Nicotto Town



三遊亭金馬『釣り堀にて』その4

「だけどねぇ言わなくて済む事なら、なるだけそんな余計な事・・」 『余計と言うのがいけないんだよ、第一お前さんの話で行くと信ちゃんのお父っつぁん年がもっと若くなくちゃ合わない道理じゃないかー。』 「わ、若くなくちゃいけないかしら?」

『当り前さ、18のお嬢さんが初めてお嫁に行くのに10幾つも上の人の所に行くはずはないじゃないの。』 「そんな事分かりゃしませんよ。」 『分かりゃしないったって信ちゃんだもの、敏感だもの、その人を見りゃすぐ分かるわよ。 だけどしょうが無いねえ信ちゃん、どうしたんだろう?』

「内帰ってこないんですもの」 『行く先は分かってんでしょ? お友達の家、そこ行ったら?』 「そっからまた他へ出たって・・」 『しょうがないわねー2時でしょ、和中さん来る時分なのに。』・・・

 『お客様でございます』・・「はい、・・あー、和中さん、待ってたよ、遅かったじゃないの? ねえ・・お前さん1人? お客様お連れしなかったの?」

『ねえおけいさんどうしたのさ? 和中さんあの人急に用事でも出来たの? 日にち間違えたの?』 「・・いえ、ん!」 『病気?』 「・・いえ」 『ただいえじゃ分からないよ、どうしたのさ?』・・「嫌だって!」 『嫌だ!?』 「会う事無いって!」

「そりゃあ和中さん少し話が違いやしないかい? こないだの話じゃ先方でも“ね、信夫に会いたい、どんなになったか1目見たい”、そうじゃなかった? そんなら合わせましょう、会うんなら少しでも早い方がいい、善は急げだからとバタバタバタっと鳥が立つように今日と言う日が決まったんじゃなかった? それ・・今日になって嫌とは何よ嫌とは! 会いたくないとは何さ会いたくないとは! あたしはいいよ、あたしはいいけど、の・・信夫に対してあたしゃ何てぇのさぁ! あんまりおもちゃにするよ!!」 『本当よ和中さん、お前さんあたしに対して・・』

 「ま、ま、分かりました、えーあたしもそんなつもりじゃなかった、2つ返事でウンと言うと思った。」 『おも・・思ったとは何さ! そもそもこれはお前さんとあたしの計らい・・ま、さ、そんなちょろっかな事でね・・いやだ、私も悲しい! (クスン!) 私も泣きたくなって・・』 「まあ待って下さいよ、お二人さんが泣くより中へ入ってあたしが先に泣きたいんです」

女2人はテーブルへ泣き伏してしまう、和中と呼ばれる太鼓持ちも腕組みして後ろへ立って“ポロッポロッ”と涙こぼして・・

それから2、3日たった例の釣り堀で、御隠居さんと青年は相変わらず釣り糸を垂れてます。

(その5へ続く)

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2009/04/06 15:02
フンフン・・・ひょっとして、ひょっとしたら・・・・???



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