Nicotto Town


てらもっちの あれもっち、これもっち


ある歌の物語 第四章 「花街の琵琶法師」

 乱は終わった。
 しかし、京は荒んでいる。
 広小路には埃が舞い、立ち並ぶ屋台は粟やヒエの雑炊を売る店ばかりだった。

 人の行き交う広小路を一人の琵琶法師が花街に向かっている。
 ある屋敷の前にくると、嘆息した。
 今日もここで歌い、金をもらう。
 何度も繰り返す一日。

 彼の「平家物語」は人気だった。
 この乱れた時代に金も家族もない自分のような盲いたモノにとっては
 恵まれた状況だった。

 声にも自信があった。
 師匠から教わった「平家物語」。
 ただ語るだけではなく、自分はその時の平家の世界を再現できる。
 その自信はあった。
 彼の盲いた世界の中に、その世界はあり、そして人々は動き、想いもあった。
 
 しかし、実を言えば、彼は「平家物語」よりも
 宗教性の無い「くずれ」と呼ばれる語りものが好きだった。
 


 座敷に上がった彼に、旦那は「平家物語」を語るように




 京の街をさまよう一人の琵琶法師。
 彼は平家物語と別の、もう一つの歌を師匠から教わっていた。
 花街の旦那衆の座敷にて、一興を求められる。
 琵琶法師は愛の歌を披露する。
 美しい旋律と流れる言葉。
 旦那衆も芸妓も目に涙を溜める。

 芸妓の一人が泣きじゃくる。
 「私の中の何かが、何かが、狂おしくて愛しくて。。。」

 琵琶法師は席を立ち、静かに座敷を立ち去る。


 乱は終わったが、京は荒んでいた。
 広小路には埃が舞い、立ち並ぶのは粟やヒエの雑炊を売る店ばかりだった。

 人の行き交うなかを一人の琵琶法師が花街に向かっていた。
 ある屋敷の前にくると、嘆息した。


 京の街をさまよう一人の琵琶法師。
 彼は平家物語と別の、もう一つの歌を師匠から教わっていた。
 花街の旦那衆の座敷にて、一興を求められる。
 琵琶法師は愛の歌を披露する。
 美しい旋律と流れる言葉。
 旦那衆も芸妓も目に涙を溜める。

 芸妓の一人が泣きじゃくる。
 「私の中の何かが、何かが、狂おしくて愛しくて。。。」

 琵琶法師は席を立ち、静かに座敷を立ち去る。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.