夜のせいもあって、視界が１０ｍくらいしか利かない。雪が横に振ってるみたい・・・あまりの出来事に、おじいちゃんと、二人、黙って立ち尽くして吹雪を見入る。
　が、こうしてる訳にも行かず、案内センターの人におじいちゃんが宿を尋ねる。全然シーズンじゃないので、駅のすぐ近くの国際ホテルで泊まる事ができました。もう、この場所から吹雪越しに見えてるトコで、すぐチェックインする。
　実際２７時間にも及ぶ列車移動で、疲れ果てていて、あっという間に、おじいちゃんも私も眠ってしまう。
　翌朝、１０時ごろ目覚めて・・・はて？今日なにしようかとおじいちゃん共々悩む・・・ここでの観光の知識がゼロな事に改めて気付き、まして外は猛吹雪・・・
　ロビーで頭を抱えていると、白鳥のポスターが目に入る・・・ホテルの人に聞いたらタクシーで３０分くらいだと・・・しかし・・・白鳥なら・・ココでなくても・・・まあイイヤ、どうせ吹雪でなにも出来ないので・・・という事で、確か「小みなと」だか言うところにタクシーで向う。こっちでも珍しい吹雪だと聞かされる。こういうのを地吹雪というらしい・・・

　小みなと海岸の白鳥の飛来地に向う・・・すごい吹雪で昼なのに視界は真っ白で１０ｍ無いくらい・・・白鳥の飛来地に到着も、観光客０で、入り江に居るはずの白鳥など吹雪で見えない。仕方なく、掘っ立て小屋の様な所で、白鳥のエサ(細かく切ったパンミミ)を買って、白鳥の居るらしい入り江に近づいてみる･･･
・・・おおぉ！いるいる❤・・・
　吹雪の中ジッっと寄り集まって途轍もない数の白鳥の群れが入り江に浮かんでいました。
　パンミミを、１個近くの入り江に放り投げてみる・・・と、
ｻﾞﾊﾞｻﾞﾊﾞ! クエー! ﾊﾞｼｬﾊﾞｼｬ!! クエックエー! ｻﾞﾊﾞﾊﾞｯ!!ﾊﾞｼｬﾊﾞｼｬ!クエックエッ！･･････
･･････死肉に群がるハゲタカ？いやいや白鳥の群れ・・・観光客がどうみても、その日一人も来ていない感じで、そうとう餓えてる・・・数の多さと貪欲な群がり方に恐怖が広がる・・・おじいちゃんは？辺りを見ると、白鳥のエサを売ってるおじさんと話し込んでるっちゅうの！
　仕方なく、楽しもうと、一握りのパンミミを、入り江の境目に投げてみる・・・
　クエーッ！ｻﾞﾊﾞｻﾞﾊﾞ! クエックエー! ﾊﾞｼｬﾊﾞｼｬ!! クエックエックエーッ! ｻﾞﾊﾞﾊﾞｯ!!ﾊﾞｼｬﾊﾞｼｬ!･････恐ｨｮｮﾖﾖ∃"ヽ( ﾟ∀ﾟ)ﾉ"ｮｮﾖﾖ∃ｩ!!
　飛ぶは泳ぐは丘に上がったのは羽を広げて駆け足で、エサ目掛けて突入して来る。
　　｡ﾟ(●ﾟ´Д)ﾉ｡ﾟウﾜﾀｧｧｧ･･修羅場だぁ！(｡☉ ☉!!) 白い悪魔だぁぁぁ！！
　目の前でエサの奪い合いをしていた白鳥が、私の手に持ってるパンミミの袋に気が付く！！
・・・周りを見回すと、数をも知れない白鳥にすっかり取り囲まれていて、全員同じ顔、同じ黒いつぶらな瞳でこちらを見て「クェックェックェッ」と鳴きながらジリジリ迫ってくる・・・
「クェックェックェッ」今にでも飛び掛って来るかの様な殺気を孕みながら、四方八方から間合いを詰めてくる・・・無表情なのが尚更・・・怖い・・・怖過ぎる･･････
・・・食い殺される・・・
　咄嗟に、パンミミの袋を白鳥の群れの真っ只中に投げ入れ、出来た隙間を走って脱出に成功する。
　ふぇ～～！怖かったよぉぉぉ！！・・・
　しかし・・・おじいちゃん、大笑いで・・・
あの恐怖が分からんのかい！・・と腹立たしくもアリ・・・バツ悪くもあり･･････
ブン剥れで、待たせてあったタクシーに乗り込みホテルに帰る。
　ホテルに戻り、おみやげなどを買って、次の日、行きと同じ急行列車で、仙台まで行き、親戚んちに５日泊まり、仙台から東京駅までは新幹線で帰って来ました。
　たださあ・・・あのクローンみたいな無表情な同じ顔の白鳥の群れに囲まれて、間合いを詰めて迫って来られる恐怖は、１０歳の私にはかなりのものでしたよぉぉぉ・・・
　今、思い出すと可笑しいんですけど、クエックエッだし（笑）。
　しかし、始めて体験し、始めて見た雪景色は、その冷たい雪のまたは冬の匂いも功を奏して、混じりけのない静謐で純白なイメージで、怖いほど綺麗なものでした。
　ディーゼル機関車の車輪が雪を巻き上げる雪の粉で、白く煙ったように見える車窓からの、雪を纏った山々や民家、時折見える荒々しい冬の海、うらぶれた漁村・・・総てが哀愁を纏って印象強く、おじいちゃんと私は飽きもせず、雪が山々まで引き下がるまで口も聞かずに見ていました。
　　　　　　あの、クエックエッさえ無ければ・・・
　　　　　　　　((【･:*:･終･:*:･】))