Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ハナ~ (10)

「えっ! マジっすか?! それって、どんな……あっ!」

思わず上げた声が、自分でも恐ろしくなるくらい夜の墓地
に響き渡り、俺は、両手で口を塞いだ。

……兄さんと坊さんの視線が痛いです。

が、俺に構っている場合ではないと判断したのか、春彦は
俺の存在をスルーする形で住職に向き直った。

「住職、それを見せていただけますか?」

「夏香さんには、明日、自分が取りに来なければ、そのまま
 ポストに投函して欲しいと言われていたのですが……」

「手紙、ですか?」

「ええ、こちらへどうぞ」

春彦と坊主は寺の本堂へ歩き出したが、俺は夏香の建て
た墓の前から動けなかった。

生前墓を建て、隠すみたいに墓石の後ろに自分の名前を
入れたりして……。

夏香、死ぬつもりなのか? だけど、どうして?

確かに、夏香は、俺達兄弟の中では、千秋に一番 懐いて
いた。

がさつな俺や年の離れた春彦が、血の繋がらない妹と ど
う接していいのか分からず、あまり構ってやらなかった所為
もあるだろう。

でも、それ以上に、力を持つもの同士、感じるものがあった
のかもしれない。

妖かしに悩まされて挙動不審だっただけの俺とは比べ物に
ならないくらい、二人は一般人として生活するには力が強
すぎたのだ。

古来より、妖かしは、力のある者に引き寄せられるモノらし
い。

清浄な妖かしは、清浄な者へ。
不浄な化け物は、不浄な者へ。

特に、人間のように惑いやすく善悪の曖昧な者には、あま
り宜しくないモノが寄ってくる場合も多いと言う。

千秋は、時折、悪い妖気に当てられて体調を崩していた
為、学校に通えない日もあったが、俺なんかとは頭の出来
が違った。

何も感じない長兄が、拾ってくる厄介な呪物を一人で祓い
落としたりするくらいの事も、難なくこなしていたと記憶して
いる。

そして、子供だった月子が一目惚れしたのだから、容姿も
良かったのだろう。

男の俺には、女性受けする男の容姿は よく分からないけ
ど、バレンタインには、山のようにチョコレートを貰っていた
し。

うん、そう考えると、夏香にとって、千秋は自慢の兄だった
のだろうな。

でも、だからと言って、わざわざ墓まで作ったりするか?

一緒の墓に入りたいなんて、まるでプロポーズの言葉……
いや、まさか、そんな事はない、よな?

だって、兄妹だぞ? まあ、血は繋がってないけどさ。
千秋は月子の夫だし、あまつさえ、もう死んでいるし……。

駄目だ。
すっかり思考の袋小路に入り込んでしまった。

俺が溜息をついたのと同時に、ザザーっと木々を揺らしな
がら、生温い風が吹き抜ける。

絡みつくような夏の熱気を孕んでいるのに、なぜか肌が粟
立つ。

妖しいモノの気配はないし、確かに自分しかいないのに、
誰かに見られているような気がするのだ。

急に、何もかもが恐ろしくなった。
何を考えているか分からない夏香も、変なモノを拾ってくる
春彦も、亡くなった千秋も……。

もう関わりたくない。
みんな消えてしまえばいい。でも……。

両手で挟むように自分の頬を叩いて、闇に引き込まれそう
な意識を現実へ引き戻す。

兄妹から逃げていては、八重とも向き合えない。
それに迷いは、良くないモノを呼び込んでしまうのだ。

俺は、もう一度、頬を叩いて気合を入れた。

「うっしゃっ! もう大丈夫っ!」

いつの間にか、夜の墓地特有の雰囲気に飲まれていたの
かな。俺が怖気づいた所為で、下級の妖かしに悪戯され
たって線もあるけど……。

やはり、夜間の墓参りになんて好んで行くものではない。

俺は、ヒリヒリと痛む頬を 少しだけ手の平より冷たかった手
の甲で冷やしながら、春彦の後を追った。

とりあえずは、夏香の手紙。全てはそれからだ。
 
 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・
 
何ヶ月ぶりの小説UPだろう ^^;

自分が何を書いたかも忘れてますよ。

でも、今回は、去年から書きあがっていた分だったりしてw

UPする時の書式も忘れてますが、ドンマイ!

さて、時間が遅いですが、ブログ回りしてきます ^^

寝すぎもヨロシクナイですから ^^;

明日に差し付かえないとなると……リミットは1時でしょうか。

力尽きたら、もう少し早めに眠りますけど。。。

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2012/03/10 14:10
>ゴキブンさん
 本当に久しぶりですね ^^;
 でも、ここまでは、去年 出来ていた分だったりして。。。
 久々に書き始めるにあたり、忘れていたので読み直しました。
 時間が経ち過ぎて、ラストをどうしようか迷い始めると言う事態が
 起こっています ^^;

 私は変わりませんよぉ^^;
 むしろ、退行しているような感がありますけど。
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2012/03/10 14:03
>Believer さん
 妖かしは、ある意味、狂気に取り付かれた人間と同じなんだろうと思います ^^;
 その辺に落ちている石と同じで、何も考えず、そこにいるだけのモノもいる
 とは思いますけどw

 夏香視点、話が真っ直ぐにならない気がします。
 でも、その場にいる事が出来て、他に話を語れそうな人がいない……^^;
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2012/03/10 14:00
>カトリーヌさん
 しばらく、まともに書いていなかったので、話を忘れていたりして ^^;
 以前の話を読み直しつつ、書いています。

 現在、夏香は ちょっと病んでいます。
 エコと一緒にいた時は、まだ正気だったのですが、これからする事で
 決定的に壊れてしまいそうです。
 視点を冬馬のままにしておくと、支障がでそうなので変えるつもりで
 いたのですが、夏香視点が使えないかも……。
 あ~、確かに男性陣の能力値はバラバラですねぇ^^;
 冬馬も弱い方ではないですが微妙ですしw

 作中の時間だと、お山では携帯電話を探し始めた頃かな。
 オケは、離れでお留守番してるはずです。多分。
 重たい話が続くと、軽ぅ~い話を入れたくなります。
 妖かしはズレているのが多いので、話が脱線しまくりですが、彼らの
 存在が恋しいです ^^;
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2012/03/09 20:50
ほんと、何ヶ月ぶりでしょう
久々の藍姫さんの文章を読みました
なんかとっても懐かしいです

藍姫さんはここ数ヶ月で変わられたのかな
ゴキブンはあいかわらずです
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2012/03/09 18:48
なるほど…自分の色に染めようとする、ですか

うっ、これからはなしが怖くなりそうです ((((@ω@;))))
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2012/03/08 01:21
久々の続編・・拝読しています。

夏香の謎の行動~墓を隠すように建立・・・?
気になります。
しかしながら、お山に関わる男性陣は、女性陣と違い、
その霊能力にバラツキが多いんですね。

続きを期待してます~~☆。

ワタクシとしては、猫又オケの活躍を久々に見たいわ・・(笑)
ストーリーそれちゃうけど・・・。

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2012/03/05 23:18
>Believer さん
 あの瞬間、間違いなく何か憑いていましたねぇ^^;
 冬馬の場合、本人が思っているほど、力は弱くないのだと
 思います。あの程度なら、気合で遠ざけられるのかも ^^
 妖かしは、強い力には惹かれるでしょうね ^^
 おそらく、どちらの色にも染まっていない力を自分の好む
 色に染めようと誘惑するのではないかと妄想してますw

 行き当たりばったりで視点を決めているのですが、今回は
 冬馬よりも、夏香で〆た方がいいのではないかと思い始めて
 います。
 目的の為に手段を選ばない 夏香の狂気? みたいな話になり
 そうな予感もしますが……。
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2012/03/05 23:09
>スイーツマンさん
 夏香視点の話で〆ないと、収まりがつかないような……^^;
 冬馬の年齢設定が35歳と高いのと、男性であると言う点が
 ネックになっています。
 これだと、考えている事がロクとあまり変わらない気がしますし。。。
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2012/03/05 18:58
冬馬さん、危なかったねー。
悪いモノは、悪い気からっていうか、まぁそうゆうものですよね
なんとなく思うのですが、善でも悪でもない“強い力”だと、あやかしはどうなるのでしょーね?
やはり惹き付かれるのでしょうか?

夏香さんのほうは、よくわからなくなっていきますね…
アバター
2012/03/05 06:17
血の繋がらない兄妹との怪しげな仲
気になるところですね




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