Nicotto Town


藍姫の本棚♪


夢日記Ⅹ 『補陀落』

こんな夢を見た……。
 
 
ふっと我に返ると、辺りは血の海だった。

その中には死んでいる者もいるだろう。
生きていたとしても、かなりの重傷だ。

不老長寿の天人達の中で、かつて こんな悲劇に見舞われた者
がいただろうか?

四方をガラスで囲い、下界や下天から隔離された常春の楽園は
今、まさに血の池地獄だった。
平和で安全で退屈な世界は脆くも崩れ落ちたのだ。

ああ、赤い。
俺は自分の手を見ていた。
天人たちの血も下界人同様、赤いのだ。

俺は笑みを浮かべた。

チ・ガ・ウ。

こんな事、俺は望んでいない。望んではいないのに……。
心とは裏腹に、俺は小さな泣き声のする方へ歩き出していた。

見ると、片隅で子供が二人震えていた。
すぐ側でその子達の母親と思われる女性が倒れている。
そこには血溜りができていた。

俺は口元に笑みを浮かべたまま、子供達に近づいた。

イヤ……ダ。
タノム。ニゲロ。
ニ・ゲ・テ・ク・レ!

二人はお互いをかばうように身を寄せ合い、俺を見上げた。
俺は凍りつくような微笑を子供達に投げかけ、血にまみれた手を
振り上げた。

ヤメロ!
モウ、ヤメテクレ!!

後ろから、何かが俺を制止した。
俺は仰向けに倒れた。白くて長い髪と髭の老神だった。

ヨカッタ。モウ、オレハオワリダ。

老神が俺の額に黒い墨で一つ目の人の顔のような、或いは、た
だの大きな目のような紋様を書き入れた。

「フダラクサン へ」

「……?」

何か言い返そうとしたが、老神はただ「お前はもうここにはいられ
ない。早くフダラクサンへ行け」と言い、立ち去った。

俺がゆっくりと起き上がり、辺りを見回すと、死なずにすんだ天人
達が俺の様子を遠巻きにしていた。

ココニイルコトハ デキナイ、か。

天界に未練はない。
俺は飛び上がると、換気用の窓から外をのぞいた。

地上の灯かりが揺れている。
そのずっと向こうにフダラクサンがそびえ立っていた。

俺はとりあえず町を目指して旅立った。
フダラクサンへは下界を経由しなくてはならない。

無論、飛んでいく事もできるが、町へ下りたら人間のように歩い
て、目的地に向かう事にしよう。何となくそう思った。

途中までは飛行していたが、俺は人里離れた建物で着地した。

廃校になった学校のようだ。
俺は、そこに青白い顔をした少年がいるのを見つけた。
どうやら、この土地に縛られている自縛霊らしい。

俺は、少年を土地から切り離すと、自分の気を分け与えてやった。
すると、元気になった少年が俺についてくると言う。

「好きにすればいい」と言ってやると、少年は、俺の影に取りつい
て、地上の事を教えてくれた。

だが、俺は、その時になって気づいた。
追っ手がかけられているようだ、と。

あれだけ、同胞を殺したのだから仕方がない。
だが、こんな所で捕まる訳にはいかない。
ずっと、頭に残っている“フダラクサン”へ向かうのだから……。

連中は、俺の敵ではない。
平和な天界では、神将達も腕が鈍るのだろう。
人間相手なら それでも良いだろうが、天人同士ではそうはいか
ない。

だが、数が多かった。しかも、こちらは子連れだ。

否、かまうものか。
こいつらを俺の罪に加えてやろう。

と、考えた時、天界で俺に仕えていた八部衆が現れ、追っ手を
蹴散らした。

俺が罪人として天界を出た事よりも、この旅に自分達を連れて行
かなかった事に腹を立てているようだ。

「俺は天界を追放された罪人だ。俺と一緒にくれば、二度と戻れ
 ないんだぞ」

「あなたのいない天界なんてつまらない。われら八部衆、何処ま
 でもお供いたします」

俺は少年に言った時のように「好きにしろ」と言うと、少年は俺の
影から顔を出して、不思議そうな顔をした。

どうやら、俺は笑っていたようだ。

俺は、少年と八部衆と共に、フダラクサンを目指して歩き出した。
 
 ~ END ~
 
 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・
 
1999/6/28 に見た夢です。

天界とか、八部衆とか、夢では音だけなのですが……^^;

この頃、似たような舞台装置が出てくる夢を他にも見ています。

そちらは、次回に ^^

個人的に終末な感じだったのでしょうねぇ~と過去を回想して

しまいます ^^;





今日は伝言板とブログのコメント文だけ、ステプとお水やりにw

実は、お花が気になって、昼休みにも来てしまったのです ^^;

はぁ~、月曜日は、一番 長い気がする。。。

アバター
2010/04/29 21:49
>スイーツマンさん
 ああ、ありましたねぇ ^^
 今なら2010年の……あれ、何だっけ?
 マヤの予言でしたっけ ^^;

 そうですね。
 人生はプレッシャーの連続ですね。
アバター
2010/04/29 21:25
1999年といえば、
ノストラダムスの予言とよばれているものが
どうっあら外れるみたいだ──という時期のことですね。

戦場の夢はストレスといいます
戦って勝つのはいいことらしいともききます
受験期、新社会人開始時期はいろいろきついこともありましたよね
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2010/04/27 20:59
>3スカーラさん
 さあ、行くぞ! と言う所で目が覚めました。
 夢から現実に引き戻される時、巨大な掃除機でゴォーっと
 吸い上げられるような感覚の時と、景色がモヤモヤとして
 意識が薄れる時があります。この時は前者でした。
 夢の中では、完全にその人になっているので、途中で現実
 に戻る事は出来ません ^^;
 なので、目覚めてから、家族や友人には話しまくりました ^^
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2010/04/27 20:55
>ゴキブンさん
 この手の夢は目が覚めた後、かなりグッタリ ^^;
 怖いので、直ぐに人に話してしまいます。
 ただ、私の夢には、よく血が出てきますけど ^^;;
 この夢の場合、最初は いきなり我に変えった所から始まったので、
 自分がやったと言う自覚はありませんでした。
 周りが“俺”を怖がっていたので「ああ、自分がやったんだ」と。

 次回の話にも“天界”と言う言葉が出てきます。
 出てくるのは、全然 別なんですけどねぇ~^^
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2010/04/26 22:08
フダラクサン目指して歩き出したところで目が覚めたのですか?
それとも、その先は覚えていないのでしょうか。
いずれにしろ、怖い夢です。僕なら途中でこわくて目が覚めて
しまいそうです。
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2010/04/26 22:05
なんかいつもと違う藍姫さんの文章です
女性の藍姫さんが書いたとは思えませんね
それに残酷なシーンですね
皆殺しにして微笑みを浮かべるなんて
どうされたの?
と、聞きたいですが夢ですから夢ですね
脳がかってに舞台装置を創って藍姫さんに演じさせている

次回の夢どうなるのでしょう
怖い話ですね~




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