Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ナナフシギ~ (15)

寮の裏に広がる森は、昼間でも薄暗い。
よくも、まあ、ここまで成長したものだと言うくらい、葉が生い茂っ
ており、心なしか地面も湿っぽい。

木陰が多い所為か、それとも、得体の知れないモノがいる所為
か。少し涼しくなったのは気の所為ではないだろう。

僕は、周りを警戒しながら、六郎太の半歩後ろを歩いていた。
この森で、僕が頼れるのは、この人だけなのだ。

匂いを辿る警察犬のように、六郎太の歩みには迷いがなく、真っ
直ぐ目的地に向かっていると思われた。

「静かですね。でも、何だか見られている感じがします」

「そりゃあ、そうだよ」

落ち込みから浮上した六郎太が、講義モードに入る。

ちなみに、どうやって機嫌を直したかと言うと、只一言「ロクくん」と
呼んだだけ。つくづく単純な人だ。

「森には森の住人がいるからね。それに七不思議の二番目が
 本当なら、妖かしがいるって事になる」

確かに何かの気配はする。
が、普段、何も感じない僕が感じているのだから、これは妖かし
ではないのだろう。

「ムキタンは、何て?」

「微妙に、睦貴とムッタンが混ざってますけど残念です。ええと……
 二について。森の入り口に立ってみる。ひどく不快な気分にな
 る。これもガチャピンの呪いか? 実体を確認する事無く、ここ
 で調査を断念する。だが、何かいる事は確かだ。後日、装備を
 整えて、魔の森へはリベンジを誓う」

不快、か。
僕がそう思わなかったのは、六郎太のお守りのお蔭かな。

と言うか、なぜ、子供番組のキグルミが、こんな所でお前に呪い
をかけるんだよ!

「それって、多分なんだけどさ、木霊《コダマ》じゃないかな」

「木霊、ですか?」

「年経た樹木に宿る意思、かな。実体化した時の見た目は人型
 で、霊に近いんだ」

「ああ、そいつが緑のキグルミみたいな姿なんですね」

「まさか!」

六郎太は目を丸くした。
が、なぜか嬉しそうに、木々の間から僅かに見える空を見上げた。

「梅の木霊を知っているけど、可愛いよぉ。妹がいればこんな感
 じかなって。オレよりも遥かに年上なんだけどね」

「へえ、妹キャラの妖かしですか」

「オレ、最近まで木霊とは縁がなかったんだけど、大抵は、その
 子みたいに女の姿をしているんだって」

へえ、それは会うのが楽しみかも。

「柳、梅、松なんかは、割と早く木霊になるらしいんだ。それと、
 桜」

「桜、ですか」

「今、考えると、ヨイッちゃんがトイレから見つけた和服美女は、
 案外、木霊だったのかもなって。桜の木霊に魅了された教頭
 先生が、木を看ている時に森で亡くなって、木霊と一緒に暮ら
 しているのかもしれない。それなら、残りの六番と七番も つな
 がりそうだし」

「そうですね。ん? 魅了するって、あの絵みたいにですか?」

「木霊は、気にいった人間を側に置きたがるんだよね。自分は、
 あまり本体から離れられないから」

「と、とり殺すって事ですか? じゃあ、教頭は……」

「いいや、この森の木霊は……ん?」

六郎太は、急に黙り込んで、足を止めた。
落ち着きなく、辺りを見回している。

何か感じるのだろうか。
邪魔をしてはいけないと、僕も口をつぐんだ。

「……ヨイッちゃん」

「はい!」

「そこから一歩、前に出てみ」

苦笑いと言うより、トホホな顔で、六郎太が僕の足元を指差した。

何かあるようには見えないが、怖々、足を踏み出してみる。
と、頭の中に妙なイメージが浮かんだ。

次の瞬間には消えたが、これ以上、森の奥には行きたくないと
思うほど、ガッカリな映像だった。

「ねえ、どんな感じ?」

「帰りましょう」

僕が即答すると、六郎太は、僕の掌に、なぜか“犬”と言う字を
書いた。

「何ですか、一体」

「魔除けのおまじない。オレはこのまま進むから、ヨイッちゃんは
 戻って、瑞希に……」

「行きますよ、一緒に」

「でも……」

「さっき、前に出た途端、変なイメージが……和服姿の女が頭に
 浮かんだんです。でも、よくよく見たら、化粧した睦貴だったん
 です」

「そうなんだ。オレは、着物を着た瑞希が、ぱっと前を開けると……
 いや、やっぱ、思い出したくない」

「何で こんなものが……」

「イメージが鮮明に見えたって事は、心理結界の強いヤツだ。目
 的地が近いんだよ」

そう言うと、六郎太は 少し泣きそうな顔で、少し先の明るくなって
いる場所を睨んだ。

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

どこで終わらせようかなぁ~と言うのが、目下の悩み ^^;

次と繋がる形にするつもりなのですが……。





やっと金曜の夜だぁ~ \(●^o^●)/

今夜は本を読みたいので、伝言と足跡だけ ^^

お友達の所は、明日 回りますねw

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2010/05/30 18:05
>スイーツマンさん
 神隠しにあって、戻ってくる人は、何ヶ月、何年、何十年と言う長い月日を
 どこで過ごしていたのでしょうね。
 教頭先生が大切にしていた木の木霊が、彼を気にいっていた事は確かです。
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2010/05/30 08:49
神隠しになった生徒達、森で変死した教頭、美少女の絵が好きになると死ぬという噂。実は木霊に魅入られて魂を抜かれた?
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2010/05/28 22:18
>3スカーラさん
 何にするか迷う所ですねぇ ^^
 ちなみに与市が見たのは、和服の美熟女だったようですけど……^^;
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2010/05/28 21:45
登場する妖かしは、ガチャピンか妹キャラかはたして、犬?か。
続きが楽しみです。




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