Nicotto Town


ジュンチャン


鶴の恩返し


ネットで拾った「ほんのちょっぴり笑える童話」

 昔々、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました。ある日のこと、お爺さんが畑仕事を終え家に帰ろうと野中の道を歩いていると、草叢の方から何やらゴソゴソと音がするではありませんか。お爺さんは草をそってかき分けて、音のする方へ近づいてみました。するとそこには一羽の白い美しい鳥が、獣を捕まえる罠に足をはさまれ、もがき苦しんでいるではありませんか。

「おぅおぅ、かわいそうに。これは狸か狐を捕まえる罠じゃな。さぞや痛いじゃろう。わしが放してやろう」

 そう言ってお爺さんは、その鳥を逃がしてやりました。

 家に帰ってお婆さんにこの話をすると、

「お爺さんや、そりゃええことをしなすった。その鳥はきっと鶴じゃで。ひょっとすると恩返しに来るかもしれんで」

 とお婆さんは、幼い頃聞いた話を思い出しワクワクしながらその鳥が恩返しに来るのを待っておりました。

 するとその夜、期待通りひとりの娘がたずねてきたではありませんか。

「旅の途中、足を怪我した者です。どうか一夜の宿をお貸しください」

 もちろん、お爺さんとお婆さんは、その人を厚くもてなしました。そして次の日、その娘が言いました。

「お爺さん、お婆さん。大変お世話になりました。お礼に機を織ってさし上げたいと思います。どうか機を貸していただけませんでしょうか」

 ふたりは喜んで言いました。

「あーぁ、ええとも、ええとも。そんで機を織っている姿をけっして覗いちゃいかんのじゃろ」

「どうぞどうぞ、思う存分、織ってくだされや。けっして覗きゃせんからのぉ」

「お爺さん、お婆さん、お心遣いありがとうございます。それではお借りします」

 と言って娘は機織り部屋に入っていきました。

「お爺さんや、これでわしらの生活も楽になりますのぉ」

「そうじゃとも婆さん。わしも畑仕事なぞせんでも、左団扇でくらせるわい」

 ふたりは、美しい織物が出来上がるのを今か今かと待っておりました。しかし、いっこうに機を織るような音が聞こえてきません。何やらガタゴトと物音がするだけです。

「婆さん、なにやら様子が変じゃぞ。そっと覗いてみようかい」

「いーや、お爺さん。何をなさる。ここが我慢のしどころじゃで。ここで覗いたら元も子もなくなるだに」

「そんなこと言うたってのぉ。なっ、ちょっとだけならええじゃろ」

 そう言ってお爺さんは、お婆さんが止めるのも聞かずそっと部屋を覗きました。するとそこには、一羽の鳥が家財道具を唐草模様の風呂敷につめて飛び立とうしている姿がありました。

 そうです。お爺さんが助けた鳥は鶴ではなく、サギだったのです。




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