信)にお聞き下せぇまし』

おありがとうございます。 最後の継信(つぐのぶ)は忠信の兄で兄弟で義経の忠臣だったことは有名です、この別題は“継信”とも言います。 もう一通りの初音の鼓は別題“ポンコン”といいい、またの日に彦六さんで、ご期待下さい。
 
 今回はやや小ネタだったのでいつもより早く披露しました。次回は柳家小さんさんの将棋の殿様の予定です(水曜日UP)。

アバター
2009/02/24 16:20
すみません><””
現世でも、此方の世界でも少しバタバタ
してまして、ゆるりとした気分の時
やはり、お聞かせ(拝見)頂きたく
本日と相成りました。。。

"ただの夫"="ただのぶ"=”忠信”
そして!
"次の夫"="つぐの夫"="継信"
お見事です!
落語は歴史の勉強にも成りますし
それから、雑学も知る事が出来るんですね
鼓の皮は”狐”使うんですか、知りませんでした
”狸”の皮なのかと、それは”腹鼓”ですか(笑

笑えて勉強にも成るなんて、やはり凄いですね
学校でも教えれば良いのに、落語!!!
次回も、楽しみです!
笑夢☆””
アバター
2009/02/22 23:23
おおお!!ぱちぱちぱちぱちぱち 
今回もなかなか いいネタですね。この演目を私(まだ子供の頃だった)が前に聞いたときには、落ちがわからなかった物だと思います。今日継信(殿様の兄)だと いうことがやっと理解できました。次回の落語も期待していますね^^



Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.