Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ナナフシギ~ (17)

教頭……の幽霊は、にこやかに「良くご存知で」と答えた。

青白いを通り越して、青い顔なので不健康そうだが、死んでいる
のだから仕方がないのだろう。

「この桜の木霊、どこにいるか知らない?」

目上も目下もなく、六郎太は、あくまで軽く尋ねる。
と、教頭は桜の木を見上げて『ああ』と思いついたように頷いた。

『あの方は、コダマさんとおっしゃるのですか』

「いや、木霊は……妖かしの登録名だよ」

『妖かし、ですか』

「うん。先生からも桜の匂いがするけど、もしかして……」

匂い? 僕は、匂いを嗅ぎ取ろうと、鼻をヒクヒクさせた。
が、何の匂いもしない。そもそも、桜ってどんな匂いなんだ??

『私が瀕死の状態で、この木にぶら下がっていた時、薄い桃色
 の着物を着た女性が近寄ってきて、手をかざしたんです。する
 と、ふっと体が軽くなって、気付くと、ここに……この小さな社の
 前に立っていました。それ以来、ずっと ここで森の番人をして
 います』

「それって、木霊に取り殺されたって事ですか?」

つい好奇心で聞いてしまったが、僕は直ぐに我に返った。
これって不謹慎だよな。

でも、謝ろうと口を開く前に、六郎太が言葉を発したので、タイミ
ングを逸してしまった。

「違うよ。彼女は、今にも死にそうになっていた先生を苦しみから
 解放したんだ。で、最期の力で先生をこの木に縛った。自分の
 残った力を全部、先生に譲って。そうだよね?」

『最期……そう言う事なのでしょうね。それ以来、彼女の姿を見
 ていませんから』

「え、それじゃあ、この教頭が木霊になったって事ですか?」

「ご名答ぉ~♪ しかも、この森の守り神的存在だぞ」

ふっ、今の僕の素直な気持ちを言ってもいいですか?

滅茶苦茶、ついてない!
今日は、ものすごく、ガッカリな日だよ!

退魔除霊師(女子ぃ!)とお近づきになれるかと思ったら、一人は
六郎太で、もう一人はどうやら六郎太といい雰囲気だし!

木霊が可愛い妹キャラの妖かしだって言うから期待してたら、髪
の薄いおっさん(守り神? 髪は守られてない!)だし!

おまけに、結界だか何だか知らないけど、睦貴の女装姿を見さ
せられるし!

「ヨイッちゃん、大丈夫? 元気ないけど」

「元気ですよ。頭の中は煮えくり返ってます」

謎は謎のまま、七不思議の真実なんて知らない方がいいんだよ。

結局、二番目だって、正体は緑のスーツを着た この教頭なんだ
ろうし……ん? じゃあ、僕が見た和服美女は?
桜の木霊じゃなかったんだよな。

それに、七番目の真相は不明のままだ。

「六郎太くん、まだ解決してないです。僕が見た和服の女性とか、
 桜の木の宝の事とか」

「あ、そうだった。先生、何か知ってる?」

『和服……ああ、ユウコさんですね』

「ユウコさん?」

『私の友人です。私よりも行動範囲が広くて、時々、ここに遊び
 に来てくれるんです。勿論、彼女も故人ですよ』

教頭の幽霊友達かっ?!
暑いはずなのに背筋が寒くなって、僕は辺りを見回したが、何か
が潜んでいる気配はない。

「じゃあ、桜の木の根元に宝が隠されているって言うのは?」

『宝……と言うか、穴の事でしょうか?』

「穴?」

『木の根元、丁度、社の裏側に人が這って通れるくらいの亀裂
 があるんです。あ、あまり近づいてはいけませんよ。危険です』

「大丈夫、大丈夫。ちょっとだけ確認を……うわっ、この穴、塞が
 ないとマズイかも」

『やはり、そうですか』

「異質な気が流れてくるね。陰とも陽とも言えない微妙な感じだ。
 オレは……まあ、そんなに嫌いじゃないけど」

それが何なのか、確かめたかった。
でも、あの開かずの部屋の時と同じで、足が動かない。

仕方なく、僕は遠くから声をかけた。

「あの、ここに睦貴……僕達と同じ制服のヤツが来ませんでした
 か? 一週間くらい前になると思いますけど」

『来ましたよ。そうですか。彼は睦貴くんと言うんですか』

「どこに行ったか分かりますか?」

『その穴の向こうです』

「はぁ?!」

『止めたんですが、私の声は聞こえていなかったみたいで……』

申し訳なさそうに、教頭が眉をハの字にする。

「ムッタン、宝探しに行ったんだ。じゃあ、まだ閉じる訳にはいか
 ないか」

六郎太は、眉間に皺を寄せて考え込んでいた。が、いい事を思
いついたのか、パッと顔を輝かせた。

何か、嫌な予感……?

六郎太は、子犬のように僕の方に駆け寄ると「ムッタンの生徒手
帳、貸して」と、手を出した。

睦貴の生徒手帳なんて何に使うんだ??

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

ユウコは、『温泉研究会』に出てくるキャラクターの祖母。

『カミカクシ』にも名前だけ出ていました ^^




明日も頑張ろうw

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2010/05/31 20:58
>詩奈さん
 ありがとうございます ^^
 なるほどぉ~、参考にする物があるんですね。
 私は、自分で小説を書いている時(ゲームで名前をつける時も^^;)
 そこで悩んで先に進まないのですぅ (◡_◡ ;)
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2010/05/31 18:28
こんにちわ。。 伝言板の藍姫さんからの質問の私の答えは
壱 漫画・本
弐 アニメ
参 何らかのものから取る 例・・・アルバム→{アル}的な感じ?

簡単に言うと自分の才能に任せず他人の才能に任せる!・・・みたいな
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2010/05/31 18:03
>スイーツマンさん
 薄いなら 剃ってしまえ バーコード

 一句、詠んでみました。無礼者ですねぇ^^;
 睦貴をどうにかしないと、終われないと気づきました。
 連れ戻しに行ってきます ^^
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2010/05/31 06:42
そうですか「髪の薄い森の守り神」になられていたのですか。合掌。
大団円かと思いきやもう一波乱あるようですね




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