ミス・ラフランスだったひと
- カテゴリ:自作小説
- 2022/03/23 16:51:30
ジェンダーの視点から今はいろいろと物議を醸すミスコンテストであるが、20年ほど前は、いわゆるご当地ミスコンテスト花盛りであった。
その頃、隣県の名産品ラフランス(洋梨)にちなんだ、ミスラフランスコンテストというのがあり、その人は初代ミスだった、らしい。
その人は、オレの友人の姉で、そいつはシスターコンプレックスだから姉ちゃんに何でも話す野郎なのであった。
ある日、そいつから、例の一件に関して姉ちゃんがオレに直接文句を言いたいらしいという話をされた。
オレの失言とは。
「(地元の)K市立美術館は、美術館と名乗るのもおこがましいよ。チャさいのひとことで終わり。せめてF県立美術館ぐらいじゃないと、ね」
市立美術館マニアのその人が激怒したらしい。
まず電話がかかってきて、本来は気弱なオレは平身低頭に謝った。
それでもらちがあかないので、直接会うことになった。
当日、友人は変な気を利かせて、来なかった。
焦るオレ。しかし。
その人は、マジで魅力的な女性。
「ミスなんて大昔の話よ」
と、のたまうものの、その美貌は今が盛りというところ。
聞くところによると、その人は地元テレビの契約アナウンサーも務めていたらしい。
「大好きなポール・デルヴォー展が県立美術館で開催されてるんですけど・・・」
オレは、誘われたのか?
次の土曜日の午後。
オレとその人は、ベルギーの画家デルヴォーの、実に官能的な絵の数々に見入ったのだった・・・
それから、美術館横の画廊喫茶に入り、コーヒーを飲みながらいろいろな話をした。
だが・・・
オレは思った。
『たとえオレが望みをかなえたとしても、オレのガマンはきっと実を結ばないだろう。なせなら、彼女の望みは大きくなるから包み切れない』
オレたちは次に逢う約束をせずに、そのままサヨナラした・・・
了
*参考楽曲~『ハナミズキ』一青窈作詞。"Bye bye C boy" 佐野元春作詞
調べてみたのですが今は無いのかしら?
包み切れないか否かは先に決めなくとも良いと思いますが
ご縁が無かったのかもしれませんね~^^