初めて一人降らしをしたのは、１８歳の初春、大学の入学式の２週間前で、おじいちゃんが、某○○庁で階級だけは上がりきって常に窓際族を延々とやり遂げて、60歳定年後、天下り３社目の頃でした。
　おばあちゃんに内緒で、おじいちゃんが買った大田区○田のマンションを使えと言うので、使わしてもらったのが最初でした。このマンション、バブルの頃、これは来たと思ったらしく購入も、売り時を逃して値が下がる一方で、益々おばあちゃんに言えなくなってて、私が4年間住む事で、その為に最近買ったと言う話で、うやむやにして、私が卒業後、たとえ幾らでも売っぱらって禍根を断つつもりの、おじいちゃんの思惑・・・何故かおばあちゃんも喜んでいて、損失を追及されず丸く収まりそうな雰囲気でした。

　自慢じゃありませんが、この頃の俺、コメを炊いた事もなければ、洗濯機を使って洗濯をした事もなく、服を折りたたんだ事も無く、茶碗やコップすら洗った事も無く、風呂を沸かした事も無い・・・そんな子でした。
　別におぼっちゃまな訳ではなく、昭和一桁生まれのおばあちゃんが、そういうのは女の仕事だと、やらしてくれなかっただけで、茶碗を洗ってみようとすると、「みっともない男は台所をウロウロするもんじゃない・・・」とか、「おじいちゃんみたいに、ソコにデーンと座ってな！」と、いつも怒られていました。
でも、干した洗濯物は取込んでくれとか、買い物袋を持てとか・・・色々矛盾しているんですが、おばあちゃんが我が家のルールなので口答えは全く出来ませんでした。ですので、運動能力とは切り離して、私は超軟弱に育ってしまったと思います。
　文句無しに、家事全般なんの知識もなく経験もありませんでした。←ﾊﾞｶﾀﾞﾖﾅｧｰ

そのマンションは、９階の２ＬＤＫで、私の持ち物は、テレビ１台、布団一式、ＣＤラジカセ１台、ギターアンプ１台、ヤマハのエレクトリックギター、おばあちゃんの使わなくなったフライパンと鍋、コップ２個、めし茶碗、箸２組、茶碗、着替えアイテム一式など・・・ニコットの様にお部屋アイテムがもっと必要でした。

　その頃まで、お金は基本的にお小遣いとして貰った事が無く、何か学校で必要なものとかは、その都度おばあちゃんから貰っていましたので、お小遣いとしては、おじいちゃんが会う度にくれるお金が総てで、高校の時は多く持ってくとそれなりに危険なので、常に２千円しか持って行かないことに自分で決めていて、残りは部屋の中に隠していたのですけど、おばあちゃんの嗅覚は尋常じゃなくて、天井裏でも密封したドロップキャンデーの缶の中でも、絨毯の下でも・・・全部見つかって、「若いもんが、こんなにお金持ってると、ろくな事しないから、預かっとく」とかさぁ・・・その中から３千円くらいは私に貰くれたり・・・

　しかし今回は、絶対お金が必要になると思い、10日ｹ月位前から、当時はいつも身に付けてた母の形見のロザリオに、お守りを結びつけて、寝る時もお風呂の時も持ちこんで浴室で濡れないように注意しながら、お守りの中にお札をビッチリ詰め込んで、お部屋アイテム購入資金を地道に貯めていました。
　おばあちゃんは怪しんでいましたが、さすがに見つからず。
その年の３月某日、前もってささやかな家財道具一式を○田のマンションにに送り、おばあちゃんに隠し通した13万円ちょっとを持って○田のマンションに引っ越しました。

　これからの一人暮らしを夢見て、あんな事やこんな事や・・・してみたい事が、憧れや希望が固まりとなって、胸の中で、綺羅めく小さな恒星が発光している様でした。
つづく

　インパクトに欠ける題材で、退屈かも・・・気楽に読んで頂ければ幸いです。
　家事全般を全く知らないが故に、次々に直面する諸々な事象に慄きビビル。
　　　　次回を待ってねo(^-^ )o