Nicotto Town



金原亭馬の助『粗忽の使者』その4

『あぅ!・・すいません、えー、ぼんやりしてまして、へー、へー、何ですか、へーへー、へいへい、ここで挨拶ね、へいへい、丁寧にいけばいいんでしょ、へいへ・・どうも、へぇへ、えー、奉るんでござんす、おこんちはでござり奉ります。 おこんちは貴方様がお使者のお口上をお忘れ奉ったてんで、早い話が貴方様のおケツ様を・・』 「その辺で良い! 取り掛かれ!」 『そこで見てんの?見てたらやりにくいよ、どっか行ってくんねぇ。』 「左様か・・地武太うじ、身共次の間に控えおります、お思い出しの節はお声をお掛け願いたい。 万々(ばんばん)粗相の無きように!」

『分かってるよ、早く向こう言っちゃってよ、爺、うるせぇー・・どうも、あ、うん! 田中うじ! お体におピタリで御座るよ! お覗きを奉ると仕事がやりにくく奉る。 お覗きでは御座るまいなー!』・・

『おう、小父さん! 小父さん!』 「は?」 『しっかりしろやー! お使者の口上忘れちゃったって? そそっかしいなー! やってやるよー、おりゃあでぇく(大工)なんだよ、人助けにやって来たんだよー、早くケツ出しない!』

「えらく乱暴なるお言葉の御仁・・それでは何分ともお願い申す。」 『出しやがったね野郎!・・お覗きでは御座るまいなー・・後ろ向いちゃ駄目だよ、後ろ向くと目ん玉指突っ込むからねー・・・汚ねぇーケツしてやがんなこいつ!・・これで効かなきゃしょうがねぇんで、いいかー、行くよ! ほいきた、ほ~ら!・・どうでぇ~! 効いたろ?』

「は? 冷たい手で御座るな御貴殿の手は! いや、事のついでにもそっと手荒く願いたい!」 『え? 効かないのおい? 大変で御座るよこっちは! 駄目だこりゃあコチコチだ、柔らけぇとこ噛ましてこうひんねじってやるから覚えてろ、こん畜生め・・い・か・が・で・ご・ざ・る!! う!・う!・・で!・ご・ざ・る!・・ど・うで・御座るか・うう!』

「おお、これはこれはえらい大力、痛み堪えがたし!」 『ど~~で・御座る・・か?』 「いや!! 思い出して御座る!!」 『お! お口上は?』 「いや、聞かずに参った!!」
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馬の助さんも49歳という若さで亡くなられた方で、惜しい師匠の一人でした。 若い頃から老成していたというか、年より落ち着き過ぎていた方でずいぶん尊敬を受けていた師匠だったそうです。

さて次回から6月特集という事で三遊亭円生さんの話をお送りします。 円生さんのネタは長い物が多くて(平均60分)、選びにくいのですが、比較的短めの物選びました。 次回は軽いネタで『野次郎』でございます。

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2009/05/28 01:39
ぱちぱちぱちぱちっ!「粗忽の使者」面白かったですっぅ
こういうのは、軽いし面白いんで、すぐ読めちゃいますね。

次回は円生さんですか。楽しみにしてますね^^



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