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森乃福郎『太閤の猿』その3

「か~、もうー、来んかいな~」とお待ちになって居りましたが、そこへお越しになったのはご家来の大大名で御座いますが加藤清正公で御座います。 これはもう大紋の袖をばこう掛け合わせまして丁重に、『加藤清正に御座ります。 殿下には麗しきご尊顔を拝し恐悦至極に存じ奉り(たてまつり)ます。』 「おお清正来たか! うん、よう来た! 猿、行け!!」

“猿、行け!”ちゅうと、猿はこの袋竹刀持ちまして清正さんとこ行きまして首筋の所を“ポン!” 『こりゃ!何をする、このサ・・たったった!・・あ~・・(これは殿下御寵愛の猿)あ~へへぇ~!』 叩かれてへへ~ゆうとあやまってますが、さぁー面白い! 『(こういう事を殿下がなさるとは!)』と思っておりますと、この後へ同じくご家来衆で福島正則、この方も剛勇の方で御座いますが、ずず~っと御挨拶にお見えに成りまして・・

『福島左衛門尉(さえもんのじょう)正則にござりまする。 殿下には麗しきご尊顔の呈を拝し恐悦至極に存じ奉ります。』 「おお正則か、よう来た! 猿、行け!!」 猿また袋竹刀持ってチョコチョコチョコチョコッて行くとこの福島さんの首筋を“ポン!”

『あ~、こら何をするか! こっち来い、こっち来い!・・』 「正則殿! ご辛抱で御座る、ご辛抱で御座る! 殿下御寵愛の猿にて御座る!」 『は! か~~、左様で御座るか、よくぞお留め下さった! は~!!』 「お礼を申し上げろ!」・・

もう殿下のやっぱり顔色見ておかんと、殿下の可愛がっておられる猿が無茶するんですから怒るにも怒れん訳で御座います。 この後加藤嘉明(よしあきら)、片桐伊豆頭且元(いずのかみかつもと)・・登城して参りますとみんなこの首筋んとこを猿に叩かれる。 この噂が奥州伊達大膳大輔(だいぜんのたゆう)政宗公の耳に入りました。

独眼竜政宗と言いますなー、伊達政宗! この人は偉い人で御座いましてね、永禄10年と言いますから1567年・・数字よう覚えてまっしゃろ私、鈴木健二か私かちゅう様なもんで・・永禄10年にお生まれになりました。 これがあの東北の米沢で御座います、生まれた所が・・ちょうどその頃織田信長公が上洛寸前で御座いまして34才、そして豊臣秀吉公、太閤殿下が32歳の折りで御座います。 その折にお生まれになりましたが、もし20年早くこのお生まれになってたら天下統一は伊達政宗公がなされたんではないかという名君で御座いました、この方は。 ただあの5歳の時にですね御病気になられまして、それが元で右目がこう御不自由におなりになった。 そこで独眼竜政宗と言う、ま、そう言う仇名の様な物が付いた訳で御座いますが・・来年またドラマでやるそうで御座いますよ、ちょっとサービスに宣伝しておきますけども・・(S62年、1987年放送の大河)

さあこの伊達政宗公の耳に入ったから、「いかに殿下のお言い付けとは言い条、猿が大名をぶつとは誠に持ってけしからん! 余が諫(いさ)めて進ぜる!」 と言う事で家来を連れまして猿預かってる武村三左衛門のお家へお越しになりました。

「おおー、武村殿は居られるか!」 『これはこれは伊達のお殿様で御座いますか。』 「んん、あの~貴方の所に猿が居るそうじゃのー?」 『はは、殿下御寵愛の猿で御座いますが、えー、何か御用事で御座いますかな?』

「いや、その猿にちょっと逢わしてもらいたい。」 『いえ、もしもの事が御座いましてはその、私めがこの色々腹を切ら・・』 「いやいや分かっておる分かっておる、次にな城中でお会いする事になっておるが、前もってお顔だけでも拝見したい、んー!・・菓子入れを渡せ菓子入れを渡せ・・いや何か買ってくる物も無かったから・・うん、これ2百両有る、2百両! ん~、菓子でも買って、え~食べてくれ! ほれ2百両!」 『おおー、左様で御座いますか!』

こう言う時に贈収賄の罪と言うのが成る訳ですがね、これね・・2百両もろうたもんですから、『んな、また明日も来ておくんなはれ!』、てな事に成りますわな。2百両もろた、それで菓子でもこうとくれという訳だ、やっぱり伊達の御殿さんと言うのは気が大きいですからポ~ンと2百両出す。 さらに当時の2百両ゆうたらそんなもん饅頭こうたらどれだけの数あるか、もう武村はんとこ親類縁者全部食べてみな虫歯に成ってまえてなもんで・・で、もう案内されまして・・




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