Nicotto Town


藍姫の本棚♪


きみに見えるもの。 ~前編

「さっさと消えなさい。ここは貴方がいて
 もいい場所じゃない」

あたしは、ユラユラと漂う煙のようなモノ
を睨みつけた。

決まった形を持たず、いつも自分の体と
なるモノを物色している“アレ”を、あたし
は“魄”と呼んでいる。

そう、魂魄《コンパク》の“ハク”だ。

実際、あれが何なのかは分からないけど、
多分、決まった名前なんてないのだろうか
ら、便宜上、仕方がない。

もっとも、我が家で、魄が見えるのは、あ
たしだけ。

魄について、家族と語り合う機会はないの
だから、呼び名なんて意味はないのかもし
れないけど……。

兎に角、魄を家に入れないのが、あたしの
役目。

やるしかないでしょう?

魄がみんなに悪さしないように監視出来る
のは、“アレ”が見える“あたし”だけなのだ
から。


ところが、ある日の事。
突然、小さな仲間が増えた。

“穴あき靴下”がどこからか連れてきた
“ダンゴムシ”だ。

自分では何も出来ないダンゴムシは、何
でもかんでも“石鹸の香り”にしてもらう。

日がな一日、家でゴロゴロしているだけな
のだが、どうやら彼にも魄が見えているよ
うなのだ。

でも、ダンゴムシは、まだ魄の恐ろしさを
知らないのだろう。

玩具でも見つけたように嬉しそうに笑いな
がら、手を振り回して魄に触れようとする。

全く世話が焼ける。

「駄目よ。あれは魄と言って悪いやつなの」

「悪い?」

「そうよ。魄は、人の物を取ったり、壊し
 たりするの。だから、触っちゃ駄目」

「うん、わかったよ。ネーネ」

あたしは目で魄を追いかけながら、ダンゴ
ムシに答える。そして……。

「消えなさい。ここはここは貴方がいても
 いい場所じゃない」

すぐに魄を追い払った。

「うわぁ、すごいね。ネーネは」

「ダンゴムシだって、魄が見えるのだから、
 これくらい出来るようになるわよ」

「本当? ぼくでも出来るの?」

「多分ね」

「でも、ネーネ。ぼくは、ダンゴムシじゃな
 いよ。ダイゴって言うんだ」

「? ダイゴもダンゴムシもそんなに違わな
 いじゃない??」

「全然、違うよ」

「あたし、人の名前を覚えるのは苦手なの」

ダンゴムシは、少しだけガッカリしたようだ。

可哀想なので、今度からはちゃんと“ダイゴ”
と呼んであげる事にしよう。

覚えていたら、だけど。

「そんな事より、魄を追い払う方法を教えて
 あげるから、それくらい覚えなさいよね」

「うん、ぼく、頑張る」

ダイゴは、あたしに弟子入りした。

頼りない仲間だけど、あたし一人よりは、い
いに決まっている。多分、ね。

  ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

お世話になっているHP(彷徨う語り鬼たちの杜)に掲載予定の話です。

そちらに載る時は、字数制限がないので、一挙載せ&イラストが入ります。

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2012/03/14 21:13
>スイーツマンさん
 友達の子供誕生記念のお話でした ^^
 『退魔除霊師』が念頭にあったりなかったり ^^
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2012/03/13 21:38
ダンゴムシ君はほんとに
ダンゴムシだったりとか
次回にまた拝見…
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2009/01/30 15:57
穴あき靴下は、ネーネから見た“ある人のある時の印象”です。
いつもそうな訳ではないですよ。

私は霊感ないです。
かなり鈍くて、まさに“零(0)感”? みたいな感じです。
でも、(不思議は嫌いではないけど)かなりのビビリなので、音が聞こえるなんてドキドキです。

ポルターガイストなんて、怖すぎです。 (((><|||))))
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2009/01/28 18:51
穴あき靴下が気になる・・・w
僕は霊感ないのでそんな感じのはわからないですが
たまに僕しか聞こえない音がしたりします><

ポルターガイスとですかね? ((((´・ω・`)))))




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