Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ハナ~ (11)

暗い墓所を小走りで駆け抜け、仄かに明かりの灯る本堂へ
辿り着くと、幾分、ましな気分になっていた。

夏香が何を考えているのか分からなければ、問いただせば
いい。俺だって、あいつの“お兄ちゃん”なのだから。

さてと、春彦と坊主はどこにいるんだ?
と言うか、案内もなしに勝手に寺殿に入り込んでもいいもの
なのだろうか。

でも、こんな場所で呆っと待っているのも、折角、上向きになっ
た気持ちが落ち込みそうだ。

とりあえず、適当な所から不法侵入でもしようかと考えている
と、春彦が坊さんと話しながら出てきた。

「ご住職、ありがとうございました」

「いいえ、夏香さんに会えたら、お伝えください。また、いつ
 でもお待ちしております、と」

「……はい」

何だか墓場以上に空気が重いな。何かあったのだろうか。

「兄……」

「冬馬、帰るぞ」

「は?」

俺の返事を待たず、春彦が歩き出す。
両手を合わせ深く一礼する坊さんに、俺は勢いよく頭を下げ
てから、早足で歩く夏彦を追った。

「待てよ、兄貴。夏香の手紙は?」

瞳に影を落とした春彦が、黙って俺に白い封筒を差し出す。
が、まだ開封はされていない。
どうして、開けないのかと思い、封を切ろうとしたが……。

「あれ? 何だ、これ」

「おそらく、明日以降にならなければ開けないように細工し
 ているんだろう」

「夏香が?」

「そうだ」

「ハサミでも切れ……」

「そうだ」

幾分、苛ついた口調で、春彦が俺の言葉を遮る。

怒っているのだ。
おそらく、抜け目ない夏香にではなく、無力な自分に。

本当、長男と言う人種は、いらぬ気苦労が多いよな。

「なあ、兄貴」

「ん?」

「俺、今から月子の所に行って来る。あいつなら開ける方法
 も知っていると思うし」

「冬馬……お前、大丈夫か?」

「大丈夫じゃないけど行って来る。兄貴は、夏香が戻った時
 に備えて店に戻ってて」

「いや、しかし……」

俺と月子は、犬猿の……否、大蛇と子蛙のごとき関係だ。
かつて、神社に行く度に泣かされていた弟を心配してくれて
いるのだろう。

「これでも兄貴が出かけていた間、神社に通って、月子とも
 普通に話していたんだけど?」

「それは……八重ちゃんが大変だったからだろう?」

「兄貴、俺さ、八重の事が好きみたい。友達としてじゃなく、
 女として? みたいな」

「ああ、ずっと前から知ってたよ」

「うん、前から知ってた……って、知ってたの?!」

嘘。俺だって、気づいたのは最近なのに……。

「冬馬?」

「あ、いや、だからこそさ、あの神社から逃げちゃ駄目だと思
 う訳よ」

「冬馬……」

ほんの少しの間、驚いたように俺を見つめていた春彦は「そ
うだな」と微笑して、俺の頭を乱暴に撫で回した。

「行ってこい。でも、気をつけてな」

何か分かったら、必ず店に連絡すると約束して、俺は、退魔
除霊師の総本山、月黄泉神社へと向かった。
少し汗ばむ右手には、夏香の手紙を握り締めて……。
 
 
 
 
どことなく、境内の空気がおかしい……気がした。
境内だけではない。神社の建つ山が、ざわついている。

そう感じるのは、夏香の事があるから?

否、違う。深い闇の中で、この世ならざるモノが無数に蠢き、
杜自体が震えている。

強烈な嘔吐感と恐怖がこみ上げる。
やはり早まった事をしただろうか。

後悔が形になる前に、俺は、月子がいるであろう部屋へと急
いだ。

途中、俺に気づいた神社の巫女さん達に制止されるが、強
引に突き進む。

昼間にも通された その部屋の襖に手をかけると、蛇女に飲
まれないよう「月子ぉっ!」と声をかけながら、中に踏み込む。
そして……。

俺は、踏み込んだ姿のまま固まった。
 
 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・
 
これは、本当は、日曜日にUPする予定でした。

でも、その日、TVを観てたら、ダンダン体も心も辛くなってきて……。

「ああ、そうか。今日は11日なんだ」と気づきました。

いえ、本当は分かっていたけど、考えるのをストップしてたんですね。

もう一年。まだ一年。

まだまだ何も終わっていないんだなと改めて思いました。



今日、調子がよくなったので、UPしようと用意していたら、北海道と

東北地方で揺れがあり、私の住む町は震度3でした。

普段、あまり揺れる事がない所に住んでいるので、怖かったです。

貧血を起こして、気持ち悪くなってしまうほどに……。

本州に住んでいる方は、ずっと こんな思いをしているのに、自分が

情けないです。

幸い、3月は休む事を許されたので、体をしっかり治そうと思います。

今はROM専(←憶えた言葉を使いたいだけ;;)ですが……^^;

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2012/07/12 14:46
>スイーツマンさん
 流されやすい所があるので、ちょっと心配な冬馬。
 ですが、やる時は やってくれると思います^^
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2012/06/02 22:05
冬馬の秘めたる思いがかなうといいですね
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2012/03/18 19:42
>Believer さん
 TVの地震の警報(?)みたいなのも、タラリラン♪ と言う音を
 聞くたびにアワアワしてしまう私です ^^;
 普段 揺れない町なので、ちょっと強めな揺れがくると、どこが
 震源か、不安で不安で落ち着かなくなります。

 好きって気持ちは、無意識に発しているんでしょうねぇ^^;
 春彦は兄貴なので、よく見ているのでしょう。
 でも、夏香の事はよく分からないみたい ^^;

 冬馬が向かったのは、昼間に通された部屋です。
 神社に寝泊りしている関係者の部屋がある場所ですねぇ^^
 なかなかシリアス展開に入っていけない冬馬視点です orz
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2012/03/18 19:32
>ゴキブンさん
 友人の実家は木造の家で、前の道路をトラックが走るだけで揺れます ^^;
 築30年くらいだったかと。怖くて遊びに行けません。
 今年の雪で潰れてない事を祈ります。。。

 揺れ始めると、ウロウロと落ち着きなくその辺を動き回ります。
 机の下? 逃げ込む余裕もないです。
 私は、絶対に本州に住めないなぁと思います ^^;

 お話も書きたいのに なかなか進みません。最近、活字に触れる事も出来ず……。
 ブログも本も読む余裕がありません。心の砂漠化が進んでいます ^^;
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2012/03/18 19:25
>カトリーヌさん
 月子の部屋は、聖域と呼ばれる山の最深部。
 そして、冬馬が昼間通された部屋は、聖域ではありません ^^;
 でも、そこしか知りませんから……。
 緊迫しているはずなのに、ちょっと本筋から脱線してしまう予感です。

 あまり揺れる事がないので、ちょっと揺れると恐慌状態です。
 TVで震度を見て「あ、あれで震度2?!」とか ^^;
 かなりヘタレですから。早く落ち着いてくれるといいですよね。

 オ、オケって、一般的な猫又族なんでしょうか ^^;
 『猫楠』ですね。探してみようと思います ^^
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2012/03/16 22:23
ああ、そうそう。
先日、書店で立ち読みしたけど、

あの妖怪漫画の巨匠、水木しげるさんのマンガで、
「猫楠」というのがありました。

そこに出て来る猫(実は猫又)が、仕草や背中の模様といい、
藍姫様の小説に出て来る「オケ」にそっくりでした~。
一度、御覧くださいませ~~~。

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2012/03/15 21:05
地震の影響は、岐阜は目立っていません。
でも、テレビで地震速報が流れると、「こちらも揺れるのではないか」と不安になりますね

好きな人が出来たかどうかは、自覚する前に周りが察知しやすいですよね(^v^;)
なぜか同じ人の話ばっかり話してしまうので(^∀^;)

月子は、一体何を行っていたのでしょう。
大蛇が「暴れている」のでしょうか…
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2012/03/15 00:44
揺れているのは気のせい
否、揺らしているの誰のせいです
きしむベットの音、ぼろベットです

地震の揺れは怖いですね
大きく揺れるかどうか分からないので
小さくてもドッキとしてしまいます

作文を完結させようという藍姫さんに脱帽でぇ~す

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2012/03/14 23:32
月子は部屋で何を・・?
夏香と、どういう関わりが明らかになって来るのか。
確か、お山は今、あの強敵の蛇さん勢力と対抗中ですよね・・。
緊迫の展開です。

こちらでも、2度揺れました。
震度4とか? 最近は年明けから地震があるので、イヤになっちゃう。
非常時の対策用に、物資の買い置きや避難法は確認してます(汗)。





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