Nicotto Town


藍姫の本棚♪


桜雨  (下)

「あら、雨……」

陽菜さんの呟きに、全員が空を見上げる。

いつの間にか、青かった空が白く沈んで泣いていた。

シャンと胸を張り、太陽を見上げていた草花は、今は震えながら
俯いている。

庭の池に落ちた小さな雨粒の描く波紋は、次から次へと生まれ
ては消えていった。

天気予報は晴れだったはずなのに、雨は直ぐには止む様子は
ない。
どうやら、東屋で始めた宴は大正解だったようだ。

誰かが、ほぅっと溜め息をついた。
でも、それ以上、誰も話さない。話そうとしない。

雨の音だけが妙に現実的に――と言っても、緩やかな川のせせ
らぎよりも優しく控え目に――聞こえていた。



 

……静かだ。
雨が全ての音を包み込んでしまったみたいだ。

ふっと目を転じると、雨と花弁の降る庭を眺めながら、陽菜さんが
遠い目をしていた。

懐かしい何かを思い出しているような、愛しい誰かを捜している
ような。

例えて言うなら……そう、羽衣を失くした天人が故郷にいる恋人
に想いを馳せるような、かな?

傍で見ているこっちが切なくなる、憂いを帯びた顔だ。

ボクは――何か気の利いた事でも言えればよかったんだけど――
薄紅色の靄がかかったような幻想的な風景に圧倒されて、上手く
言葉が出てこない。

結局、ボクに出来るのは、陽菜さんの姿を目に焼き付ける事くら
いなのだ。

はぁ~、やっぱり陽菜さんは絵になるなぁ~。
でも、本当に天に帰っちゃったらどうしよう……。


「どうしよう。傘、持ってこなかったのに」

「でも、屋根がある所でよかったね。お料理は無事だもん」

「桜、全部散っちゃわないかな」

「大丈夫、大丈夫。花より団子、だよ」

「そっか、それもそうだね」


うわっ、ガッカリ……。

風情の “ふ” の字もない三人娘の会話が、清浄な空気をぶち
壊す。
陽菜さんは遠い世界から戻ってきて、ふふっと楽しそうに笑った。

「心配要らないわ。雨はもうすぐ止むから。それより、私のケーキ
 も召し上がれ」

「はい、いただきますっ!」

待ってましたとばかりに、全員が声を揃えて言った。

結局、花より団子って言うか、ケーキなんだよなぁ~。

でも、悪い事じゃないよね?
だって、陽菜さんは……ちゃんと“天人”から“人間”に戻って、
そこで笑っているんだから。
 
 ~ END ~
 
 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

妄想系の小学生 ケンタ の年上の女性に対する憧れを ^^;

あくまで、彼の本命&初恋は、同じ学年のヨーコちゃんなので ^^

好きって難しいですねぇ~。




明日は、お題ブログに挑戦しようかな ^^

って、もう こんな時間っ?!

最近、時間がないです ^^;

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2010/02/25 22:45
>3スカーラさん
 普通を大げさに……と言っても、あまり大風呂敷は広げられませんでしたが ^^;
 普通の人の日常を書く。練習、練習ですw
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2010/02/25 22:05
本当になんでもない時間が過ぎていきましたね。
さわやかな読後感です。
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2010/02/25 20:29
>スイーツマンさん
 台詞と地の文の割合は、毎回 悩む所です ^^;
 台詞が長いと説明は出来ますが、テンポも悪くなるし…… ^^;;
 難しいですねぇ~。

 私は、今でも頼れる年上の方がいいかなぁ (◡‿◡✿)
 自分が子供っぽい所があるので、やはり憧れ満載ですけど ^^
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2010/02/25 06:06
行をつめた今回のお話し。なにかを狙うかのような兆しを感じます。

そうですねえ。年上の方にはあこがれる時期ってありますよね。大人風味というのが、優雅におもえるのですよね。
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2010/02/24 22:56
>ゴキブンさん
 こちらは、桜には まだ早いのですが……^^
 冬が長いので、春を待ち望んでしまいます。
 男性も女性も、一度は憧れるのかなぁと思う年上の人 (◡‿◡✿)
 もっと内面を書けるように精進です ^^

 毎日と言うか……時々 手抜きしていると言う噂も ^^;
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2010/02/24 22:35
サクラの時期の雨、静か雨の雰囲気ですね
季節も変わろうとしているのか、暖かでした
年上の女性、憧れました
お疲れ様です
良く毎日、文章書けますね。感心します




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