ずっと前からカープ女子
- カテゴリ:30代以上
- 2014/08/12 21:02:09
広島カープがエース北別府を擁し、最後に日本一なった頃、オレは大学生で、家庭教師をしていた。
生徒のTさんは当時、高校2年生。ウチのオフクロが、Tさんのお母さんの世話をした縁で、勉強を教えることになったのである。
彼女は高2なのに落ち着いた感じで、いかにも母親似の、しっかり者。
でも、筋金入りの広島カープファンだった。カープの話をする時の彼女は、熱かった。
「山根(当時のピッチャー)ってさあ、誰かに似てない?」
「団しん也(当時売れていたコメディアン)ですよね」
こんな話で大笑いしていたことを思い出す。
時は流れ。
広島カープが最後にリーグ優勝してから数年が経過し、エース佐々岡が長期の不振に陥った年。
夏休みで久しぶりに実家に帰ったオレの手に、オフクロが、近くの喫茶店のコーヒー券を2枚握らせてこう言った。
「ちょっと、今から、行ってきな」
「え?」
「Tさんが待ってるから」
「え・・・あの?う・・・うん」
オレは足の裏をくすぐられたような妙な気分になった。
だって、こともあろうに、オフクロにセッティングされたんだぜ、。
オフクロは、街一番の世話好き母さんで、凄腕のお見合いセッターで有名だった。
オレは思った。
『オフクロは、Tさんのことを相当気に入っているに違いない』、と。
バブリーな仕事で極楽トンボのような暮らしをして三十過ぎても全く結婚する気のない息子(オレ)に対し、Tさんは堅実な地方公務員だという。甲斐性の全くない息子には絶好の相手。嫁になってくれれば・・・、という期待を抱いているのであろう。
Tさんは、十年前と変わらぬ笑顔で、喫茶店の席に座っていた。
「久しぶり。今もカープの熱血ファンなの?」
「もちろんですよ。有給を全部使って、市民(広島)球場に行きます」
「すごい!」
「応援団長さんとも知り合いになって、いちばん激しい応援をする席で観戦するんです」
「おおっ!」
まさに、真の筋金入りである。
それから一時間ほど、オレとTさんは、他愛のない会話をした。Tさんの上司がエロい話を振ってきてイヤでイヤでたまらないとか(今ならセクハラじゃんww)、オレはバブルには乗り遅れた、とか・・・。
そして。
「今日は、ありがとうね」
「いえいえ」
「オレのオフクロに頼まれちゃったら、きみのお母さんは、断れないもんね。娘とオレがお茶するぐらいは、さ」
「そんなそんな」
お互い、後ろ髪引かれる気持ちは、何もない。
もちろん、次の約束をせず、オレたちは、さよならのあいさつを交わした。
オレは思う。
今でもTさんは、結婚していてもしていなくても、有給を全部消化して、新しく作られた広島カープの本拠地で、今年のクライマックスシリーズ1位を祈りつつ、熱唱しているに違いない、と。
♪カープ カープ カープ広島 広島カープ♪
今もお元気で応援しまくっているといいですね^^
でも爽やかないいお話^^v