Nicotto Town



古今亭志ん生『猫の皿』その4

『え? ええいいえ、どうもいけないんですよ。』 「いいじゃないかなー、えー、この何だろ、まだ他に居るんだろ?」

『ええ猫は居ますんで・・えー、婆あに先逝かれちゃって、寂しくってしょうが無いんで猫をね、えー飼っていますが、その猫が友達を連れてくるねー、その連れてきた猫がまた子を産む、段々段々増えちゃいましてなー、今はもう内には、えー、十七、八匹居りましてなー、えー毎晩家へ連れて帰るんですよー、そいで明日また他の猫連れて来てやるんですよ、えー。 ほかの猫連れてくるときは大変なんですよー、片っぽの猫がなー、恨めしそうな顔しやがって、えへへへ、そうなんですよー、えー、可愛いんですよー、えー』

「そんなに居るんだからいいじゃねぇか、くれたってよー、えー!・・え、ただ貰わないよー、猫はタダ貰うもんじゃねぇってからなー、鰹節(かつぶし)代置こう、えー・・おっ!小判三枚でこれ売ってくれ!」

『え、そんなにあなたー?』 「いいんだよ、いいんだよ、気に入るから買うんだからねー、うん、なーうん・・いいかい? うん、そいじゃあまあこれから宿に行って、あー、なんか食わしてやろうか、うめぇ物食わしてやろうなー、うん。 んじゃもういいや、うん、これで行こう。宿が直(じき)だからな、・・」

『どうも小僧の奴は幸せな奴でございましてな、えっへ、可愛がってくださいよ!』 「可愛がるよー、大丈夫だよ、子供も居ねぇんだしねー、うん・・・この皿で猫に飯を食わしてたのかい?」 『ええ、え、そうなんです・』

「あーそうかい・・猫って奴は食いつけねぇ物だと食わねぇってからねー、この皿持ってって食べさせてやろう、ね・・」 『あああ、えっへっへ、それはー・・こっちにお椀が有りますよ、お椀でも食べますで・・』 「そうじゃねぇんだよ、やっぱ食べ付けてるもんで食べさせてやらねぇと・・いいじゃねぇかなにー・・いいよー!」

『ある・・それは、なに・・それは止して下さい!その皿は! へえ・・その皿はな、そんな皿ですけどもねー・・えー、へへ、お客様はご存じかどうか知りませんが・・それ高麗の梅鉢という、まあ中々手に入らないものでございましてなー・・こんなに零落しちゃってますが、その皿だけは手放さないのでございますよー、ええ。 内へ置いとくと物騒ですから、ええ、こうやって持って来てあるんですよー、ここへ! へぇへ、その皿は勘弁して下さい! へへ、それはもうー、黙ってたって三百両ぐらいには買い手が有るんですから。』

「・・・ん~~そうかい!?・・うーん、おりゃあ知りはしねぇやそんな事・・そんなたけぇ皿かい?・・ふう~~ん、そうかい(声が震えて)・・・うわ、いて!・・引っ掻いて・・引っ掻くない!畜生め、何で引っ掻くんだよー、ショッ!! う~引っ掻きやがって・・唸ってやがる・・うー、あ!しょん便した! あー、嫌だよ俺は猫はー、猫ぐれぇ嫌な物はねぇよ、俺はー・・・ううう、何だってそんな大事な皿でおめぇ、んんん、猫に飯を食わしとくんだよ??」

『その猫にご飯を食べさしておきますので、猫が三両で売れますんですよ!』

有難うございました。 ここで玉置さんの解説です。

“この話は生粋の東京落語で上方では米朝さんが初めてやったとの事と言ってました。東京の噺家は風流人が多かったんで、たとえば『金銘竹』とか『大仏餅』などに骨董品様々出てまいりますが、その骨董品についての説明も誤りも少なく大変行き届いてるとその道の専門家も認められてらっしゃいます。 上方にはこの種のお話が非常に少ないようでございます。 米朝さんも『はてなの茶碗』と言うのをやりますが、これに出てくる茶碗は本当の意味での名器ではございません。 えー高麗の梅鉢、これは大変高価な焼き物だったらしゅうございます。”

来週は『二階ぞめき』を予定してます。

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2009/04/15 23:52
パチパチパチパチ・・・!このお話も何度聞いてものどかで、いいですねえ^^今夜も楽しかったです。ここで落語を聴くと、癒されますね(^▽^)ニコニコ



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