Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ナナフシギ~ (18)

「あの……」

「ん?」

「何をしてるんですか?」

生徒手帳を渡すと、六郎太は目を閉じて、匂いを嗅ぎ始めた。

「ムッタンの匂いを憶えてる」

「出来る訳ないでしょう。それより、何をする気なのか教えてくだ
 さいよ」

「これから、ムッタンを探しに行ってくる」

「はぁ?」

六郎太は、僕に生徒手帳を返すと、「よし!」と 小さく気合を入
れた。

「全然、よくないです。睦貴を探すって、まさか、穴に入る気じゃ
 ないでしょうね」

「勿論、その気だよ。ムッタン、迷っているかもしれないからね」

『いけません。危ないですよ』

おっさん木霊が、社の前で手を広げて立ちはだかる。
が、何とも頼りない姿だ。

「教頭の言う通りです。一度、戻って瑞希さんと相談しましょう」

「大丈夫だって。でも、ヨイッちゃんにお願いが……」

六郎太は、そう言って携帯電話を取り出した。

「今から二時間後……だから、六時になっても戻らなかったら、
 オレも迷ってるって事だから、瑞希に引っ張ってもらって」

「はい?」

「言えば分かるから。ほら、瑞希の所に……一人で戻れる?」

「戻れますよ!」

六郎太は満足げに頷いて「ちょっと貸して」と、僕の首からお守り
を外した。
何かしようとしかけて、ふと手を止める。

「ヨイッちゃん、何を見てもオレを嫌いにならない?」

「はぁ?! 何、訳の分からない事を言ってるんですか!」

「オレの事、怖がらない?」

六郎太は、じっと僕を見上げている。
この人、どことなく瑞希と雰囲気が似て……。

「うっ、分かりました。嫌いません、怖がりませんって、何を言わせ
 るんですか!」

六郎太は微笑すると、お守りを口にくわえ、一歩、二歩と下がり、
そして、なぜか、Yシャツのボタンを外して、ベルトを緩めた。

こ、こんな所で何を?!

慌てふためく僕を尻目に、六郎太は目を閉じて、手で何かの形
を作っていく。

と、風が砂を巻き上げた。
どうやら、六郎太を中心に渦巻いているようだ。

次第に強くなる風に、僕は何が起こっているのか分からず、ただ
六郎太を見ているしかない。

僕が砂を避ける為に両手で顔を覆った時、六郎太が手を叩いた。
パンパンと、二度。

パッと光が目に飛び込み、僕は一瞬、視界を奪われた。
風も治まり、目の前が開けた時、そこに六郎太はいなかった。

代わりに大きな黒い犬が、こちらを見つめている。
犬の足元には、蛇の抜け殻のように服が脱ぎ捨てられていた。

「……ヨイッちゃん」

犬の方から囁くような声が聞こえた。それは、紛れもなく……。

「ろ、六郎太くん?」

犬に話しかけるなんて、僕は どうかしている。
でも、それなら、教頭の幽霊は? 人を魅了する絵の少女は?

僕は、もう一度、犬に「六郎太くんなんですか?」と問いかけた。

「……うん、ビックリした、よね」

驚いたなんてものではない。
でも、なぜか、僕は落ち着いていた。

「本当に狼になるんですね」

「これは、その、犬神《イヌガミ》と言って、オレの家に代々憑いて
 いる妖かしで……」

「でも、六郎太くんなんですよね?」

項垂れていた犬が、顔を上げた。

見ると左右の瞳の色が違う。
右目は六郎太と同じ薄い茶色で、左目は白金色だ。
おそらく、左目が妖かしの……が、まあ、怖くはないな。

「うん! そう! そうなんだ!」

犬の感情は読み取れないが、嬉しいのだろう。
尾が勢いよく揺れている。単純なのは、変わらないようだ。

「えへへっ……ああぁっ?!」

「な、何ですか?!」

「コンタクト外すの忘れてたよぉ~」

「この森で探すのは無理ですよ」

「だよねぇ~」

「大丈夫ですか? 見えてます?」

「ただのカラーコンタクトだから……」

「そうですか。六時ですね」

「うん」

黒犬が社の方に向き直ると、幽霊教頭は脇に避けた。

「ヨイッちゃん、オレの服と携帯とお守り、預かっておいて」

「六郎太くん、気をつけて!」

「必ず、ムッタンを見つけて帰るから」

そう言って、六郎太は、社の裏に駆け込んだ。

しばらく待っても、何の動きもない事を確認した僕は、六郎太の
持ち物を拾い集め、お守りを首に掛け直してから、森の外へと
走った。

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

睦貴を探しに行ってきます (●^ ^●)ゞ

とは言え、視点は与市なので、探すのは 次作になりますが ^^;





今日は、疲れました。

朝、調子が悪かったので、薬を飲んで出かけたのですが……。

ね、眠い。。。

早めに就寝予定です ^^





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