私はいつも通り慣れた道で、何気におかしな世界に迷い込んだ事が２度あります。
　場所は国立で。閑静な住宅街での事です。わずか２年前、心身ともに凄く疲れていた時期でした。
　同僚と焼き鳥屋で飲んで、会社のみんなと行き付けの国立の北口のスナックへ行きその帰りに、南口に住んでいる友達の家で貸している、月決めの駐車場に止めて置いた単車を引き取りに行った時です。
　　　　　　午前2:30頃です。
　大通りから１本早く曲がったのか。その駐車場に着きません。
　大通に戻ってやり直すのが面倒で、この民家の横を突っ切れば１本向こう側の友達んチの駐車場のある通りに出ると思い、民家と民家の狭い隙間を通った時に、竹やぶが邪魔ですり抜けるのに散々苦労して、１本向こう側の路地に出たつもりだったのですが、違うんです。見覚えある様な無い様な場所で、戸惑っていました。
　だって、片側が赤土の小高い丘で、その上部は竹やぶなんです。いくらなんでも、国立にそんな場所が在るとは思えません。が、あるんです。
　(あれっ、変だな、大通りに引き返そう・・・イヤッ、突き当たりで繋がってるから引き返せるはず・・・その方が近いはず)そう思って、引き返してみたら・・・いよいよ分からなくなって来ました。
　片側は見慣れた住宅街なんですが、右手側がやっぱり、赤土の小高い丘で、その上部は竹やぶなんです。
　(ここは、どこだ？・・・このまま、大通り側に引き返さず、この突き当たりの道で真っ直ぐ行けば中央線の線路にぶつかるはずだ・・・ちょっと行ってみよう)・・・線路には突き当たったけど・・・かなり・・20ｍは下に見えて、人しか通れないような細い高架になっていて、(こんなん、見た事ないぞ・・・ちょっと行ってみよう)・・・。
　高架の細い橋を渡ると、そこも片側は見慣れた住宅街なんですが、右手側がやっぱり、赤土の小高い丘で、その上部は竹やぶなんです。(どういう事？これは??)
　そして気付いたんですが、民家に人の気配が全くありません。電気の付いている家が１つも無い・・・門灯さえも・・・風もほとんど無いのか、竹やぶのザワめきも在りません。
　いよいよ、マズイ！！　これは、良くない兆候だよ。きっと。と、思った私は、随分歩いて来たし、線路も越えてきたし、引き返すよりも、左手の住宅街を通り抜ければ、いつも見て知ってる北口の道路に絶対出るはずだ！と。
　しかし・・・出ない・・・それどころか、住宅街を抜けられない・・・どこを見ても似た様な小奇麗な住宅ばっかりで、人の気配が全く無い・・・外灯は弱く青白く等間隔で点いているけど・・・
　これは、恐がるべきだそ!!・・・帰れない・・・方角が全く分からない・・・とにかく走ろう・・・
　闇雲にひたすら走りました・・・だんだん息が上がってきて、学生時代のサッカー部以来、始めて、いつもやっていた長距離走の時の息遣いをしている事に気が付いた・・・２回吸って１回吐く・・・３回目に、３回吸って１回吐く・・・ひたすら走りました・・・だんだん恐さが薄れて来るのを自覚する・・・ただ走る・・・
　かなり走った・・・相変わらず、状況は同じだが、空が明るくなりだして来た・・・
　迷って以来、始めて灯りの点いてる自販機を見つける・・・なんか飲むかぁ・・・
　伊藤園の濃いお茶・カテキン入りを買って、飲む。
　自販機の前に座って、それに背をもたれて、ゆっくり飲む・・・タバコも吸う・・・
　・・・んっ・・・自販機の横の民家の間に大通りのオレンジ色の外灯が見える・・・ゆっくり歩いて、そこに出てみる(おっ！知ってる道だ!!)　　　これを真っ直ぐで国立駅の北口に出る。間違いなく・・・
　後ろを振り向いて、見たくなるが、良くない事が起こりそうで、強い意志で振り向かなかった。
　まだ、人も車も全く通らない・・・が、前方のコンビニに灯りが眩しいほど点いてるのが見える。
　レジに兄ちゃんも居る・・・もう、大丈夫だった。時間が２時間ちょっと経っていた。長かったのか、短かったのかは、全然分からなかったんですが、帰って来れて、かなり嬉しくなってくる。
　アレは、一体なんだったのか、未だに良く分かりません。
　この後、これが警告であった事を知るのですが、
　　まぁ、無事で今も生きているので、
　　　　大事は無かったと言う事ですね。