私の好きな作家乙一さんの小説の映画化で思う事っていう事で、
　まず、乙一さんの小説を面白そうだから読もう、と思ったキッカケって、やっぱり、社会現象にまでなった「ＧＯＴＨ ゴス」→使い回しで「ゴスロリ」、ファッションにまで波及した造語の影響力ですね。どんなの書くんだろ・・と。
　読んでみると「ＧＯＴＨ ゴス」は、「ゴシック」であり、ヨーロッパのゴシック建設の事ではなく、ゴヂック小説から取った言葉だと分かりました。
　あのフランケンシュタインやドラキュアの花嫁やら、不気味なもの、葬式の服装のイメージ・・・
　実際、猟奇的な殺人をテーマにした作品が多いんですが、出てくるヒロインは、森野 夜をはずして、総じてとても正義感が強く、恐怖に震えながらも真実を掴もうと・・・それは健気であり、孤独であり、こんな善良な心を持った女性が編実にいるのかと、自問してしまうほどです。
　映像化したら「ハンニバル」を超えるグロテクスなシーンが満載の映画になると思っていたんですが、
　映画制作の会社の目を付ける作品は、キレイに猟奇殺人のない作品を映画化しています。
　たとえば、「暗いところで待ち合わせ」「きみにしか聞こえない」とかです。
　これらの作品だと、ヒロインの「正義感が強く、恐怖に震えながらも真実を掴もうと・・・それは健気であり、孤独であり、こんな善良な心を持った女性が編実にいるのか」・・・この部分が強調された作品になって、田中麗奈扮する盲目の「ちはる」の、孤独を自分の一部にしてしまい、静かに命が尽きてゆくのを楽しむような所とか、たった一人の親友と盲人用の白杖を使っての外出の是非で対立しても、彼女を失いたくないため、始めて一人で親友の家まで歩いて行く（もちろん、主役の男性が絡んでいますが）とか・・・
　映画の印象で、作家乙一さんに付いたニックネームが、「せつなさの達人」です。
　現代のゴシックホラー・フロテスクながらも、対比としての美しさがあり、異常な殺人者の偏った正義があり、微妙な均衡を楽しむような。
　そんな作家だと世間から見られず、「せつなさの達人」と呼ばれるのは、乙一さんにとってどうなのだろう。
　イチ読者には分かりませんが、彼はどっちにしてもテレビに出てくるタイプでもないし、とにかく世間に露出して芸能人の様に振舞う事など、絶対無いと思います。
　常に見る立場、常に大衆の中の一人、それが彼の作品を創るスタンスであり、彼の作品の主人公であるのだから。