Nicotto Town


三蔵外伝「太陽の破片」


臨死体験其の弐 (無理やり)最終章)

臨死体験其の弐 (無理やり)最終章)

 枝に絡めて掴まっている手足を何度も組み替え、ひたすらしがみ付いているうちに、意識が遠くなって来て視界は闇に・・・

 この後、気が付くと、さらにかなりの数のこの世と似たような違うような場所に居ては、次の場所に・・・共通してるのは、周りに人が居ようと居まいと、熱かろうと寒かろうと、常に1人で、苦痛に耐えるだけの世界でした。
 刹那、この場所から子宮へ、胎児のなかに入り込めそうなところもありました。なぜ、そう思えるのかは、分からないんですが。
 その誘惑は強烈で、かなり迷う。しかし、自分の自我を捨てられない。捨てたくない。ために身動きできず立ち尽くす。

 と、あたり一面の雪原の中に只一人立ち尽くしている自分に気付く・・・
 空は低い、日が暮れたすぐ後の様だ。低い雪に覆われた山々が見える。視界は強烈に鮮明だ。
 日が沈んだと思われる方角から桃色の空と、それに染まった山並と空、全天の半分は青紫色で、総じて空は明るい。一面の雪原は足跡一つ無く、非常な清純さを感じる。
 風も無いのに、身を切るような強烈な寒気を感じる。私は身に纏うもの一つ無い裸だが、陰部の恥ずかしさを全く感じない、周りに誰もいないせいではなく、そこら辺がうつろで違和感がまるで無いからだ。
 もう寒さを通り越して、痛い・・・うずくまって両足を手で持って横たわる。地面の雪についてる体半身が痛いほど冷たいが、もう動けない・・・寒い痛い寒い・・・ふと気付くと。ここには音が無い。
 自分の呼吸する音も心臓の鼓動音も・・・ただ、悲しいくらい美しい雪に覆われた山並み・・・強烈に襲ってくる孤独感。(家に帰りたい、家に帰りたい)小さな頃・・ハイハイして母を追った頃、歩いて父の後を追った頃、亡くなった父母の顔、おじいちゃん、あばあちゃん・・・

 突然、あたり一面の闇に包まれて、上も下も分からなくなる。
 体が、指先が乾いた砂のように崩れてゆく・・・あれっ・・・集中して自分を保たないと、消えてしまいそうになる・・・延々とそれを繰り返す・・・自分が無くなっていく・・・
 俺は三蔵だ!小さな頃のことも、学生の頃の事も、友達も彼女も全部おぼえている。俺は自我は絶対失わない!強く思った・・・・・・そしてどうせ死ぬなら、知りたい(願いかも)、この世はどういう仕組みで出来てるんだ!生命とはなんなんだ!魂とは!この地球とは。物質とは。生物とは。この宇宙とは。時間 とは・・・

 それは、唐突に出現した。

 暗黒の宇宙の果てに、緑色に光る大きな波が?見渡す一面に、柔らかいのか固いのか分からないけど、果てしなく続く透き通った壁?・・・ソレは緑色に発光する線で区切られた、幾何学模様のパズルの組み合わせ・・・隙間無く奥行きの在る無限の幾何学の立方体の集合?・・・
 なぜそう思えるのかは分からないけど、其の中に、自分が居るべき場所を見つける・・・
 ・・・そこに入ってみた。
    瞬間。
 この我々の宇宙の仕組み、生命の仕組み、意識と生命と物体と有機体の仕組みが、私の中に奔流となって流れ込んできた。
 そうか、そうなっていたのか・・・しばし。歓喜で恍惚となる。
 しばらく身を任せてみると、自分の居場所はここだったという安らぎと心地よさを憶える。

 暗闇に浮かぶ地球が見える・・・是ほど美しいものは存在しないと思うくらい、光輝きそれでいて眩しくない・・・山々、人々も見える、その総てのモノの中心が緑色の光の点を持っているのが見える・・・

 帰って皆に伝えたい・・・よしっ帰ろう!わき目も向けず、自分の場所より飛び出す!
 今まで来た道を通らず、あの青く輝く地球に向かって真っ直ぐに・・・
 自分の体に・・・向かって。

 目が覚めた・・・傍らに居た、おばあちゃんがびっくりして、ひっくり返りそうになる。
 憶えてきた科学的、理論的・真理を、今すぐ教えたいが・・・
 その日のうちに呼吸器とかを首から外して、何日か静養してる間、肝心の部分に霞が掛かったように言葉が出てこない・・・マズイ・・・憶えていない・・・なぜ・・・
 その後、普通の骨折やら打撲の治療にもどりました。
 その半年後。ようやく松葉杖がなくても歩ける様になり、退院しました。

 みんなに。また始まったとか、鬱陶しがられながらも、それが、なんだったのか、未だに模索中の三蔵くんでした。

 

              ((【・:*:・終わり・:*:・】))




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