Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ナナフシギ~ (16)

密集する木々の間を抜けると、そこには、光が満ちていた。

思わず天を仰ぎ、陽光に目を細める。
まだ日が沈むような時間ではないのだから、日差しが きついの
は当たり前だ。

本来なら忌むべき暑さなのに、僕はホッとして、息を長く吐き出し
た。

「ヨイッちゃん、安心するのは早いよ」

「え?」

六郎太の硬い声に前を見ると、薄紅色の塊が目に飛び込んで
きた。

「さ、桜? こんな時季に満開?!」

「あれは霊花《レイカ》だ。普通の人には見えないんだよ」

「え、花の幽霊ですか?」

「いいや、木霊の力の指標かな。幻の花弁なんだ。あれが見事
 な程、霊力が強いんだ」

「つまり、すごい強敵って事ですか?!」

僕を庇うように前に出た六郎太は「敵とは限らないよ」と、尚も緊
張した声で答えた。

季節外れの桜の花は、風で枝が揺れる度に一緒になって揺れ
ている。

あれが本当に見えないのか?

僕は眼鏡を出して、試しに 防霊加工されたレンズを覗いてみた。

「あ……」

途端に満開の桜は消え、黒っぽい幹と枝だけの老木があるだけ
だった。

あれが木霊――古木の妖かし――か。
心臓が、緊張と昂奮で速さを増した。

ふと見ると、木の根元に小さな社らしき物が立っている。
誰も参る者がいないのか、すっかり朽ち果てていた。
眼鏡を外して見たが、社に変わりはない。あれは本物みたいだ。

「六郎太くん、あれ……」

「うん、ちょっと見てくるから、ここにいて」

「気をつけて!」

六郎太がゆっくりと桜に近づく。と、森全体がざわつきだした。
そして……。

『ここに近づいてはいけません』

と言った その声には、何重にもエコーが掛かっていた。
勿論、声の主は、僕でも六郎太でもない。

六郎太が足を止める。

「六郎太くん、今、声が!」

「ヨイッちゃんにも聞こえたのか。これはマジで強力かも」

『近づいてはいけません』

「聞いてくれ。オレは君の敵じゃない」

六郎太が両手を広げて、行進を再開する。
と、桜の木が、狂ったように枝を揺らしだした。

「六郎太くん!」

「来るな、ヨイッちゃん!」

出掛かった僕の足が、地面に縛り付けられたように動かなくなる。
その間も六郎太は、じりじりと前進を続けた。

「オレは君と同類だ。君にも分かるはずだ」

『その気配は……まさか、ココロくんと同じ世界の?』

「? オレ達は、友達を探しに来ただけだ」

『友……いなくなったのは、いつですか?』

「つい この間と、四年前だよ」

『四年前……』

と、白い小さな光が、壊れた社の前にいくつも集まっていった。
やがて、重なり合って濃さを増し、徐々に人型になっていく。

もしかして、僕が、森で見た和服の美女だろうか?

先程までとは、違った昂奮が込み上げてきた。
白一色だった人型が、色を帯びていき、そこに現れたのは……。

「だ……誰?」

僕は思わず声に出してしまった。

現れたのは、艶やかな和服美人……ではなく、草臥れたモスグ
リーンのスーツを着た中年男だったのだ。

男は、小柄上に猫背で、見るからに幸の薄そうな頭……じゃなく
顔をしている。

これも、もしかして、何たら結界の続きだろうか。

六郎太の話では、木霊は女性の姿だと言う事だったのだが……
全然、違う。

「六郎太くん、僕、変なモノが見えます。あれ、幻覚ですか?」

「大丈夫。オレにも“おっさん”にしか見えないから」

ここから六郎太の表情は窺い知れないが、声が軽くなっている。
相手が弱そうなので気を抜いているのだろうか。

『私を見ても驚かないとは、君達は何者ですか?』

いいや、滅茶苦茶、驚いたし。違った意味でだけど。

「オレ達は退魔除霊師。あ、でも、あんたをどうにかしようと思って
 来た訳じゃないんだ、青島……教頭先生?」

えっ、このハゲ……じゃなく、いろいろと薄い感じの男が、七不思
議の六番目“彷徨う教頭?!

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

もう台無し? ^^;

妹系でも美女でもなく、おっさんです ^^;;





朝 起きたら、日が一番 高い所にありました。。。

って、それは昼だしっ! Σ(゚Α゚|||)

昨夜は本を読みながら、夜更かししたので爆睡だったみたいです ^^;

最後まで読み終えたら、空が薄っすらと明るくなっていました ^^;;

自分で書こうと最初に思った時の気持ちを思い出す一冊でした ^^

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2010/05/30 18:11
>スイーツマンさん
 やはり、期待外れな教頭先生 ^^;
 ロク以上に、視点となっている与市がガッカリしたみたいで ^^;;
 部屋に一人だったら、暴れていたかもしれません。

 ラストはどこにするか、悩んでいます。
 全て(ではないかもしれませんが^^;)を明らかにするには、もう一つ
 別の視点で話を書かないとなりませんので ^^;
 そこに繋がるようにしなければなりません。。。
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2010/05/30 08:55
不思議の六つめが教頭先生? 
みなが美少女キャラを想像していたのに残念でしたね。

いよいよ最後七つ目。
どんなラストになるのやら
期待してますよ。
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2010/05/29 22:46
>あかつきさん
 結局、こんな事態になってしまうとは……。
 申し訳ないです (◡_◡ ;)

 一気にラストまで読んで、ちょっと物悲しくなりました。
 自分ならどんな結末を望むだろうと考えて、ふと「ああ、それでか」とw
 創作とは言え、悲しい人を作りたくなくて、私は書いているのだと思い出しました。
 私もこんな無謀な事は、休み前にしかできませんよぉ ^^;
 しかも、金曜日じゃないと。翌々日まで引きずるので ^^;;
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2010/05/29 22:35
木霊がおいさん・・・ちょっとびっくりです、でもなんだか理由がありそうな感じですね?

夜更かしして読む本は最高の一冊・・・それは眠るのさえ惜しくなって読みふけりたいから・・・
昔はよくやりましたが~今は出来ませんね、さすがに仕事に穴をあけられないので(笑)




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