Nicotto Town


てらもっちの あれもっち、これもっち


無の神の物語

 

何もなかった。

存在、そして闇さえもなかった。

時間も空間もなく、そして、無が生まれた。

無はただあった。あったのか無かったのかわからないし、闇なのか闇さえもないのか
それもわからなかったが、無はあった。

神が生まれた。

神はなぜ、そこにいるのかは分からなかった。
どこからか来ていたし、自分が何者かもなんとなくわかっていた。
世界を生まなければならないことはよく分かっていた。

神は自分の周りの無を見渡し、そして世界を起動した。


ビッグバンが起き、世界が生まれた。
時間が動き始め、宇宙が構築されていった。

これは、違う世界の物語である。
ここではなく、違う世界の物語。

宇宙は広がっていき、星が生まれ、そして超新星になり、それは、やがて
輝きながら散っていった。

その繰り返しが2回ほど繰り返され、ある一帯に星の屑が集まってきた。
大きな屑に集まっていき、それは太陽になった。

周りの屑も衝突を繰り返しながら、大きくなっていき、惑星を形作っていった。

太陽は意思を持っていたので、惑星が生まれる様を黙って見ていた。
愛情豊かに見ていた。

太陽は中でも、七番目の惑星を愛した。

やがて七番目の惑星の上に生命が生まれた。
それは七番目の惑星の意思だった。

生命は太陽と惑星からのエネルギーを受けながら育っていった。
そして生態系を作っていった。
太陽と惑星は、生態系に対し、幾つかの試練を与えた。

ある時は小惑星のぶつかりだったり、気候変動だったり、大陸と海のバランスの変化だった。

何度かの絶滅と生き残りを繰り返しながら、生態系は知恵をつけていった。
そして、生態系の中に知的生命体が生まれた。

知的生命体はカマキリのような姿をしていた。
大きさは7m程度あった。

カマキリ生命体は、都市を造り、国を作った。

彼らは最初から惑星と太陽に意思があることも知っていたし、神の存在も知っていた。
惑星と太陽と宇宙の神に感謝しながら生きていた。

カマキリ生命体は技術を発展させ、そして他の惑星に旅するまでになっていた。
それにはエネルギーが必要だった。

そのうち、太陽にミサイルを撃ち込み、太陽からのエネルギーを増加させるようになった。

しかし、それにより太陽に終末の時が近づいた。

太陽の中の核融合反応が進みすぎて、その星系を5年以内に全てを飲み込むことがわかったのだ。

惑星上の全ての生命体が、太陽を呪った。神を呪った。
神と太陽がなくなればいいのにと願った。

惑星も太陽も悲しかったが、仕方なかった。

そして、惑星と太陽は宇宙の神に願った。
「彼らも命です。一片の命です。自分たちと同じ命です。どうか許してやってください。」

そして、太陽は爆発し、その惑星と太陽系を飲み込み超新星になった。

カマキリ生命体の一群が、特別にあしらえた宇宙船でゆっくりと太陽系を離れつつあった。

明るく光る太陽と消えていく自分たちの惑星を見つめ、涙した。
彼らは選抜され種族としての生き残りを賭けられた一団だった。

神は彼らに言った。
「進みなさい。孤独を感じ、学び、そして何かを生みなさい。」

神は考えていた。
「学ぼう。次は神の存在を知らない生命を作らねばならない。
神に気づき、神を自ら学ばなければ、私の孤独を受け継ぎ
あらたな世界を生み出す存在は作れない。」


超新星に弾かれた星の屑が集まり太陽系を造りつつあった。
地球が生まれ、生命が生まれた。
恐竜が滅び、猿が世界を支配した。

猿は世界を食べ尽くした。

神はため息を漏らした。

fin.




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